124, ダンジョンで、……攻略は、二十二階へ ①
少々、色付きです。いや、エロ……かも。
仲間で結婚したのはこれで初めてでは無いが、初の閨の時も一緒に居る羽目になったのは初めてだった。
本人たちも恥ずかしかっただろうが、俺たちだって恥ずかしかったわ!
その初……初や…ン、……ン! 初夜のための閨房が犬神神社の祭壇の奥にある洞窟なのだが、村の先々々代の長から仕えていた世話役のオババ(元気なバアちゃんである)が二人を連れて行き、その扉を閉じた。
彼女しか知り得ない、世継ぎを授かる時間帯が分かるというのだから、村の女性たちから絶大な信頼を得ている。らしい………orz
そんな事、俺ら知らないから。
ただ、コヨミ、リウス、リメラ、アトリの四人は興味深げにしていたから後で聞いてくるのかも知れないが。
それにしても、だんだん外堀が埋められていく気がしてならない………orz
とはいえ、既に一緒のベッドで寝ている事を考えると今更という感が無くもない…か?
それ自体はもうちょっと先で展開したいものですなぁ。
初の閨の翌朝には、オババが勇んで出て来たのだが、先代の長に喜色満面の笑顔で報告していたという事だけにしておこう。
……いや、誰にと言う訳ではないのだが、ね。
ああ、二人は相当に赤い顔で出て来たよ、……うん。
さて、次は二十二階だが、新婚ホヤホヤの二人がどうするとかっていうのは聞いていない。それは二人に任せましょう。
まぁ新婚旅行っていうものが、こっちにもあるかどうかまでは知らんけど、ね。
「カッタェはここに残っても良いけど、「工事屋」の仕事も残っているからな。おやつポイントは凍結しておくか?」
伴侶を見つけようとも、子供が出来ようとも、学院でやらかした件の精算のために自らが課した債務に関しては、それぞれが支払わなければならないのだ。
そのための学院復帰なのだし、そのためのおやつなのだ。
おやつが欲しければ、工事を頑張るしか無い! ……あれ?
「うがぁ、そういえばそうだった! ?あ痛たたたた……。」
そう叫んで頭を抱えた直ぐ後に、どこかが痛んだのか、蹲っていました。
「だ、大丈夫か、カッタェ? それに「工事屋」とは何の事だ?」
カッタェを気遣うワッケィンだが、それはもうオロオロ状態。
「だ……、大丈夫くな~い……」
カッタェは身動きもままならないようです。
なかなかに激しかったのでしょうかね。いえ、何がとはいいませんが。
女性陣は興味津々で、男性陣は興味ありありでいながら見ないふり。
どちらも相応に第二次性徴期に入ってきているようですなぁ。
俺とヒリュキ、ウェーキとユージュと魔王シャイナーが、まだそこまで到達していない。
ああ、ヒリュキと魔王シャイナーに関しては、例の事件後、成長が緩やかになっている。
急な発達は、悪影響しかもたらさないからな。
「ワッケィン、慌てすぎだ。落ち着けって。それに「工事屋」っていうのは、床暖房などの工事を請け負う人間たちの事を指している。」
「床暖房って、あの床暖房か?」
「その【あの】っていうのがどの床暖房を指しているのかは知らんが、前の時にあったような「床暖房」を受注しているし、実際に工事している。」
「お風呂も作っているわね。」
「今だったらカッタェが入りたいんじゃないかしら?」
「そうよね~、さっぱりしたいよねぇ~。」
女性陣の言葉の端々にカッタェの事を考えて、付けておいた方が良いんじゃねぇの?
というようなワッケィンへの脅しがチラホラ。
「あ、……ああ、風呂か! そ、そうだな。頼めるか?」
罠に嵌まったな、ワッケィン。風呂は高いぞ。
男女別で一軒の風呂を造るという事は、一軒の屋敷を建てなければならなくなる事だから、ハッキリ言えば大仕事出し超高価だ。まぁ、裏技はある訳だが。
「裏技?」
不審そうな顔で聞いてくるワッケィンに提示したものは、夫婦での「工事屋」に参加する事。もちろん、分割で。
熟考の結果、「参加」することに決まりました。
そして、今回の件での報酬というか、得た物としては交易が決定しました。
この島には、畑も無ければ水田も無い。せいぜいが山の実りと海産物。
しかも、銀狼たちは、海産物がそれほど好きでは無いらしく、他の島々に狩りに行くという事だった。
なんと、………勿体ない。
俺の国に、海は無いのだから。
塩だって、ほぼ一〇〇%が岩塩だ。
「では、そういうことで取れた海産物をこのゴーレムキューブに入れてくれ。門扉のアポルツは、このキューブの管理も頼むぞ。」
犬神神社の穴を塞いだ二十二階への扉はアポルツと言い、今後もこの犬神神社の格を高める上で重要な位置づけになる。
ダンジョンの攻略後も、ここに張り付いていて貰う予定だ。
さて、全てを打ち合わせた上で、二十二階へと向かう事になったのだが、レドッグたちがようやく島に戻ってきていた。
新しい長の祝言に間に合わなかった事から、旅立つ夫婦のためとその仲間たちに対して立ち振る舞いを催す事になった。
それは、レドッグたちからのせめてもの賑やかな別れの演出だった。
やがて、犬神神社にあった舞台には、巫女装束のロミィが上がっていた。
普段のポヨポヨとした彼女の言動は既にそこに無く、見事な立ち居振る舞いで神楽舞いを演じる巫女が存在していた。
「「「「「シャンコ、シャンコ、シャンコ、シャンコ、シャシャンコ、シャン」」」」」
というお囃子と手拍子に乗って、厳格な舞いを舞っていた。
厳格な舞いって、盆踊りの節じゃないかよ?
その舞いが終わった後………。気になっていた人物からの接触が、ありました。
気になっていたのはワッケィンの妹のロミィ。祝言の前後から、元気が無い。
やはり何か気になっている事があるのだろうな。
「ねぇ、あなたの名前………セトラさんって言われましたよね?」
この問い掛けって既視感がありまくりだ。
「ああ、そうだが、それが何か?」
敢えて、フルネームは言わない。何かに気づいているかのような素振りもしない。
自分の中の何かを見つけるのは自分で、そして受け入れるのも自分だからな。
「ああ、やっぱり。その知らんふりの時に二回頷く動作をするのは変わらないね。」
自分でも知らなかった癖を言われて唖然とした俺の顔を見て、クスクスと笑顔になる。
「な、何?」
「やっぱり、気づいていなかったんだね。ふふふ……」
「そんな事、気づく訳が無いよ………orz」
先代の長は再婚同志だった。母親側の連れ子がロミィで、父親つまりは長側の連れ子がワッケィンだった。
イロミィ・ホージマが、前世を持つ者だった。つまりはそういうこと。
ガルバドスン魔法学院の学院長に渡されていた紹介状を渡す、初めてのプリン基金の受給者となった。