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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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155, ダンジョンで、……攻略は、二十五階へ ①

「改めて、自己紹介するよ。アタシは妖精族の……クロン。な、慣れないなぁ……。」

 そう言って嘆くのは双子の男装の麗人クロン。


 同じ格好で同じ容姿のケレィが頷く。

「本当だねぇ。ひょっとして、この男の子って守護持ちなんじゃない?」

 そういって俺を指差します。レディなのに、がさつさだけが目に付く。


「えっ、守護持ちって何? あたしらの種族が変わった事ってこの子のせい?」

 黒妖精族のガリィが、不穏な言葉を放つ。

 黒のゴシックのドレスに白のラインを左右の両裾から腰に掛けて刷毛で掃いたように入れていた。この辺がこの子の『源の白』の影響なんだと思う。


「この兄ちゃんは、竜族の守護者だな。そうでなけりゃ、こんなにドラゴンが(なつ)く訳がない。……って、わぁ、(かじ)らないでぇぇぇぇ。」

 知ったかぶりのキリルの言葉にイラッとしたのかギンがカプリと口に(くわ)えてしまっていた。ギンの口からキリルの上半身がシュールに動いていた。


「うん、ギンがイラつくのも分かるけど……、食べても消化に良くないよ、それ。」

 守護者になる前に竜たちは懐いていたからな。


 なぜならという事で、険悪になりかけた竜たちの目の前で、久し振りの福焼きをバラ撒きました。中身はもちろんハチミツです。

 (ちょう)(はず)む福焼きたちを、ドラゴンたちは競って追い掛けます。


「うわぁっ、なになになになになになに何だって言うのっ? うわっと。何コレ?」

 その大慌て振りに目を丸くしていた妖精族たちの一人のコムルが、目の前に飛んできた福焼きの一つを手にしてしまいました。


 とはいえ、いくら竜族が小型化したとは言え、最低でも大きさが五〇セチから一メルほどにはなろうというものの、彼らの好物である福焼きは最大で三〇セチはある。


 それをいくら羽の力や風の守護があるとは言え、たかだか一〇セチの妖精族がその福焼きを持ち上げようというのは、見ていて大きな衝撃を感じたものです。



「……あいつら、マジで馬鹿力(ばかぢから)だな……。」


 しかし、そこへ向かって竜たちが雪崩(なだれ)込んできます。

 背中の羽を震わせて、それをうまく回避したものの竜族が目の色を変えるほどのものかと、つい一口。


 (かじ)った瞬間に溢れ出るロケット・ハナ・ビーのハチミツ。

「ええっ、何これ? ふわぁ……。」

 と、言葉になっていません。


 そのまま竜族の体当たりを受けて、墜落していきました。


「ええっ、コムルどうしたってのよ一体……。えっなに、これがむぐっ……ふわぁ……。」

 その墜落途中のコムルと福焼きを拾い上げたのはクロン。中身の匂いに惹かれて彼女もまた一口囓った。


 一緒に引き上げに掛かったケレィはクロンの状態に気付いて眉をひそめた。

 疑問に思ったのもつかの間、福焼きの一部にコムルが囓ったものとは別に歯形が付いており、原因は福焼きと判明した。


「そんなに美味しいのかな……。あむっ、……………ふわぁ!」

 そう言って不思議がっていた彼女も一口囓ったら、ご多分に漏れずご同輩同様に夢見心地状態です。


 続いて、カリィが。

 同じく、キリルが、……と仲間が次々と行動不能に陥る。

 キニュとカシレもまた……。


「義により、助太刀いたす!」

 などと、時代がかった風情の黒妖精族が一人、鑑定によるとギリムという男の子。

 口調があまりにも残念である。

 キミ、本当に妖精種? ああ…、黒妖精種でしたか。



 どんどん続いていく黒妖精種、ギリムに続いたのはガーラという女の子。ガリィ、ゲレン、ゴーラまでが女の子。乗り気では無かったものの女の子たちの食いつきに我慢できなくなったのはゴーズと、ゲィズ。

 ゴーズとゲィズは男の子は双子で、ガーラとゴーラも同じく双子。


 ついには、妖精種に混じって黒妖精種たちまでもが、福焼きに囓りついては、「ふわぁっ……。」を繰り返していました。



 いや、マジでこんなんじゃ、あんたら戦力にならないね………orz


 『源の黒』の置き土産はこれから暴れようかというのに、福焼きに腰砕けになっておりました。


「妖精と黒妖精の諸君、腰砕けになっているところ済まないが竜たちの「おやつ」を食べた以上は強制的にでも一緒に戦ってもらうよ。………アイツ(・・・)と。」

 そう一方的に告げて、俺たちは庫炉里(ころに)の奥から()り出してくる三メル四方もの大きさのアメーバ状のナニカに対峙した。


「何で俺たちが!」「あたしたちに、そんな義務はないわ!」と、口々に叫ぶ。

 それを見てイラッとしたのかギンの口から風のブレスが出かかる。


「お前たちが風の加護を持つ者たちだと、我らは知っている。この戦いに参加せぬ者たちには、その加護自体が消えてしまうぞ?」

 そう告げたのは小型化した状態から人化したドラ吉とドラ子、彼らもギンの苛立ちを知り、ヒト族の言葉を操るためにこの場に姿を現したようである。


 竜族の長老ギンには、人化のスキルはまだ発現していない。


「それに、福焼きよりも美味い「おやつ」を得られるかも知れんのに、そのチャンスを逃すというのか? 勿体(もったい)ないのぅ……じゅるり。」

 そう(あお)ったドラ吉とドラ子に、応えるように頷いた。


「分かった、その願い(リクエスト)に応えよう。存分にお前たちの最高の力を発揮してくれ。」


「「「「「「「おおおおおおっ!」」」」」」」


 その歓喜の歓声が、辺りに満ちる。


「それで……、お前たちはどうする?」

 妖精種たちに俺はそう問い掛ける。



「やるよ。あの竜人の言葉を信じる訳じゃないけど、あんたの周りに風がどんどん集ってきている。風の守護は俺たちの必需品なんだから。」

 そう、キリルがぼそりと話すと、他のみんなが頷いていた。


「来るぞ!」

 こちらの体制が整うのを見計らったように、小山のようになったアメーバ状のナニカ………アメーバでいいか。その触手を伸ばしてきた。

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