131, ダンジョンで、……攻略は、二十二階へ ⑧
『ところで、『おやつポイント』って何?』
と、ミレリー様の心の声がというより、眼下の国の人々の総意だったのかもしれません。
想転移に反応がありました。
『よろしい、お答えしましょう。『おやつポイント』とは、その活躍の度合いで、食後に出るデザートが変わるという事です。戦場で戦うヒトはその戦意高揚になるし、後方のヒトは戦線を維持するための大事な事をしている。それを評価しないのはどうかという事になり、旧城のシステムを使用して、こういった混戦時にも対応したポイントシステムです。では、『おやつ』とはどういうモノかは、………………こういうモノです。』
こういうモノのところで、眼下の参戦者及び後方を支えている者たちのところに、プチプリンなどを降らせた。小さいとはいえ、しっかりぷるぷるのプリンやスーパーボール並みに跳ねる福焼きとか、種類は様々。
鬨の声をしのぐ「おおおおおおっ!」という声があたり一面に響き、またぞろ虫たちに影響を及ぼす。
『では、奮ってご参加ください。』
と、締めたところでサッツシから手鏡通信が。
『あ~、セトラ。ミレリーとじっちゃんがちょっと話を聞きたいってよ。いま、いいか?』
ちょっと済まなそうな、でも俺も聞きたいという心の声がダダ漏れなサッツシの通信にハテ?と思いながら了承する。
『まぁ、ここを離れられないけど、質問は受け付けるよ。『ギン、ドラゴン隊、任せるぞ。』』
想転移で指示を出しながら、答える事にする。
「シャイナーくん、セトラに繋いで貰えるかな?」
そう下の方で何か言っている仲間が居るようで、想転移を広域で繋いだ。
『俺に用か? ショッツ。』
『ああ、ここがレディアン皇国なのは分かったけど、俺たちって今ダンジョンの攻略やっているだろ?』
『ああ、そうだな。………あっ。げ、生活魔法か初級魔法って縛りがあったんだっけ……。』
言われて気付いた。普段から冷めているヤツだとは思っていたけど、結構細かいところに気が付くな。ある意味、俺は大雑把だから助かる。
『ルナ、攻撃案を修正する。まずは蟻塚には確実に当たるように留意せよ。女王アリの始末をしなければ分単位で兵隊アリが出てくる。次に土管を用意する。中程に磁力持ちが、圧縮した魔力でボール系の魔法を維持、その後方に風を四人配置、一人は風の民、狙いはルナで土管内部の強化はサッツシで。絞りを甘くして広範囲を狙え。一発撃ったら、砂、雷の順で交代。三度撃ったら、水竜たちとの合同でライトを使え。焦点は水圧レンズで調整、ぶち抜け!。ああ、イクヨとユージュはひとまず小雨で。風を使える者たちは風刃で空中のを狙ってくれ。…っと済まない、ミレリー女帝、お話が有るとは何であろうかな?』
矢継ぎ早に攻撃案を修正したところでサッツシからの呼びかけがあった事を思い出した。
『あ、ああ。旧城のシステムを使うと聞こえたのだが。我々レディアン皇国の民ですら建国以来、一度も城内に入った者はおらぬ。かといって他国からの干渉では、眼下にいる人数を把握できるとも思えん。どうするのかを聞いておきたい。場合によっては、わらわにも関係してくる話じゃからの。』
ああ、そういうことですか。
『成る程。障壁を越えたかという事ですか? 越えていません。越えていませんが、俺は、パレットリアとスクーワトルアには登録されていますので。現状、機能を使用する分には、問題ありません。』
そう答えると、目を剥かれた。
『登録? 登録とはどういう事じゃ?』
ミレリーはどうやら初めて聞いたようであった。だが、今はそんな事をしているヒマは無いと思いますが………。
『ルナ、サッツシは届いた? 攻撃始めて。撃つのは、磁力、砂、雷、そして風だから。間違っても火は撃たないで。光はバシバシやっていいからね。』
ルナに対して、攻撃を促す。
と、思う間もなく、星屑の嘆きが放たれる。シュッキンの障壁の外に築かれた砲台から、三連弾。手前のシロアリを吹き飛ばしつつ蟻塚も壊しているあたり、狙いは確実だ。しっかり照準を掴んでいる。
『ミレリー女帝、その件に対して詳しくはこの戦いが終わってからでお願いします。エンゼルウィング。ギン、ドラゴン隊、風属性でブレス、一斉射!』
グワラゴアゴワァという大音声とともに風属性のドラゴンたちのブレスで、相当の数の虫たちの姿勢が崩れていく。
先に撃たれた砲撃は、電子レンジの効果を引き出しているために蟻塚の中のアリたちにダメージを与えていた。
その効果は、シロアリもその後ろのアリたちも動けなくしていた。
さらに加えられた風刃は目の前に広がる虫たちを縦断し、その脚部を破壊する事で、その侵攻に影響を与えていた。
動きの鈍くなった虫たち、それをレディアン皇国から出ている兵士や冒険者たちが討ち取っていく。さらには、雷の効果が残っている間に降った小雨は、強固な鎧を持つ甲虫類を駆逐していた。ウェーキの水雷に似た効果を出していたからだ。