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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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126, ダンジョンで、……攻略は、二十二階へ ③ 

 レディアン皇国女帝、ミレリー・レディアン・ミズノは、寂しく微笑んだ。

「サッツシには連絡できぬな。あやつも冒険者稼業、今頃どこで依頼をしておるのかのぅ………。」


 相次いで入ってくる魔物の状況に戦々恐々とする家臣たち、それ以上に民草たちの怯えがミレリーの心に予想外の依存心をかき立てていた。


 始まりは半月ほど前の事、この砂漠化した大陸の中でも豊かな森を領土とするレディアン皇国の砂漠化を始めた場所が増えているという報告が上がり出した。


 最初は小さな村の小さな畑が枯れていく事が多くなっていた。

 砂漠に面しているというだけの理由でその村を含む街の領主は、詳しい調査を行っていなかった。


 彼らにとっての最大の関心事は中央に戻るために腐心する事だったのだから。


 中央で把握するようになったのは、他国からの商人がもたらした情報だった。

「この国の森が小さくなっている……。」という、有難くない情報だった。


 その商人によれば砂漠からの街道沿いにあった泉が枯れている時点で何かがおかしいとは思っていたらしい。最初の目的地である、この国にとっては小さな小さな村では有ったがその商人たちはこの国に来る時、出る時には必ず寄っていく大事な商談の出来る村だった。

 そうだった(・・・)のである。

 そこに有ったのは蟻塚。その村の家を侵食したシロアリたちの居住の塔であった。

 住む者たちは居なかった。

 散り散りに逃げたと信じていた者たちの変わり果てた姿があった。

 この村は既に死の(あぎと)に捕らわれていたのである。


 そして、近隣の森からは、多くの木が消えていた。



 この死の村に留まる()(おか)せるはずも無く、足早に商人たちはその地を去ったという事だった。


 だが、この時商人の馬車にシロアリが幾匹か隠れてくっついていたらしい。

 この昆虫という部類に当てはまらない行動をするモノが居たという事は、彼らの一部が魔物化しているという事の証拠だった。


 このシロアリが魔物化した理由は、アリの魔物に追い立てられたためである。

 シロアリの天敵はアリ。ましてや、キラーアントという戦争の産物がさらに、その背後に居るために急速に魔物化したのである。


 俺たちが学院のダンジョンの二十二階の扉を開けたのが、キラーアント来襲の寸前。

 討伐準備を整えていたレディアン皇国の徹底抗戦を始める日である、まさにこの日この時であった。


 既に冒険者ギルドにも話を通した。皇国軍も出動させる。国庫を振り絞ってでも、時間を稼がなくてはならない。旧城への出入りが敵わないために、伝説にあるような一発逆転は使えない。

 それでも、出来る事を考え出しては、すぐに実行させる。

 既にやれる事の大半は結果待ちである。


 だが、それでもミレリーには不安が払拭できないでいる。


「サッツシ、どこにおるのじゃ………。わらわは、ここじゃ、ここにおるぞ………。」

 最初は胡散(うさん)臭かった流れ者のサッツシ。


 だが、その(すが)めた眼の奥は傷ついていた。何か信じていたモノに裏切られたというか、そんな軽いものでは無さそうだと言わんばかりの表情になっている事にも本人が気づかないほどの何か。


 だが、日々を過ごすうちにミレリーの心にも何かが生まれ始めていた。

 それはきっと、似たもの同士の寄り添いだったのかもしれぬなと、今になって気づいた。


「あるじ様……、あの方が……。」

 じいやの慌てた声が聞こえる。魔物がもう、ここまで来たというのか? やや不思議に思いながら、ミレリーは心の闇から抜け出ようと思いつつ、ぼんやりとその者が来るのを待っていた。


「じいや、何をそう慌てておるのじゃ? 最後まで気高く行こうぞ。」

 そう告げた時だった。


「何しょぼくているんですか、わたしの陛下?」

 いつも側で聞いていた声だった。懐かしい声。ウソだと思った。

 そんなに都合よく彼が居る訳が無いって。


 ミレリーは怖くて、それが幻だったらと、怖くて振り向けないでいた。


「前も言ったじゃないですか? あなたの危急の時には、『俺』が守るって、さ。」

 その言葉、そのセリフ、彼だ!


 恐がりのミレリーはやっと振り向いた。

 そこに居た彼に向かって微笑んでいた。

「遅いぞ、サッツシ!」

御前(ごぜん)にまかり越しました、我が皇帝(きみ)。」

 ミレリーの好きな笑顔がそこにあった。

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