海のあるじ、陸に立つ! ~⑦~
「それでは、我々の大陸には手出し無用と言っておこうか。君たちの言う神獣を含めてなお、この大陸はこんなにも大量の神獣たちが集い来る稀有な場所なのだからな。そして、君たちの女王様にも警告をしておこうかな。それじゃ、行こうか?」
俺がギンの背中に飛び乗ったのを見た彼らはひどく驚くが、自分たちの拘束が解かれないのを不満に思い、批判の声を上げる。
「我々の自由を返してはくれないのか?」
「こんな強制的なことは許されないことだ。」などなど。
自分たちが為したことを棚に上げたままの批判には、そもそも力がない。
「別に自由にさせてもいいのですが、ここはあなた方の領土ではありません。ここにはここの理というものが存在します。あなた方が砲撃しなければ、その目もあったのですが……。今後は、あなた方の交易船も含めた船の往来はそちらの女王様との交渉次第では難しくなると言うことを肝に銘じて頂きたい。現在、あなた方の大陸ではないところからも、同じような趣旨の交易目的での船団が入ってきており、鋭意交渉中です。」
彼らよりも前に来て交渉の席に着いていると、仄めかしておく。
「それに、あなた方がここで自由を得て好き勝手をしたとして、どこに逃げますか? あなた方の船はあそこですし、海の獣たちの包囲からどうやって帰国されますか? 下手を打てば、海の藻屑ですよ。それくらいならおとなしくしていた方が実りもあるというもの……、そうではないでしょうかね。それに、あそこまで歩かれますか?」
そう、問い掛けて………どうしても望むのなら、それもまた一興! とは思った。
その俺の言動を気に入ったのかどうかは知らないが、従魔たちの輪が崩れた。拘束されている彼らの周囲から船へと続く一本の直線が引かれるような勢いで。
「ほら、みんなも言ってる。行きたいのなら、どうぞってさ。」
従魔たちの言葉や意思を他人に伝えるために、いつもは想転移を使っていたのだが、いま居る陸地と、沖まで流された船。その途中にある海辺をも含めて道を譲った彼らの言葉など、魔法を使わなくても明々白々というものだろう。
「あるじセトラ、どうも、こう何か懐かしい気配が彼らにあるのですが……、んー気配? ………ああどちらかと言えば残り香というのが正しいかな?」
戸惑うようなルゥのその言葉であるところの『懐かしい気配』やら『残り香』やら、俺たちにも何となく分かる気がした。
「じゃあ、アイツかアイツらかは知らないが、居るという事だな。それに、こいつら誰かに似ているなとは思っていたんだよな。あまり身近だったんで気が付かなかったな。召喚……ととと、ひとまず手鏡通信からか。新婚さんを呼び出すのは手間が掛かるが仕方あるまい。それこそ事に及んでいたら、目も当てられない。」
そう呟いて、手鏡通信機で関係者を呼び出す。周りの女性陣は俺のつぶやきに反応したらしく顔が真っ赤でした。君たちの想像力の半端なさには頭が下がりますよ。
「料理を作るって、そんなに顔を真っ赤にすること? アイツの手料理って、手が込んでいるんだよ。」
「「「「「「……セトラくん(さま)!」」」」」」




