150, ダンジョンで、……攻略は、二十四階へ ④
「『ああ、彼? 先代と今代の魔王様の造ったダンジョンの十七階に居ましたよ? 確かに超々深海を遊弋していましたよ、居眠りしながらね。さすがに海上まで引っ張り上げるのは骨が折れましたけど……。』」
当時の苦労を考えると、改めて疲れてきたのは言うまでもない。
無論、そのあとのカレーライス祭りは盛大だったけど……。
仲間たちにも驚かれた出来事もあったにはあったのだが。
「『それにしても猛烈なケンカって何やったんだよ。もし「彼」とやらが俺の知っている「彼」であった場合、よほどの事がない限りは軽率な行動をするはずがないと、俺は自信を持って言えるぞ?』」
そう俺が言うと、『ルゥ』は片方の翼を開いて顔を隠した。
何やら、彼の相方の言動に恥じ入るところがあったようだ。
「『どうにもお恥ずかしい限りではあるのですが、わたしの相方『チャァ』とのそれぞれのあるじ様に対しての見解の相違が、最大の原因なのではないかと思っています。』」
「『見解の相違?』」
魔物たちの見解の相違……、分からない言葉だ。
「『彼の食事がカレーライスだったからですよ。僕たちはこの庫炉里の守護管理システムの両輪として存在していたのですが、僕たちのような純粋なエネルギーでの補給ではなく彼の場合はなんというか純人間的な食事を要求してくるのです。この庫炉里に住むヒト族を含む生物たちのように食事を楽しんでいるのです。それも、料理好きな『チャァ』の作った、ヒト族たちのための料理なのにです。』」
そう言った『ルゥ』の言葉に俺の心のどこかから、こぽりと言葉が漏れた。
「「…………そうだったか(しら)ぁ?」」
俺でもその言葉を無意識のままに発したように、俺の近くでも誰かが同じように呟いていたらしい。
火モグラたちの風貝には、音声だけが残っていた。
閑話休題。
「『『チャァ』の作った料理に飛び込むなどあってはならない!』」
という『ルゥ』との会話に俺の従魔たちでも縁の深い、ジョンやピー助、ギンなどの前世から訳あり組はもちろんの事、その衝撃の光景をつい最近目の当たりにした仲間たちも『ルゥ』に向かって同意しながらも頷いていた。
「分かるよ、あの衝撃は凄かったもの……。」
ジュウンが思わずといった感じで呟いていた。
「ゲンブという亀さんだけならまだしも……いや、アレもショックだったけど。ほかにも狼さんやトリさんが食べているのは……ねぇ。ええっ、……マジですか? だったもの。」
そんな声が多数上がるにつれ、少々居たたまれない雰囲気ではありました、俺………orz
「『特に彼の場合、生体ユニットが分離してしまうとそれなりに小さくなるものですから。その状態で食事の中に飛び込んでしまうことがあったために、『チャァ』からは食事のマナーがなっていないという事でひどく叱責を受ける事もあったようです。』」
ああなるほど、いわゆる皿の中に入って躍り食いをやらかしたらしい。
だが、今の『彼』であっても、もし、それをやられると、俺でも怒るな。
もっとも、昔の『彼』にとって、全てが大きかったのだから、仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが……。三つ子の魂、百までっていう事かもね。
『最初にやらせたのは、あるじ様ではなかったですか?』
ジョン……、黙っとけよ。そう思いながら、ひと睨みする。
よく言う若気の至り。
カレー鍋にゲンブを泳がせていたのは、俺の前世のオレだ。断じて今の俺ではない。
「『食い物の恨みは…というヤツか。……君の相方だったか、君と同じ鳳凰だというのならば純粋なエネルギーの補給で済むという事だし、ヒト族の料理を担当するというのも不思議な感じがするのだが?』」
俺の心の何処かで疼くナニカに気持ちの何割かを持って行かれながらも、なぜなんだろうという同じ想いを含んだ問い掛けを『ルゥ』にしていた。
「『それは……ガッ? グフゥ……』」
庫炉里の奥の方から、カッ飛んできたナニカに吹っ飛ばされた。
「『あんたっ、いつまでヒトの秘密をバラしているの!』」
そこに居たのは人化したナニカでした。
「あんたらかい? あの亀の関係者っていうのは?」
銀髪の美少女が啖呵を切ってきていた。
オヤジ元気で留守がいいとは言うものです。
倒れたのを見て、文章が吹っ飛んでしまいました。
さて、年内に200話…に行けるか?
頑張ります。