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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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 海のあるじ、陸に立つ!~②~

ひどい風邪にやられて、小説の事など考えられない日々でした。


「全員、殿下の配下に着任する。異議のあるものは退去して良し!」

 そういう命令が下ったために、ほとんどの者たちがその場に残ろうと野営の準備を始めるのだが、そこで一悶着起きていた。


「我らは原隊に復帰させて頂く!」

 騎獣隊として、集っていたのは騎士は騎士でも騎獣騎士。


 彼らは皇帝からの借り物であり、彼らには帰属するべき原隊が皇城の中に存在する。

 飛竜(ワイバーン)を擁する天攻(てんこう)隊、一角犀(ユニゴン)を擁する地攻(ちこう)隊、海獣(ゾーロス)を擁する海攻(かいこう)隊の三隊を三獣士と称している。


 数千の騎士に対して、今回、駆り出された三獣士たちは一〇人ずつの編成で、三〇人。

 それぞれに三人ずつの小隊三隊に指揮を出す分隊長が付いての出動だった。

 一〇人の分隊三隊で一個中隊を形成し、さらには三個中隊で一個大隊と称していた。


 その小さな単位の分隊に所属する三種の騎獣たちが、乗騎しているままの騎士の指示に対して、従えないという意思を見せて抗っていたのである。

 すでに、俺という新しいあるじに対しての思いもあったのだが、ここに来るまでに繰り返されてきていた過剰な戦闘時、訓練時における指示の酷さに辟易していたらしい。

 蹴る指示は当たり前、(むち)打ちはひどい時には彼らの血を流すまで行われた事さえあったのだという。


 たった一〇騎で、数千の騎士など一蹴するだけの能力を備えているものの騎獣たちの心の機微(きび)を読むのは容易(たやす)くなく、野生の中から集められたもの、幼獣の頃から飼育してきたものなどの別はあっても戦闘に耐えられるまでに育てる事は、一〇〇匹に一匹いればいいくらいに確率が低かった。


 だからこそ、加護を得られたものが重用されていたのである。

 すでにアクィオはその渦の中に(とら)われているといっても良かった。


 アクィオにしろ、アーサにしろ、このままにはしておかないからな。

 そして、俺は守護を持ちし者として言葉を発するのみ。


「『我が守護に連なるものたちの願いを聞き入れん。幼き器を得て、解放されん。』」

 俺の周囲に届くように、ヒト族の言葉と想転移(パシスタ)を併用しておいた。

 年に似合わぬ朗々とした響きに、騎獣騎士たちが唖然として俺の方を向いた時が異変の始まりだった。


『ピキュウゥゥ』『ピギャウ』『オォウゥゥゥ』と吠え声を上げるものの、その声はひどく幼く聞こえた。


「なんだ? 何が起きている?」

 そう言えただけ、その騎獣騎士はある意味冷静だったのかも知れないが、周りでそれを見ていた者たちにとって、悪夢の出来事だった。

 成獣の騎獣が自分たちを拘束している(くびき)から外れようと己の体を小さくしていくように見えたのだろう。


「騎獣が……小さくなっている?」

 それは(おそ)れを引き起こしていた。彼らにとって、あり得ない事であったのだから。だが、全ての騎獣が小さく幼い姿を得て、騎獣騎士たちの跨がる鞍を置き去りにして俺の方に集った時に、遅まきながら理解に至ったようであった。


「あるじが変わったというのか?」という事に。


「彼(俺の事)をこのままこの大陸にお連れしていいのか?」という事に気付いた出来事でも、あった。


 俺の言葉は加護を与えているものたちには届かなくても、俺の声が聞こえた騎獣たちにとっては、変革の言葉になったようである。


「セトラ殿、表敬訪問を可能にするほどの対価を何かお持ちですか?」

 アーサの問い掛けにチラと、思っていたのだが。


「今は無いが取り寄せたら、それ相応の対価にはなると思うぞ。」

 本人にとっては、それこそ青天の霹靂かも知れないがこちらの人間にとってはそうでもないかも知れない程の価値のものではあった。








「アクィオ、捜転移(サテスタ)!」

 オットトドのトッタのハーレム共々、アクィオくん降臨しました。








アオ(アレ)ッ? オゥオウ(ここ、どこ)?』

 不思議そうなトッタの声にようやく気付いたアクィオくん、周りを見回したと思ったらいきなりこちらの胸ぐらを掴むという所業に。


「セトラ……、呼ぶなら呼ぶって言っとけよ!」

 俺に対してのこういう暴言により、周囲では、「うあっ?」という声にならないどよめきに満たされました。


「王への諌言も辞さないとは、なんという豪気のものか?」

 知らぬ所でアクィオの株が赤丸急上昇中! ですっ!

アクィオくんは、どうなるんでしょうかね。

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