海のあるじ、立つ! ~④~
それにしても……海の守護者かぁ。
やっぱり今回の一件が決まり手だったんだろうなぁ……orz
これからというか、この雑事が終わればまた追及されるんだろうな。
嫁たちから………orz
『嫁会議します!』とか言っていたもんなぁ……。
これもモテるとか言うんだろうか? などと黄昏れてました。
その様子に力を得たのかラドロ氏の釈明に熱が入る。
「わたしたちの大陸は中央に標高遙かに、雲を突き抜けるほどの高い山を備えています。山の名前は、クラックロックと言い、巨大な神獣が棲んでいることで有名です。それに挑む冒険者は、過去より現在まで数多く尚も後を絶たないほどに多いですが、最近はどういうわけか、出現率が悪くなっています。そのため、繁殖のために卵に手を掛ける者も後を絶たないという状況です。今となっては、見つける事自体が至難の業となっているのですが。」
そう渋い顔になるラドロ氏だが、俺には、クラックロックという山の名前に興味が引かれていた。
“雲を突き抜ける山”のフレーズに心当たりが有ったからだ。
そして、密かに想転移をピー助に繋ぎました。
『ピー助、聞こえているか? 俺とおまえが出会った場所のことを覚えているか?』
『聞こえています、あるじ殿。ロック鳥の啼く山です。近くに来ていますから、そちらに向かいますか?』
似て非なる名前だな。雲を突き抜けたところにある山を棲み家にしているというのなら、そこはロック鳥たちのエリアという事でいいんだろうか?
『俺の上空で待機していてくれ。呼ぶ可能性がある。』
『了解です。』
鑑定でチラ見していると、ピー助が上空で回遊し始めていた。
ガレー帆船に乗っているヒト族たちの中で視力を強化したものが居たらしく、ふとした拍子に上空を見上げて驚きの声を上げていた。
「え、何? 何だって?」という言葉があちこちで聞かれ出し、それぞれが見上げては沈黙し、片膝を船底につけ片膝を立てた形の祈りを始めていく。
たとえ海の中とはいえ、陸地に囲まれた現在のガレー帆船では多少の揺れすらも起きないだろう。安心して、祈ってくれ。もっとも、何を祈っているのかまでは想像が付かなかった。
「彼らは一体何をしているのでしょうか?」
分かってはいたけど、その行為の不思議さは隣にいるはずのラドロ氏に確認しておくべき事柄だろう。
そう思って隣を見たら……、ラドロ氏の目線が俺と同じ高さに。しかも上を向いてぶつぶつと祈りを捧げているではないか。
「はぁ?」
ガレー帆船は既に盛り上がってきている陸地にその船体を固定されていた。揺らぐ事もない。
と、その時フラムンからの言葉が想転移に反応した。
『あるじ様~、み、みず……。』
『ミミズ?』
と、ベタな返しをすると怒られました。
『…あるじ様、ふざけている場合ではござりませぬ。』
『す、すまん。』
障壁内の水は海水が主成分、空気は通すのだが、その分として魔石から魔力が失われる。
このまま障壁を構築したままでは早々に、ぷっかりと腹を上にして浮かびかねないようだ。ディノに生け簀を用意してもらおう。
『ディノ……』
「『生け簀ですね、この台座に隣接して作ります。』」
ディノの即座の反応に、おやつポイントを加算しておく。
ちなみにこのおやつポイントを個別に管理するのが難しいと思っていたら、鑑定の項目にありました。見つけたその日から利用しています。
これは各地の旧城に接続されていて、それぞれから上がってくるポイントを集計していた。国の名と、名前を入れるだけでほぼ全てが検索可能である。
魔物に対しての集計もあります。いま、ディノの特別枠に一〇ポイント加算しました。
これも、各自のステータス画面に何故か反映されるようになっていました。
これも旧城のリンク機能なんですかね………orz
で、ディノの言葉通りに俺たちがいる台座の前の開けた場所に海と繋がった生け簀が完成しました。
あとは、黒妖精種のガリィに転移をお願いしておく。
「アイアイ、ポイントもよろしく。」
右手の人差し指と中指を立てた握り拳で可愛く(本人的には?)軽く敬礼してくる。
彼らのいた障壁の中で、見たジャパニメの中の仕草だという。
俺的には懐かしい……という思いを持った仕草だった。
放映当時は俺もその仕草にかっこよさを感じていたからだ。
「まだ、あったのか? ジャパニメ、恐るべし……。さすが宙賊バードックだな。人類があちこちに行っているこの時代でも関係無しとは………orz」
それにしてもガリィは、ポイントゲットとはしっかりしているな。
そして、彼女が飛び回り回収に向かう事で彼らの意識を散らせる上に、俺も捜転移を起動出来た。
赤い輝きを次々と転移させていた。
海のど真ん中で行なっていましたら、さらに邪魔者推参!
「ギャオギャオギャオオッ!」
海竜様、深海より急浮上してきました。
船団とラドロ氏は震え上がっております…が、俺たち的には、今頃ですかぁ? という気分でした。




