146, ダンジョンで、……攻略は、二十三階へ ⑧ ~おかわり~
「え……、餃子が足りない……ですか? 仕方ない、いまから作りますか。」
餃子パーティーが予想外の賑わい振りに、とうとう追加の発注が出ました。
「えーとポロッグとカウエルの合い挽きの肉か……、層庫にあるもので足りるかな…。ユージュ、キャベジを茹でておいてくれ。」
ユージュの魔法の練習として、野菜のキャベジを取り出して、丸ごと茹でさせた。
水魔法と火魔法によるお湯の生成と、風魔法による温度の撹拌で、早々に茹で上がる。
白菜のような見た目なのに、食感はキャベツという不思議野菜。
ゴーレムハウスの屋上にある菜園から収穫されていた。
「アトリ、これ微塵切りにしてくれ。」
茹で上がったそれを微塵切りにしてもらう。メイドとしての修練の賜物か? 瞬間的に山盛りになるザルに俺も周りも目が点になる。
「このくらい、簡単なものですよ。次はどうします?」
コヨミとリウス、リメラに向かい手伝わないのかという目で挑発している。
実に大人げ……オホン、……ガキンチョぽいな。
俺の考えを読んだかのごとく、鋭い眼差しが俺に刺さり考え直した。
ただ、この挑発に燃え上がった人たちがいました。
「「「セトラくん、私も手伝う!」」」
その剣幕に、俺も「頼む」としか言えませんでした。
「リウス、ニリ、風魔法で刻んでくれる? リメラは、ショウガラ、小鉢に入るだけの量、すり下ろして。コヨミ、魚の乾物出して、水魔法で粉末にしちゃってくれる? 教えてあるでしょ、アレで。」
量が量だけに、用意する物も多いです。既にゴーレム鉄板のゴーレムの腕に撹拌を開始させています。
アレは疲れを知りませんから。
ポロッグとカウエルの合い挽きは、肉団子やハンバーグを作る時などにも使用するために、常にある程度の量は層庫に確保しています。
大きなドンブリみたいなものに合い挽きの肉と、塩、こしょう、味噌を隠し味で混ぜ込んでいきます。コヨミたちに頼んだものも出来上がり次第投入。
しばし、十分に混ぜたあとに、包み込みを始める。
ゴーレム鉄板の腕を増やし、小麦粉とデンプンなどを混ぜて作った餃子の皮を円く型抜きする腕と、その型抜きした皮に餃子の餡を包み込ませる腕とを増やし、出来上がった餃子を鉄板で軽く火を通し焼き色を付けていく。
火が通ったそれを俺の時間調整の出来る層庫に入れて、少し時間を進めると熟成が進む。
「コヨミ、ゴーレム鉄板の平板の鍋に水を入れてくれる? うん、いいよ。じゃあ、加熱。」
コヨミによる水魔法というか、癒やしの雨が四角い鍋に満たされたところで、ゴーレム鉄板に加熱を命じる。もちろん時間の短縮のために水にも火魔法で加熱をしてもらっている。
「よし、入れて。………うん、こんな感じでやってくれる?」
と、ゴーレム鉄板に微調整をして、味見をした。
熟成の進んだ餃子を白湯で、茹でる。その仕上げのタイミングは、もちろん大祖母譲りである。
少し餃子の皮が透き通ったところで、湯切りをして皿に盛る。
醤油、酢、ラー油を混ぜたタレにつけて一つ目。
この餃子に相性がいいのは、無論白米のご飯である。
「美味い!」
一口二口で食べられる大きさと、中から染みだしてくる肉汁が相まって俺は嬉しくなり、ご飯をかっ込む。ご飯に一度乗せて、口に入れるのが大祖母流だ。
ご飯に乗せた時にタレと肉汁がしたたり落ち、さながら牛丼のような味わいをもたらす。
一度で二度美味しい食べ方なのだ。
大祖母がこの餃子を作る時には、百個から二百個という数字で作り、残ったものは冷凍して、後日、鍋焼きうどんなどに入れたりして食べる事が多かった。
「おいしい!」「うまい!」「ご飯がすすむぅ!」とか、みんなが言っているので、たぶん残らないだろうね………orz
しかし、この食事がドロシーとその父親、そして、竜たちにまで、好評とは思わなかったな……。
「俺は食う!」「俺もだ!」「おぉぉぉぉぉ!」
頑張れよ……、ゴーレム鉄板。
魔力切れで動かなくなるまで、ゴーレム鉄板は働いた。
型抜きして、包んで、軽く火を通して、ゴーレムボックスに入れて熟成させて、取り出して、茹でる。皿に盛るまでが一連の流れ。
大量に作った餃子の餡が無くなる頃に、型抜きする腕から順に停止していった。
最後の皿に盛ったところで、最後の腕が停止した。
「ご苦労様、そして、ご馳走様。」
そして、魔力を注ぎ込まれ、デザートを作るために動き出す。
彼ら?に、休息という言葉は、今のところ無い。南無南無~。
自宅のギョウザの作り方と、食べ方です。食べてる時は、意外に気にしていないものです。作り方は、初めて聞きました。でも、美味しいですよ!