116, ダンジョンで、……攻略は、二十階へ ③
夏風邪を引いて、グダグダしていました。
途中、続きを書いて、ミスで消してしまい、
コレが自分にとっては何回目かのお話で、そのたびに違う文章になっていて
まだ書き足りないものがあるのじゃ無いかと、思ってしまいます。
風邪は治りきっていませんが、ひとまず、続きをお送りします。
『助ける? ……どう言う事だ?』
ジョンの声に応える。それについての答えはコーネツからもたらされた。
『あるじ殿、この大陸でも彼らの住める森林が減ってきたのでござるよ。後先考えないヒト族同士の戦争によってでござる。魔王様を含め我ら第一の使徒があるじ殿の元に付いてから、どの大陸についてもヒト族に対しての脅威は減ったでござるよ。減ったら減ったで碌な事を考えないのでござるなぁ。結果として、森を追われた筆頭が彼らでござるよ……。』
しみじみと語るコーネツの姿に、彼の一族もまたヒト族との軋轢の中で過ごしていたことを思い出した。
「ねぇ、なんか煙たくない?」
ルナがぼそりと呟いた。
「そう言われれば、煙たいかな?」
『呑気でござるな………あるじ殿、これは獅子狼を追い掛けてきていた狩人たちが予想外の獲物を見て欲を掻いたでござるよ。この煙には痺れ薬を混ぜているでござる、ロック鳥の想定外の大きさに微塵も効果は出ていないようでござるが、それでも毒は毒でござるよ。』
コーネツの説明口調の半ばでシュッキンがセーフティエリアの障壁に干渉して、ロック鳥の巣の周りまでその大きさを変えていく。声を掛けようと思った瞬間で、ここまでの制御を見せるとは腕を上げたな。
とはいえ、いまだに毛玉こと獅子狼たちは逃げ惑い、ピーコは突きまくる。ここいらで正気に返らせておかないと、これからの作戦も立てられやしない。
『ピー助、ピーコがあの状態なんだが、止められるか?』
ピー助に聞いて見るも、速攻で首を振られた。
『無理、ムリムリムリムリムリ!』
どこぞの赤べこよろしく、『無理』を口にしながら首を横に振り続ける。
『あのシロとアカネはワームコイン食っているんだろう?』
確認しておく。
数瞬ののち、ピー助より答えが返ってくる。
『子供たちには確かに水で戻していないヤツも与えていましたが、それよりも何故子供たちの名前を知っているので? あるじ様には教えていましたっけ?』
確たる答えとともに名付けに対しての疑問が降ってくる。
『お前がピー助でアイツがピーコなら、子供の名前は決まりだろう?』
案の定シロとアカネであったことに、やっぱり感を出しながら答えておく。
『じゃあ、ピーコは食っていないんだな?』
『ピーコとあるじ様が出会ったのは子供たちの雛毛の生え替わりの時期でしたから……、食べていないです。……って、ああっ後で怒られるかも?』
頷いた後でピーコの怒りの嵐を想像して戦くピー助を尻目に、鳩に豆鉄砲作戦を開始する。
『風よ、来よ!』
その言葉が気象の風を呼んだのか、それとも魔法の風を呼んだのかまでは俺は把握していなかった。なぜなら、風は唯一のものだからだ。
だが、その風は俺の思う通りに動いてくれた。
層庫の中に眠るワームコインを一掴み出すと、風に上空まで一気に運ばせた。
堅く乾燥しているワームコインに適度に水分を戻すためであり、二〇メルは優に有るロック鳥の上空から落とすことによる【なんだこれ?】を演出することにあった。さてさてどうなりますかね、ドキドキ。
ただ、想定外だったのは、ネコミミ族のようにギラギラとした目力を発揮した従魔一同だった。ワームコインは依然として従魔のおやつとして一般的なものであったが、その地位を高く確立していたからだ。
他のフラレンチ・トゥストに代表されるおやつの数々はスペシャリティなので、従魔たちにとっては衝撃のプレゼントだということらしい………あれ? 火モグラたちって優遇されてないか?
おい、コーネツそう思わないか?
『そ、そうでも……でござるか? 「床暖房」頑張るでござる。超頑張るでござる!』
コーネツのその言葉に、気付かされた。みんなの力が必要なのだということ。
「そ、そうだな……。火モグラたちくらい、他の従魔たちも頑張ってくれ。………いや、俺に力を貸してくれ、みんな。」
今更ながら気付くにも程があるなと自嘲しながらの俺の目の前で事態が動いた。
ワームコインが降ってきたからだ。
『ピジュッ!』『ギャゥ、ギャオガ、ガァ?』『ガオ? ガオォ……ガウ!』
高く上がったワームコインはある程度湿った、ある程度の堅さを持ったままロック鳥のピーコに直撃し、獅子狼たちの目の前にも降ってきた。
いきなりのワームコインの雨に戸惑っていたピーコと毛玉は、仲良くそれを口にした。
『肉とは言え、少し小さいが、背に腹は代えられねぇ。…………………美味っ!』
毛玉の一匹の言葉がその驚愕を教えてくれていた。
だが、ピーコは少々違っていた。ロック鳥にとっては遙かに小さなそれを咥えて、何かを思い出すかのように首を右に左に傾げていた。
その隣でシロとアカネにとっては見慣れた物だったし、味も覚えていたようで、ひょいパクッとばかりに喜んで突つき始めた。
それを見ていたピーコが意を決して口の中に入れる。
嘴の中でワームコインをコロコロしていたピーコが驚愕の表情で固まった。
『ピキュピキュ、ピィピキュピィピキュキュピュピィピィピー?』
そのピーコの声にピー助の時が止まった。
毛玉たちも動きを止めるほどのおどろおどろしい声であった。
そして、シュッキン・ポゥの障壁の外側でロック鳥と毛玉を漁夫の利しようとしていた連中の足も止まった。ピーコのその声に……。
食い物の恨みは………、ということで。