121, ダンジョンで、……攻略は、二十一階へ ③
上書き保存が、何故か上手くいかず、遅くなりました。どうぞ………orz
「長、こちらはどなたなんで?」
長になって初めての狩りについてきた先代の長の補佐、レドッグがワッケィンの横で真っ赤になって満開の笑顔になっているカッタェが気になっているようだ。
「うぅぅぅぅぅ、…よ、…よ、……嫁だorz」
呟くように、だが、しっかりと嫁である事を宣言したワッケィンくんは嬉し恥ずかしと複雑模様。
前の時はどうやら、重要なひとときだったようだな。カッタェの笑顔が全然違っているもの。
「よ、嫁? 嫁ですかい? そりゃあ、初めての狩りで嫁を手に入れるなんざ、なんて縁起がいいんですかい! 島に帰ったらすぐに、みんなを集めて祝言ですなぁ………。先代も喜びなさるでしょう!」
レドッグのまさかの喜びようにワッケィンが頭を抱える。
そこに不思議そうな声音でズバリと聞いてくる者がいました。カッタェです。
「祝言って何?」
「…………えっとぉ、その……あの……、それなんだが……あぁぁぁぁ………orz」
真っ赤になって意味不明の言葉を発しているのは、ワッケィン。
まるで意味不明の言葉の羅列に首を捻っているカッタェに、いらないお世話をしたのもレドッグだった。
「姐さん、祝言というのは縁結びの事でやんすよ。」
赤くなって黙ってしまったワッケィンの代わりに、妻帯者の先輩としてレドッグが語る。語る、語る。そして、暴走した。
「姐さん? 姐さんですかぁ? 超恥ずいんですけど!」
カッタェの顔も既に朱に染まっている。周りのみんなは既に座ってこの寸劇を楽しんでいた。というより、他にする事が無い。
一部始終を見ていたコヨミ(既にコヨミ姉ェでは無い)に「ねぇ、セトラくん。アレ欲しいな♡」と、カッタェの手の中にある物を指差され、まあ、お目出たい席でもあるのでちょっと一工夫して出してみました。
プリナラモッド、地球でいうとこのプリンアラモードですが。カウエルのミルクから作った生クリームとか、プリンは小さめのホール型を使い、それ自体も器にして、中央部には、ホワイトチョコによるミニスプーンを差してみました。何か、スッゴイ豪華です。
ゴーレムキューブから出しては、皆に手渡されていきます。あ、スプーンは別に付いていますよ。
みんなが、それを食べながらカッタェたちのドラマを見ている。飢えていたんですねぇ……、こういうの。まるで「ちい恋」ですから!
「犬神様の御前で固めの儀式があって、一族総出の宴会があって、長と姐さんの初めての共同作業による鏡開きがあって、その夜にお二人の初の閨があるんでやんすよ……ぐほぉぅ!」
最後まで聞いてしまって、それが何かを理解した時のカッタェの右手と、詳細な説明に耐えきれなくなったワッケィンの左手による初めての共同作業が、レドッグの顎にアッパーとしてドカンと炸裂した。
「「も、もういい! 聞いてて恥ずいわ!」」
まさに息もぴったりのお二人でした。
しかも初めての共同作業が、ここで。
レドッグが親指立てた握り拳を見せて、天空へと消えていきました。
「一度、俺は一族の居る島に帰る必要がある。この土産も持っていかなければならないし、先代にも報告しなければならない。それこそ、祝言もな。お前の匂いはすぐに分かる。セトラのマーキングもあるから、またすぐに戻ってくるから、……な。今度は待たせないから! …………愛しているぜ、カッタェ。」
ワッケィンの言葉にカッタェが「うん!」としっかり頷いていました。
「熱っつ!」「いいなぁ……。」「匂いって、そりゃ狼の鼻だから、凄いんだろうねぇ」などと、みんなで囃し立てる有り様。
カッタェは真っ赤になって「あぅぅぅぅぅ……」と、言って絶句していました。
ワッケィンの仲間のひとりが指笛を吹くと、魔法の絨毯のような飛鱏たちがぞろぞろとロック鳥の巣の近くまで上がってきました。
その飛鱏に飛び乗って彼らは自分たちの島、ディアーク島へとへと戻っていきました。
ちなみに、ここからその島まで順調なら三日でたどり着くそうです。
ワッケィンに渡したマーキングのための物は、みんなに渡している腕輪と同じ物。
既に腕に付けていました。
総転移の際に、みんなの位置を把握するために、起動した鑑定のサブ画面にドットでマップが表示される。しかも、最近分かったことなのだが、このサブ画面がパレットリア新国の旧城とリンクしているようで、腕輪と従魔登録票の障壁の魔法陣が反応を返してくる。
たとえ、それが星の裏側であったとしても………。
どこの技術が反映されているのやら………orz
彼らの乗った飛鱏を見て、格好良いなと思ったのは事実ですが、今のところはなでなでするだけで無理に従魔とかにしないでおきます。いずれ時期が来たらとは思っていますが、ね。風を切って地面すれすれなんて、F1並みのスリルでしょうから。ワクワクします。
ワッケィンが、カッタェとの別れの儀式をしていた間に俺たちは見ないふりで飛鱏たちとふれあい、友誼を結んでいました。
やがて、ワッケインたちは自分たちの島へと帰っていきましたが、何匹かの飛鱏たちがこちらを振り返っていたのが見えていました。
ひょっとしたら、誑してしまったかも知れません……………てへっ。
とはいえ、彼らが島を離れたその頃の俺たちは、二十一階へのダンジョンの扉による査定の真っ最中でした。