158, ダンジョンで、……攻略は、二十五階へ ④
「ジボ? わたしの名はジ・ヴォーだが、どなたかとお間違えではないかな。」
ソーカコー・ジ・ヴォー皇帝は、不思議そうな顔で受け答えしてくる。
「……ジボってバトルロボの世界チャンピオンだったっけ?」
後ろの方のテーブルでひそひそ声でサッツシが話していた。
……前世の記憶をここで言うなっ、バカサッツシ!
「あ~、サッツシ殿? ば、ばとる…ろぼとはどんな仕組みのものなのです?」
ほら、喰いついたっしょう!
スクーワトルアの第二王子トレノがダボハゼの如くチラついた情報に食いついてきた。
最近、俺の近くに彼の手の者が多く出現して、こちらの情報を持ち帰っているようなのだ。今のところ、大した情報も持って行っていないようだけども。
「バ、バトルロボというのは………そ、そう…えーとゴーレムに似たものですね。」
「ほほう、それは仕組みを知りたいものですね。遠征の際の荷役にでも役立ちそうなお話……聞かせては貰えませんか?」
「い、いえ……それはセトラ王に……。」
ああもう! バカサッツシのバカ!
ここまで暴露して来て、尻ぬぐいをこちらにさせようとか、甘ったれんなよ!
ひそひそ声で話している彼らの話をドキドキしながら聞いていた俺は、ソーカコー・ジ・ヴォーとの会話に身が入らないでいた。
「聞いておられるのか?」
「ま、間違いですか。……そ、そうかも知れないですね。誰かと間違ってしまったのかも知れません。ときに、ソーカコー・ジ・ヴォー皇帝の加護はどの神獣で? アーサ殿が、わたしの神獣たちについて異常なほどの興味をお持ちのようなので、参考までに伺っておこうかと。」
皇帝の周りの方々が俺の問い掛けを阻止しようとしていたのだが、アーサに関わる話でもあるので情報が欲しかっただけです。
「む…、聞きにくいことをズバリと聞いてくるね、エト・セトラ・パレットリア殿は。わたしの加護は土属性でね、それも大地の精霊種のノームなんだよ。」
ソーカコー・ジ・ヴォー皇帝は、笑顔のままで、そう告げてきた。
「ああ、やはり、その属性をお持ちでしたか……。それと、わたしのことはセトラと呼んで頂いても良いので。今までの公式訪問先では、いつも最終的にそう呼ばれておりますので。」
だが、その呼称はいつも引き金だったりするので、諸刃の剣でもあるな、……はは。
「相分かった、セトラ殿と呼ばせていただ………。……え?」
ふいに、先方の言葉が途切れたかと思うと、声を潜めながらこちらが受け答えに窮するような絶妙に微妙な事柄を聞いてきました。
「き、君はもしかして…、………キング?」
はぁーー、やっぱし気付いたし………orz
「あ、あの、……ひ…久し振りだね、皇帝。」
そうなのだ、ソーカコー・ジ・ヴォー皇帝が気付いてしまったように、前世での俺は気象の力を行使する上で、世界各地に行くこともあったためスケジュールの都合が付いた時にサッツシの言っていた、バトルロボの世界大会にスポット参戦していた。
当時不敗の世界チャンピオンと、時にタッグを組み、時にガチで相対する挑戦者になり、世界でも皇帝に近い者という事での呼称として王を頂いていた。
それが今世でのゴーレム操作に一役買っているという事なのだと思う。
「あ、あれ? 君がキングという事は……、うあっマジか……ホシィク…、テュッキア、ヒィロ、ユータク、ショッツとか、ほとんどみんな居るし……しかも俺より若い……orz」
周りを改めて見回していたソーカコー・ジボは、軽く頭を抱えていた。
凹んだ彼には申し訳ないがそれなりの年齢の方もいます。睨まれたから言わないけど。
「ああ……、俺が土属性のゴーレムと相性が良い訳が分かったよ。君も相性が良いみたいだし、このゴーレムハウスもそうなんだろう?」
アーサの父、ソーカコーがその事実に気付いた時にサッツシが乱入してきた。
「い、今聞こえたんだけど。セトラがキングってマジか?」
あ、サッツシ君、そこに食いつくの?
「ハハハ…、…マジです。」
「マジか! お前、マジでキングか!」
サッツシにとっても、おそらくは当時を思い起こしての言葉なのだと思う。
「マジでキングだよ、仮面の騎士……いや、ナイトのサッツシ?」
当時の世界大会の順位は、年間一位から十位までがほぼ不動で、ほぼチェスの駒に見立てて呼称を統一していた。
バトルロボの世界大会が開催されていた当時、俺たちと同年代の連中の中には身バレを防ぐために匿名かキャラ名で参加していた者が多数居た。
俺もサッツシもそうだったと言うことだけだ。
そして、今の時代に当時の白キングの皇帝、黒キングのキング、白ナイトの仮面の騎士、そして、白の女王の座にいる女王が集っていた。バトルロボ団体戦で何度も優勝を掻っ攫ったチームのメンバーだった。
「セトラ…、ひょっとして『最強の矛盾』、揃っているのか……?」
「……ああ、みんな居るよ。」
ため息とともに、俺は告げた。




