156, ダンジョンで、……攻略は、二十五階へ ②
それは、ずっと目の前にいるナニカに惹き付けられているのを感じていた。
ずっと、狭く押し込められた世界で、常に反発し合うモノと一緒に居た。
引き合うモノであり、反発し合うモノなのに、……なのに惹かれてしまうのだ。
それとの境界はキッチリと線で……境界線で区切られていた。
それと交じり合う事など、あり得るはずが無かった。
相克、矛盾しながらも無視できない、対等で有りながらそれを越えたくなる相手。
一緒に閉じ込められた者たちの言葉にある……宿敵と言えるのかも知れない。面白い事に、その言葉を持つ生物は、我らの相克の究極図を持っていたのだ。
一つの円の中に白と黒の生物のような丸みを持ち、お互いに食い合うような姿のそれが、頭と思しき場所に持つ色がある。お互いの色がそこに少しだけ存在していた。
長い時の中でそれに……、その意味に気付いた時、彼らは互いに朱に交じわったのであろう。
彼ら? それ? は、朱に交じわって変わってしまったモノ? と言えた。
それは今、盛り上がりつつあるアメーバから、こちらへと伸びた触手の先端に居た。
居たというよりは、姿形が形成されつつあった。
漆黒のアメーバから、直径二〇セチくらいの黒の玉が分離した。
その下に居た純白のアメーバから、同じ大きさで白の玉が分離した。
黒い玉と白い玉から細くて小さな触手が出て来て、お互いに触れたと同時に同化した。
とは言っても白と黒が混ざるというのでは無く、妖精種たちを参考にしたかのように、白の玉が顔らしき所とか、胴体らしき所を形成し衣服と、髪などを黒の玉が形成していた。
適材適所とでも言わんばかりに。
感覚器官はグレーになっていた。手とか、鼻の穴とか口とか。
目は俺たちに似せて白目と黒目で形成されていた。
たぶんどちらでも見ているのだろう。
おそらく頭の中にあるであろう脳細胞は灰色なんだと思う。
なぜなら、オレの想転移に反応があった。
『プルプルプル、………プルプルプル、プルプルプル。プルプルプルプルプルプルプルプルプル。』
器用に人差し指をプルプルさせて話しかけてきた。
そして、残った黒白アメーバはともに庫炉里の奥へと消えていった。
何とも、その去り方といい、自分たちの分身を置いていく姿といい、【源の白】と【源の黒】というモノにも色々とあるんだろうなと、感じ入ってしまった出来事でした。
というか、この盛り上がった感情を何処に持っていけばいいのかと、悩んでおりましたらアレディア帝国の海岸線に居るフラムンから緊急活動要請が入りました。
次いで、駐アレディア帝国大使のアキィムとカオリ・アネィからも簡易通信手鏡からア・クラツ王の応援要請を伝えてきた。
サッツシの方からは何も言ってきていないが、帆船よりはガレー船の方が思い通りに動かせたという事なのだろう。
もしくはゲンブの外装が邪魔なだけかも知れないが……。
「え~、諸君。いま、脅威は去って新しい仲間が増えた。アレディアの海上に集結しつつある他大陸からの脅威に対して、力を貸して欲しいという旨の連絡が入っている。新しい仲間たちの歓待と我らの英気を養うための大宴会を行ってから、現地に行こうぞ!
アネィたちも待っていると連絡が入っている。さぁ、何が食べたい?」
仕方ないので飯食ったら出発します。
『ホットヤーキがいいな……。』
リクエストの一発目はアガサでした。……ってあんた食べられるんですか?




