海のあるじ、陸に立つ! ~⑤~
「で、これは一体どういうことなのでしょうかな? ああ、僕は一応この国の王と懇意にさせて頂いている者です。この国の王がいま伏せておりますので。国王代理という事でしょうか。」
俺が発した言葉はこれで、聞いた相手は船団の指揮を執っていた者たち。
「あなたが、国王代理とは。」
この者たち、肌が浅黒く体が俺たちの知る大人たちよりも少し大きい……、大柄で体格もそれなりに良さそうだった。
行動を監視するためにディノや俺たちガルバドスン魔法学院の魔法士たちが、腰までを土魔法で拘束していた。
もちろん、彼らの中にも魔法士たちは居るのだが俺たちの使っている魔法が単なる土魔法では無いために、簡単に拘束から抜け出せないでいた。
なぜなら俺の同級生たちの魔法は、俺との学びの中で単純で素直な魔法を使う者は一人として居なくなってしまっていたという事に他ならない。
やはり最初の授業で行なった実戦魔法がそれぞれにとって衝撃だったという事なのだろう、たぶん。
そうで無ければ、あの時の授業が今も新入学生たちに受け継がれているという事が説明できないだろう。
「我々の行動は我が国の女王様に権限を頂いている、神のご意向をこの世界に伝える事こそ我々の使命である。」
だが、神のご意向とやらには、いきなり大砲を撃つとかあるんですかね。
「はあ………、この大陸にも神様はきちんと居ますけど。あなた方の神様はどちらにいらっしゃるんですか?」
「我々の国にある神殿の中に居られるはずだ。」
自信満々にそう仰りやがりました。
神様が引きこもりになっていて何の御利益があるのでしょうかね?
「神殿の中で何をされているので?」
「この世界に関しての文献を調べられておられるはずだ。」
……のはず等という言葉が多いな。
「それで、あなた方の神様のご意向を伝えるというのはどういう事柄なのでしょうか?」
「私たちが、この大地に祝福を伝える事で大地が活性化する事を実感し、神のご意向を実現させる事にある。」
「ああ、そういうことでしたか。ようやく理解できました。」
「おお、分かっていただけたか。ならば早くこの拘束を解くように他の者たちに伝えてはくださらんか。我々には崇高な使命がある。祝福を伝えに行かねばならないのでな。」
くだらないご託を並べてんじゃねぇ。この星は、一筋縄じゃ行かない場所さ。
「はあ……なるほど。で、あなた方はなぜこの大陸に向けて砲撃されていたのでしょうか? まさかとは思いますが……あれが『祝福』とか言いませんよね。ましてや我々の守り神様を撃とうなどとされていたのではありませんよね? あの守り神様の取り扱いには特に注意しないと、ひどい嵐が起きるとあるのです。僕も最近知ったのですが、今から一〇年ほど前になるでしょうか、ひどい熱風がこの世界を蹂躙した事があったらしいのです。あの守り神様のお怒りを買ったのだという文献が残っています。」
性急に大陸の奥地へと侵入しようという事はさせないよ。
「あ、あれが君たちの守り神だと? 魔物に過ぎないものがこの大地に居るという神だというのか? 我らの神に勝る神など、存在しえない事くらい分からんと言うのか! そんなおかしな事は無い!」
語るに落ちたかな。
「ほほう、魔物が神で何が悪いので……?」
むしろ、感心したよ。
この世界にあって、君たちの語る神の存在とは何かという事が……。力が全てというのなら、こちらも示す事くらいはしてあげよう。
「魔物を神として崇める事は神のご意向に、反している。粛清の嵐が吹き荒れるぞ!」
どうしても、彼らの神を押し立てたいようだね。
「あなた方の国の神殿に引きこもっている神が、こちらまで来られるというので? 露払いには、どんな神獣が来るのでしょうか? 非常に会ってみたいものです。……いいですねぇ、連れて来て貰えますかね?」
神獣に対しての憧れを前面に押し出して、その神獣の情報を頂く事にしよう。
それによって対策も立てられる事だろう。
なんて思っていましたら、予想外のモノが神獣とされていました。
………なんで? 古竜でした。それも銀竜………orz
お前だったのか? ……………ギン。
………、マジですか?




