参戦?
「じゃあ、ピー助。向こうの島に連れて行ってくれ。」
そう言った途端に、俺の脇で崩れ落ちた人物(?)がいた。
ルゥだった。
「あ………。」
「あるじセトラ、わたしは『スクランブル』がしたいですぅ。」
ルゥの言動が幼児化していた。
「わ、分かった。……今回は海面すれすれを追い掛けていくから、ルゥに頼むな。」
すまん、ピー助。
思わず、ピー助に視線を向けて謝っておく。
『ピュウイピュウピュイ!』
ところがピー助は小型化スキルを調整して、ルゥと同じ大きさに変化すると視線を彼方に向けて、飛行へと移行する体勢を整えていた。
って、マジで競走する気か、ピー助?
そう思った瞬間に同じ思いを持つものたちが居たようだ。
なぜなら……。
ざざっ…という音ともに一列に参加者が並んでいたからだ。
「フェニックたち、合体して! わたしもスクランブルするわよ。」
コヨミとチヅルさんが声を揃えて、嬉しそうに叫ぶ。
かと思えば、アトリとティアがチャーを招き寄せている。
「チャー、わたしもスクランブルで行くわよ!」
「ティーリ(最近のチャァはアトリのことをティアとの合成語で呼ぶことがある)、勝つわよ!」
その向こうには、体格を変化させたドラゴンたちがずらりと、並ぶ。
ピー助の嫁さんと子供たちも一緒だ………orz。
と、思ったらピーコの背中にプ・リウスが。アカネの背中にプ・リメラが乗っていた。
シロは、ピー助と同じ大きさに縮んで、尾羽を振るわせていた。
ネコ科系がほとんど辞退する中、キマイラのキナコが参戦。
翼をはためかせながら、何故かキィィィィィィンという金属音を立てている。
……お前はジェット機か?
シクロ・アガサが黒いハネ子豚を背中に装着していた。
彼女自身の背中にも竜の翼と光の翼、闇の翼の小さな三対の翼を装備して、どうやら姿勢制御に使うみたいだ。
バロアは、自身の前身の黒真珠虫の形態に戻るのかと思っていたら、竜の翼と海の守護者の恩恵である人魚形態に変化していた……ってトビウオかよ…orz
これで最後かと思っていたらイヌ科代表が参戦してきた。
雪狼のジョンであった。
『ガウッ!』
常夏と言える環境下で、氷の道を目の前に生成していた。
……って、走るのかいっ?
兎にも角にも各人それぞれが、それぞれの思惑でレースに参加するようだ。さてさて、狙いは『ポイント』か『おやつ』か。
急遽、参戦を表明した連中と違って、俺的にはタツ雄の飛行訓練の補助を見極めるために飛ぶのだが……。
……やられた……orz
全員、そのつもりだったようで何とも言えないイイ笑顔でこちらを見ていた。
俺がタツ雄を補助するだろうという事は織り込み済みだったのか………orz
仕方ない、乗っちゃる。
「第一回、タツ雄応援飛行競走を開始する! 参加者全員、タツ雄にひと声掛けて行けよ。目的地はティーニアの港。シュッキン、後は頼む。」
頷くシュッキンに後を任せた俺は、参加者の増加に目を剥いた。
遅ればせながら、参加する意図に気付いたものが続出したためだ。
参加を表明した個体の背中に騎乗する者が多数。
まぁ、いいわ……それにしても、往生際の悪さにため息が出るな…orz
「On Your Mark…、 Ready… 、GO!」
シュッキンの声に、参加者全員がダッシュを掛けた。
先ほどの比では無い、衝撃波を残して全員が一瞬で掻き消えた。
そこに残るのはじいやさんだけでした。
「若い者はええのう……、これぞ青春じゃて! さてさて、被害金額を算定しておこうかの。海岸線の形が少々変わってしまったようじゃのう……。」
のちに届いた請求書を見て、愕然とした俺たちがいました。
サッツシたちも動揺したくらいの額でした。
もちろん、原因の一つであるサッツシとミレリーも含めて、参加者全体で支払いましたとも。




