149, ダンジョンで、……攻略は、二十四階へ ③
前回の障壁の所に着いたら、また『パスワードヲドウゾ』と点滅していた。
「ソン、アンドウ!」
マイクボタンに向かってデッカイ声で言ってみる。
障壁が……、開かなかった。
(?_?)……、WHY? なぜに?
「開かないね。あんなに気合いを込めてパスワードを言っていたのに………。」
「ちょっと、恥ずいね……。」
みんな、それってひどくね?
「な、なんで?」
はあああっ?
とか思っていたら、障壁に文字が浮かんできました。
『パスワードが初期化されました。空欄を埋めてください。』
ま……マジですか? 勢いつけて言ったのにハズいったらありません。
改めて障壁の空欄を数えると二十三ヶ所あり、一番目と二番目に同じ数字が組み込まれているところから推測すると、例の呪文のようです。
「ジュゲムだよ……。」
そう言った瞬間にポピッと音がして、最初と二番目の空欄に入力された。
そのゲーム感に刺激された人たちが多数そこに居まして、口々にジュゲムを叫びましたら……、あら不思議。
「ジュゲムジュゲム、ゴコウノスリキレ、カイジャリスイギョノ、スイギョウマツ、ウンライマツ、フウライマツ、クウネルトコロニスムトコロ、ヤブラコウジ、ブラコウジ、パイポ パイポ パイポノ、シューリンガン、シューリンガンノグーリンダイ、グーリンダイノポンポコピーノ、ポンポコナーノチョウキュウメイノチョウスケ」
あっという間に二十三ヶ所もの空欄が一気に埋まり、障壁が解除されました。
『パスワードカクニン、ショウヘキヲカイジョシマス』
障壁が開いていくと、こちらの人数(?)に障壁の中にいた鳳凰の「ルゥ」がビックリしていた。
「『なんとまぁ、大人数でお越しになりましたな……』」
鳳凰がしゃべった事に、また大騒ぎ。しばらくは仕方ないか………orz
「トリさん、しゃべったぁ!」
誰だよ、この幼稚園児は…って、コヨミですかぁ!
……ああそう言えば、従魔たちとの会話も一方通行だったっけ…。この機会に意思疎通のレクチャーでも始めようかな。
「『……まぁ『トリさん』呼びされても仕方ないけど、わたしの名前は『ルゥ』、現在この庫炉里の管理者を担当しています。遙かな昔に天空に軌跡を描いていた天体の一つなのですが……、現在は生命維持装置の欠落したまま、わたしたちに使える能力の一つ、無限障壁による生命維持のシステムを頼りにしているのが現状なのです。』」
少々恥じ入るかのように、自らの体をくねらせた『ルゥ』に問い掛けた。
「『だいたいの所は、まぁ理解したかな。だとしたら、パスワードが違っていたのもその障壁によるものだろう? 元々、『ジュゲム』は境界を抜けての脱出に関するパスワードで、生命維持の補助がメインのようだからな。』」
想転移を広域で使用しながら、俺たちの仲間にも彼の言葉を伝えていた。
そこで肝心な事に言及した者が二人……、念話で参加いたしました。
「『それで生命維持装置とやらはどうなったんですの?』」
リエスとリメラのダブル口撃に『ルゥ』が、苦笑いしていました。
「『わたしの相方と猛烈なケンカをして出て行っちゃいました………orz』」
鳳凰の『ルゥ』のとんでもない言葉に「工事屋」と同期のメンツが脱力していました。
「出て行ったぁ……って…」「まじですか?」
口々に言うその言葉は、素直な感想をしっかりと伝えていた。
ただ、俺は……その逃げ出したというフレーズが凄く非常に気になってきていた。
今居る障壁のあった場所を確認していたら、その大きさに見覚えがあったからだ。
「『ルゥ』、その逃げ出したヤツってこの障壁くらいの大きさか?」
気になって聞いてみると、驚くべき答えが………orz
「『よくお分かりになりましたね。彼は生体プラントとしてこの庫炉里に接続されていましたが、彼の言によると『今居る場所も元々わたしが住んでいた場所とさほど変わらない。変わってしまっているのは自分があるじ様と、永遠に離れてしまったという事だけだ。』と話していましたよ。使い魔たる我らのあるじ様たちの祖先の住んでいた『地球』という名の星が、壊滅してしまった事だけは彼とわたしの共通認識だったのですから。まあ、逃げ出してしまったとはいえ、この星に居る事は確実なところです。ただ、わたしには行けないところを優雅に飛んでいるだろうと思いを馳せているのです。』」
この『ルゥ』に行けないところという言葉と『優雅に飛ぶ』という言葉、それに今居るところの大きさを鑑みると……。
「ねぇ、ここに居たのって……、アレじゃないの?」
ルナよ、お前も思いついたか………orz
「たぶん…な。」
おそらく、その推測は間違いないとも言えるが、「自由」を手に入れてしまったものがここに戻るという選択肢は無さそうでもあった。
「『あなた方は、『彼』を知っているというのですか?』」
ルナと俺との会話に聞き耳を立てていた『ルゥ』が、驚いていた。
「『あの超深海を優雅に飛ぶ事の出来る『彼』を!』」