143, ダンジョンで、……攻略は、二十三階へ ⑤
「それにしても呪限無とは、ね。」
そう独りごちながら、自分の感覚と重なる先導役の風を道案内にして操転移で直近で発動した二つの転移魔法の颯転移と送転移を繰り返していた。
ドラ吉とピー助、ジョンは小型化した状態で俺の周りに居る。
同行しているみんなが少しジャンプした状態で、加速した送転移を掛けて彼らごと転移を繰り返すこと七回ほど。ようやく都市部らしき場所が見えてきていた。
『バウワウワウ』と、ジョンが唸れば。
『ピィピピピピピィィ』と、ピー助の眼力もさすが。
都市部に近づくにつれ、俺にもその都市の様子が何かおかしいと感じられてきていた。
いわゆる建物などの様相が変化しているという事に気付いていたからだ。
それが何かと言えば、のどかな農村部なら田畑や森林などの自然が豊富なのは理解できる。だが、城下町らしい場所は低い壁しかなく魔物の出現を阻めるとも思えない仕様だし、建物はその城壁以降は雲を突くような高さにまで伸びていた。
空にさえ魔物のいるこの世界にあって、空高い建物はそれだけで彼らの破壊対象になる。
なのにそれを知っているのか知らずにかは分からないが、この大陸は否応なく前の世界を想起させてしまう。すでに足元には土や石で構成された通路ではなく、俺にしても想像の付かない素材で出来ていた。
そして、人影は全くなかった。こんな国が戦いを仕掛けてくると言うのか?
どうなってんだ?
そんな疑問を抱えたまま転移していたのが良くなかった。
『『『グルゥラララァ!』』』
頭上にいきなり影が差したかと思うと、ドラゴンゾンビ様三匹、ご登場です。
『グァララララララ!』と、ドラ吉様が炎のブレスで三匹を一蹴。
ドラゴンゾンビ三匹様、墜落しました。
ドラゴンゾンビの浮力を支えていた風の魔力を散らして落としたあとに、途中から俺たちに追従してきていたインセクトの魔物たちが集って魔力の残滓を喰らっていました。
実は、ここに来る前のレディアン皇国の戦いで仲間になったインセクトの魔物たち。
彼らが仲間になった事で、俺に『森林の守護者』の称号が………orz
植物種の種族とそれらと補完の関係にある昆虫種とをともにほぼ全種が、参集した結果ではあるのだが……。これで三つ目……。
俺が左の腕に装備していた障壁の腕輪が守護者特典で蔓鞭や甲虫散弾銃を含むガントレットに変化していた。世界樹の樹皮製である。
何ヶ所かにスリットがあり、葉っぱなどが挟まっていた。
途中、都市部に到る道中に細部の様子を確認するために放っていた昆虫魔物たちが確認を終えて、追従してきていたのがドラゴンゾンビに襲いかかったのである。
『ヒト、イナカッタ。』『ドウブツ、イナカッタ。』『クイモノ、ナカッタ。』と、それぞれに報告して、ガントレットの中に戻っていく魔物たち。中は相当広いそうだ。
そんなこんなで進んでいくと、いきなりそれ以上進めなくなった。透明なガラスのようなものがあった。出入り口を探してアチコチ見ていると、目の前のガラスに浮かぶ文字が……。立つ位置を変えてみても真っ正面に、文字が浮かんでいた。
それは、『パスワードヲドウゾ』と、小さく明滅してキーボードを映し出していた。
このガラスみたいな障壁の解除のためのパスワードのようだが、記入のための空欄は二十三ヶ所。
同じ文字が入るところもあるようで、空欄の頭の部分にナンバリングされていた。
ヒントは三つの言葉。一つは鳳凰。一つは、ソン、アンドウ。そして、もう一つ、ドロシーから聞いた言葉だ。
『あのジユグェムという言葉。』か?
『ジユグェム、ジユグェム、ゴコウ、ノスリ、キーレカイジ、ヤリスィギョノス、イギョウマツウン、ライマツフウラ、イマックゥネールト、コロニースムトコー、ロヤーブラ、コゥジブ、ラコージパイ、ポパイ、ポパイポノシュー、リンガンシュー、リンガンノグー、リンダイグー、リンダイノポン、ポコピーノポン、ポコナーノチ、ヨゥキュウメ、イノチ、ヨゥスケ』
記入するための時間が決まっていたようで、最後の所で桝目と言葉が合わなくなり、わたわたしていたら、ブザーが鳴ってチャレンジ失敗。
何回か繰り返した後にマイクの絵に気付きました。口頭でもいいのかよ………orz
『寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ
海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末
食う寝る所に住む所 やぶらこうじ ぶらこうじ
パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助』
流れるように話していくと言葉が自動入力され、無事に障壁解除しました。