130, ダンジョンで、……攻略は、二十二階へ ⑦
『セトラ……、どうしたんだよ、それ。』
気絶から復帰したサッツシが手鏡型通信機から、問い掛けてくる。
『どうしたって……、何が?』
俺は不思議に思っていた。下からは怒気が、横からは何か触りたいオーラ? みたいのを感じていた。
『空を飛んでいるのは?』
とサッツシ。
『ドラゴンたちの守護者になったからだな。守護者特典だと。』
多分と付け加えながら、俺が答える。
『そうか。じゃあ、頭の耳とシッポは?』
とサッツシ。
『ああ、それも犬神の守護者の特て……ン? えーと、サッツシ?』
俺は、サッツシの言葉に異変を感じた。
『なんだ? セトラ…『セトラくん? こっちおいでよ。触らせて可愛いシッポ!』…ミレリー、ハウス!』
サッツシに問い掛けたところに、記憶を取り戻したミレリー女帝からお誘いが……。
サッツシがぶち切れていました。
ちなみに、彼らのその言動で俺の現状が判明し、下から吹き上がってくる怒気の理由も判明しました。
『セトラくん、怒らないから、降りてきなさい!』
きっちり怒っている人の言葉ですよ、コヨミさん。
降りようかどうしようかと悩んでいたら、虫たちが再起動に成功したらしく不気味な振動を始めていました。
ブブブブブブブブブブ……。
『降りている時間は無さそうだ。障壁を張ると同時に城門の前の森を少し切り開きたい、ミレリー女帝に聞いてくれないか、サッツシ。冒険者たちや兵士たちにも俺たちの参戦を伝えてくれ。同士討ちはご免だからな。』
想転移を使って指示を下していく。
「ああっ。………おまっ、こんな事できたのか?」
「どうしたのサッツシ。何か聞こえたの?」
突如、叫んだサッツシにミレリーが不審の目を向ける。
「セトラからだ、ミレリー。あいつらもそして、俺も参戦するってことさ。んで、いま展開している兵士たちにも通達してくれって。」
想転移の内容を告げるサッツシにミレリーが目を剥く。
「分かったわ。爺、みなに通告を。いまの敵はあの虫たち、他は無視しなさいと伝えなさい!」
「ははっ、衛兵! スピークを使用して良し。戦闘域全域に伝えよ。『敵は虫たち、他は無視じゃ』! ププッ。」
何故か、吹き出しながら伝えていく。ミレリーはこの現象を不思議に思いサッツシに尋ねようとした時、全域にその指示がスピークによって伝えられた。
一瞬の間を置いて、全域で笑い声が起きた。
「えっ、ななななな何が………。」
「ぶはっ。あはははは。兵士たちの緊張を解くには、うまい手を使ったな、ミレリー?」
そう言って、隣を見ると何も分かっていないミレリーのジト目が合った。
「サッツシ~、何を笑っているの。」
サッツシの額に冷や汗が一筋垂れた。
「自分で言った事に理解が及んでいなかったか………。前もそうだったのか?」
「だから、何?」
「いや、だから『敵は虫、他は無視』って言っただろう?」
「それが? ……………ああっ!」
?マークを付けて考え込んでいたが、ようやく理解できたようで、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
「う~、言われて分かるなんて、すっごい恥ずいぃぃぃ!」
「おいおい、言葉が素に戻って居るぞ。じいやさんもビックリしているから、気を取り直せ。じゃあ、俺も行ってくるな。」
そう言って歩き出そうとしたサッツシの服の裾を、摘まんでミレリーが一言言う。
「任せましたよ、我が騎士。」
「御意に。我が皇帝。」
『シュッキン、障壁を頼む。ルナ、俺についての疑問は後回しにしてくれ。結界挑戦部の力を借りたい。星屑の・嘆きを磁力、砂、雷で三門構成。三斉射後、各自の属性で頼む。他のみんなも聞いてくれ。最後方にキラーアント、岩サソリ、そして、リッチーが居る。ちなみに撃破数によってはおやつポイントに加算がある。数のチェックは、ここの旧城がやってくれる。』
状況の把握を促すために今の想転移は眼下の味方全員に繋いだ。
『シュッキンと障壁』『結界挑戦部とルナ』、この言葉はガルバドスン魔法学院の奇跡であり、不名誉である組み合わせだった。だが、それが一堂に会して、今ここに在るという事をレディアン国の参戦者たちが理解した時、おおいに湧いた。
自分たちの国にも奇跡を、と。