119, ダンジョンで、……攻略は、二十一階へ ①
続きをどうぞ。
先ほど、盛大な音というか声みたいなというかしていたのは、腹の虫の音であった。
彼らは相当に腹が減っているようで、漏れ出ているウナギの匂いにダラダラとよだれを漏らしていた。
「ねぇ、あなたの名前はなんて言うの?」
障壁の外に居るワッケィンに近寄りながら、ウナギを箸でちぎっては目の前で食べている、ある意味極悪な性格を露出したカッタェが、そこには居ました。
「お前は………、いつもそうなのだな。」
「え……?」
その会話を気にしていないものは居なかったようで、ワッケィンのその物言いに息を呑む者多数。
「だ、断定したぞ、オイ。」
「てか、カッタェの性格って前もそうだったのか?」
「し、知らないよ。……あれ? カッタェとワッケィンくんって、そう言う関係だっけ?」
コソコソ、ボソボソという言葉に、ワッケィンのケモ耳がピクピクと反応している。
ただし、シッポは警戒感一杯に膨らんでいる。
前世を思い出すのは、まだのようだ。
たぶん、「なんでこいつら俺の事を見ているんだろう?」くらいにしか、考えていない。
それでも思い出のダムが決壊するのは、時間の問題かな。
「カッタェ、そいつと話がある。いまはちょっと控えてくれないか?」
俺の方で話を進めておきたかったから、女子連中の非難の目を意識しながら言葉を掛けておく。
「馬よ、馬……」「蹴られてしまえ!」
ちょっと、凹んだな、俺………馬か。
蹴るぞ、お前ら………。
「今日のデザートは無くていいか? たまには自分たちで作ってくれよ?」
あんみつを用意していたが出さなくてもいいか。
「ぎゃああああああああ」「そんなぁ、いまから作るのぉ?」
途端に悲鳴が轟く。
女子連中が騒ぐ中、コヨミとアトリを筆頭にリウスとリメラが俺を見つめてくる。
アトリたちとの寝物語には、食事の話しが多かったが最近はいつもデザートの話が必ず付いてくる。どんな器に盛っていてとか、味や形はこんなんでとか……、そういったものをだ。
そう、必ず、だ。
どれだけ、気にしているのだろう。
「セトラくん、わたし達の分はあるでしょう?」
コ、コヨミの目が怖い。アトリ、プ・リウス、プ・リメラも同様である。
コヨミたちの眼ヂカラに、負けました、ハイ。
「分かったよ。ゴーレム保冷庫、カモン!」
冷蔵庫ほどの強力なものでは無く、ほんのりと冷たく甘いものが入っております。
あんみつと蜜豆。もう、食べ頃の。
「こほん。お前たちは何の一族なのだ?」
さて、気を取り直してワッケインに声を掛ける。
「オヌシ、おなごの尻に敷かれておるのか?」
気にしている事をずけずけと言ってくるヤツだな、こいつ。
「おまえほどじゃないさ。」
軽くジャブを打ち返しておく。痛いところを突かれたように顔を顰めている。
「言ってくれる。だが、気になっているのは確かだ。先ほどのおなごは何となく見知っているかのような態度だったが、俺たちの一族に俺にあんな事をしてくるものは居ない。この銀狼の長に対して、お預けを食らわすとは………。俺の母でもしないぞ。」
ほほぅ。銀狼の長ですか?
『コーネツ、聞いたか。説明よろしく。』と、想転移しておく。プの姫さんたちのような芸当は無さそうだし、いいよね。
『簡単に説明するでござるよ?レディアーク大陸のほぼ真裏に位置するディアーク島の種族で飛鱏を使役して近隣の海洋で狩りをしている種族でござるよ。最強の男を長にするでござるよ。』
ザクッとした説明だったけど、何となく分かったかも。
「では、銀狼の長どの、この障壁より内側の魔物は全て、俺たちの従魔になっている。この地より立ち去ってもらおうか?」
こういう話し方をしていたら、後ろの方でカッタェが動揺するわ、女子連中の目が痛いわと、いろいろな光線が飛び交っていました。
「それでは、俺たちの移動のための食い物を寄越せ。でなければこの障壁が消えた瞬間にお前たちを食いちぎってやる。」
そう言うと、にかっと歯……というよりは牙を見せてくる。
まぁ、脅しですかね?
「そうかい?」
そう言うと、障壁を送転移で潜り抜けて、銀狼の長の目の前にでた。
「出たぜ?」
銀狼の長ともども、一族の連中の顔が唖然としている。
しかも後ろの障壁の内部では焦った顔が多数、存在していた。
そして……。重厚な扉が出現した。
あの一〇階の時にも見たようなヤツだ。
『二〇階のボスとの遭遇を確認。二〇階クリアの可能性が発現するでする。』
二一階に通じる扉が出現したかと思うと、またその扉が勝手に喋り始めました。
つい、魔王様を二度見しましたとも。なんだよ、またか?
ほのぼのしいハーレムって……。
でも、尻には敷かれているようなセトラくんです。




