忘れ去られていた魔物……、それは黒真珠虫 ①
完璧に忘れていました。セトラくんに至っては現地時間でほぼ一年半は………orz
俺は空を飛んでいた。夢だと判る夢の中で………。
なんか、こんなのいつか前にもあったような…と思いながら、一人ぼけら~としながもら俺は何故か飛んでいた。
『やあ、久し振りだね。あの時の雷神の。その翼は君のかい? そちらの世界の神たちも粋な事をするじゃ無いか。』
そう、明るく宣ってくれたのはジルハマンと名乗る男。
何か円いモノに乗っている。
どっかで見た事のあるモノだなと思っていたら、ようやく思い出した………、大暴走の時の魔物の黒真珠虫。本来の大きさは両手で抱えられるほどで、四、五十セチくらい。
確か、体内にある砂肝という袋状の部分に石を取り込んで自分たちの体液を塗していく事で、取り込んだ魔物の肉などを砕いて栄養にしていくための道具にしている魔物で、極々たまにその砂肝の中の石が見つかる。たいがいは討伐の結果のため、黒石になるのだが。何かのタイミングで黒真珠が見つかる事がある。そのために、冒険者たちにとっては一攫千金の値打ち物なのである。
『その虫はあの時の………え、翼? いったい何のことを……ああっ、そう言えば鑑定に出ていたような気がするっ!』
黒真珠虫の事を考えていたら、突然言われた驚きの言葉に首を巡らせて背後を確認した俺は力が抜けた………orz
ジルハマンという男に指摘された通りの翼があった。
ドラ吉のものとそっくりの翼で、それも鳥の翼ではない方のヤツ……。
『おや? 何かガックリしているようだけど、それは君の魔法力の一部だよ。変化させるのはお手の物だろう?』
そうなんでもなく言われたので、ちょっと意識してみると簡単に変わった事に驚いた。
『このまま魔物誑しを続けていくと、他の神からも守護神を頼まれるかもね? ああそう言えば、神に近い者たちからの感謝が高まっている種族があるようだね。クスクスクス。』
え…、なにそれ? 他の神からって、アレは頼まれ物なのかぁ?
何でも無い事のように言われて少々唖然とした。
だけど、神に近い種族って、アレかな、多分そうなんだろうな………orz
既に42、195種……いや42、212種ものそれらの種族が、仲間になっているのだから。あり得ない事では無い。世界樹からして、そうなんだから、可能性は高いのか………orz
『ほら、頭に月桂樹の冠が………』
言われたその言葉に焦って額に手をやるが、その感触は無くホッとしたところに追い打ちが……。
『ハハハ、済まん、冗談だ。だが、犬耳とシッポが出ているぞ? 気を抜いていると自己主張するようだな、ここでは、な。』
もう、勘弁してください………orz
その気持ちを代弁するかのようにイヌ耳というか狼耳が垂れ、シッポも力無く垂れた。
それを知覚できる事にまた、俺は凹んだ。
『お前さんはもう戦ったようだが、お前さんたちの中には『白』と『黒』は本来、大なり小なり同居している。だが、どこの世界でも神たちは本来持っている『黒』の影響を小さくし、それぞれ自分の色を持つ。お前さんはその名前の中に、自分が本来持っている色を選択できるような名を持っているようだし、ひょっとしたら、いずれ、……出会うかもな。』
俺をじっと見ながらの言葉に、どう考えても面倒を抱え込む未来しか見えなかった。
『そんな話をするためのこれ(夢)だったんですか?』
俺の感じていたままの呆れた想いを、そのままぶつけた。
『ハハハ、違うよ。こいつらが用があるって言っていたんだけど、君にね。でも、あそこの堀に入れられたまま君は帰ってこないし、帰って来ても完全に彼らの事、忘れていただろう? 思念の増幅器として君の国の古い城を経由して意識を飛ばしていたんだ。それがこちらに引っかかった。なんと言ってもアレは元々わたしのところの産物だから、わたしの波長になっているんだよ。』
この事態を招いたのが目の前に居る、黒真珠虫だったとは想いもしなかった。ダイマオウグソクムシたちとの接触は知っていたのだけど、俺との接触では何か黙っていたようだから、時期が来るまでは放置しておこうと思っていたんだ。
それがまた何で急に?
『君が、源の黒を得たからだよ。』
一番近くて、それでも、彼らには尊いと感じられるほどの『黒』。
それを俺は得たという事なのだろうか?
『惜しい! 君の『黒』の光に引き込まれた彼らだけど、君は他の色も持っているだろう? 彼ら黒真珠虫の前の主は『黒』一色。でも君は違う。五色(五色では無く様々な色のこと)の光の中にある『黒』なんて、初めて見たそうだよ。『黒』と対立する『白』と『青』、どちらにも属さない『透明』と『赤』、そして、『黒』に並び立つ『紫』、『黒』に繋がる『黄』と、『黒』、ダイマオウグソクムシたちの説得もあったのかも知れないけど、ね。』
ジルハマンという男の言葉に、ふと気になる事があった。
『俺のステータスの中に『黄』という色はありませんが?』
そう尋ねた俺の言葉に反応した彼は俺をじっと見つめる。
なんか居心地が悪い。
『ああ、まだ発現はしていないが、既にその素養は発揮しているようだね。だからだよ。』
この人は、未来も見られるのか?
口には出していないが、既に何度もこちらの心を読んでは話しかけていた彼には造作も無い事のようであった。ちょっと、悔しいかも。
『ハハハ、そりゃしょうがないな。わたしもかつてはそんな風に手玉に取られていた事もあるよ。まぁ、伝承というところかな。』
何故か、続くようです。