海のあるじ、陸に立つ!~⑧~
「はいよ、俺だ。セトラ、何か用か?」
しばらく待ったのちに通信に出て来たサッツシに、衝撃の事実を明かす。
「サッツシ、後始末の時間だ。佳いところを邪魔されたくないと思ったら準備してテラスに出てこいよ。」
自分たちの庭でドンパチやっているっていうのに、サッツシが出てこないって事は完全に自分が関係していますよって言っているようなものだもの。
「じゃないと、向こうに行ってから、問答無用で呼び出すぞ? たとえ、お前が何をやっていようと、だ。」
そういう俺の最後通牒に。サッツシは皆まで聞かずに城のテラスに出て来た。
「何で俺が関係しているって分かったんだ?」
サッツシの言葉ももっともなのだけど……。現場に出てこないヤツが悪い。船に翻っていた旗を見て、引っ込んだままというのも、それに拍車を掛けたし。
「……お前さ、あの船に乗っていたヤツらが、神獣たちの目の前に晒されているって言ったら、事態は把握できるか?」
そう告げた俺の言葉に、サッツシの目が見開かれた。どうやら知らなかったらしい。
サッツシがあと五年育てば……というヤツらがそこに存在していました。
人種的にはタダビト族。
芝のような髪型でくすんだ金髪に、ネコの目のような虹彩を持っている。ネコビト族の血統がどこかで合流しているらしい。そんな似通った容姿に頷かないヤツらは、俺の仲間には居なかったという事だろう。
「仲間たちに感謝しろよ……、あれだけ、激しい戦いをしても死人は居ないんだからな。」
サッツシは黙って、仲間たちに頭を下げていた。
そして、拘束されていた彼らは、サッツシの姿を見て驚きに固まっていたのである。
「ガーディアルド様?」
そう呟いて、絶句していた。
サッツシは座礁していた船に乗り込むと、素早く点検していた。
その姿を見ていたミレリー女帝も、その手慣れた様子に驚いていた。
まるで勝手知ったるナントカ。
水を得た魚。
「ミレリー、一緒に行こう。」
一人で動かすというのか、サッツシ。
「わ、わらわは……。」
サッツシの意外な姿に見惚れていたミレリーには、本来、この国を護らなければならないという責務が付いて回っていた。簡単にはこの国を離れられないのだ。
「ミレリー様、外の世界を探訪するにはいい季節ではありませぬか?」
じいやの声に、驚く。
だが、それもレディアン皇国からの祝福と、彼女の不在時に代わりを務めることの出来る人材が揃いだしてきていたことが、今回だけ、無茶が出来ると、じいやさんが告げたのである。
「ミレリー、一緒に行こう。」
「はい…、サッツシ。」
二人の世界はピンク色のようで、周りの人間たちは当てられていた。
「いいなぁ~、わたしも早くセトラくんと……、きゃっ!」
嫁の一人がぽつっと漏らした言葉に、仲間たちが頷いていた。
現在拘束されている者たちも、そのサッツシの姿にある意味、現在の自分たちの深刻な状況を忘れさせてくれるものでもあったらしい。
もう一隻の船に拘束状態のまま、数珠つなぎに乗っていった。南無南無~。
「出発進行!」




