144, ダンジョンで、……攻略は、二十三階へ ⑥
お待たせです!
障壁が解除されてガラスみたいな三階建てくらいの大きさの扉がガーと音を立てて開きだした、その横でゼーハーと、息切れしている俺を不思議そうに見つめてきているドラ吉、ピー助、ジョンたち。
君たちも手伝ってくれればって……出来ないよね。
『あるじ殿、少々ひんやりとしている空気が流れています。』
そう、鼻先をピクピクさせてジョンが伝えてくる。
閉じられた空間だったから心配していたのだが、ホコリ臭さを心配していたがなかったようで一安心した。静謐な空気のようだ。
『なにものか?』
そう問い質すものがあった。
金の翼と白銀の体を持つ美しい鳥が佇んでいた。
その荘厳さに俺たちは言葉もない。
『私は『ルゥ』、鵬である。』
はて、この美しい鳥は今……鵬と言ったのだろうか?
聞き違いか?
『聞き違いなどではないよ。魔物誑しの王よ。』
クククッという笑い声のような声で鳴き、予想外の呼称を伝えてきた。
って、マジですか?
ルゥという名の美しい鳥に言われた呼称に気が付いて鑑定を起動してみると、ものの見事に…記載されていました……orz
仕方が無いかもしれないが竜、狼、樹草と昆虫は既に守護者をゲット済み……、虎(猫?)族と海獣族、魚貝族が近くコンプリートするかも………orz
鳥族はピー助たちくらいだから、まだ大丈夫。
『守護者システムですか、私のあるじも与えられていたものなんですがねぇ……。懐かしいですねぇ。』
ルゥと名乗った鵬がポツリと呟く。
『翼、耳とシッポ、枝葉と実【弾】、爪と牙、ヒレ、エラ、最後は眼ですよ、クククッ。』
不穏な言葉の羅列に俺としても不安感が一杯になるのでやめて欲しいところなのだが?
『ここまであるじにそっくりだと、私が付いていきたいところですねぇ。』
そんな悠長な事を言っていますが、この大陸が巻いている時間や空間とか大丈夫なんですかね~。
『あなたの心配している通り、ここからが一番大事なところです。あるじのためにも開放の呪文をお願いしたいのですが、祭壇まで行かないといけないのです。ただ、そこを守っているのが相方でして……。』
ひどく済まなそうな表情?をしているかのように見えるのだが。
『正確な合言葉でないと、通してくれそうにないんですよ。』
合言葉と聞いて、ヒリュキに言われていた言葉をもう一つ、思い浮かべる。そして、もう一つは地球の神様の言った言葉。どちらかか、どちらともか。
『という事はお前さんはそれを知らないと言う事なんだな?』
『その通りです。』
『むぅ、一応、鍵はあるし、ドアノブもある。そこに行ってみるしかないが……、ン?』
『ルゥ』という鵬と会話していたら、俺に付いてきた従魔たちが非常におとなしい事に気が付いた。
ふと周りを見てみて、俺の足元にジョンもドラ吉もピー助も畏まって座っていた。
『どうしたんだ? お前たち。』
ひどく重たそうなものが彼らの上に乗ってでもいるかのように、何かに耐えているようだった。ひょっとして、情報量の問題か?
ということは、俺の方がお前たちよりも情報量的なモノって内蔵しているって事か?
などと現状を推測していたら、従魔たちはうんうんと言わんばかりに赤べこのごとく頷いていました。
その様子にククッと鳴いた鵬は何かに気が付いたように俺に一言告げてきた。
『セトラ殿は私のあるじ様と同等の情報量を保持されておられる様子。それよりもこの庫炉里の深部に向かわれるならば、老婆心ながらお話ししておきたい事があります。既にセトラ殿がこの封印を解いてしまわれたため、現時点で外のものたちとの時間が統一されてきております。ただ、これから向かう場所は時間凍結がされております。セトラ殿も仲間をお連れでござりましょうが、彼らとの時間が……。』
言い淀む『ルゥ』という鵬に、俺は気付かされた。
いま畏まって座っている従魔たちと同じく、情報量の違いによって障壁外で待機している仲間たちもまた影響が出てしまうという事。
思い通りに時間を操作できるのならいいが、そうでなかった時には、どちらかがその生を終わらせてしまうかもしれないって事、だ。時間ほど曖昧なものは無いからな。
一度戻るか……。
そう、心に決めた時に『ルゥ』が、
『やはり一度戻られますか。では、パスワードヲドウゾ。』
「ソン、アンドウ。」
ヒリュキの中のヒリュキに教えてもらったそれは、『ルゥ』に劇的な変化をもたらした。
『……………何故、それをお選びに?』
唖然と言う言葉がぴったりの様子に、告げた俺としても会心だった。
「あんたのあるじたちを知っているのかもな。そいつが教えてくれたよ。」
名は伏せた。でも『ルゥ』は知っているんだろうなとは思う。
『まさか………彼?』
とか、つぶやいていましたから。
『彼かどうかは知らん。後で聞いてみてくれ。じゃあ、一度戻るからな。行くぞ、おまえたち、操転移!』
一路、みんなの待つ障壁まで、俺たちは転移した。




