115, ダンジョン攻略……、二十階へ ②
永らく、お待たせいたしました!
魔法の使える世界であること自体が不思議世界だとは思うが、現状目の前にある事態が良く分からないことだったのだ。
階段を降りた先に有った物と言えば、いまの俺たちの中で背丈の一番高い者と同じくらいの白くて丸くて太長い物が三個立っている。竜人化したドラ吉が二八〇セチから三〇〇セチ、それと同じくらいのものでどうやら鳥の卵らしいなという状況。
そんなデカい卵って……また、あそこ?
高い山の頂上にある超巨大な鳥の巣に居るという事だ……って俺たちは、いったいどこから降りてきたんだ?
魔王の造るダンジョンは俺のダンジョンとは違うな、いろいろな意味で。
砂漠のど真ん中のドラ湖の次が、俺たちの大陸ではない大陸に存在するダイブツ山の頂上とか有り得ないだろうが、マジで!
「セトラのダンジョンも大概だろう? 初期のダンジョン設定した魔力だけで何階層になっているんだよ?」
魔王シャイナーの言葉ももっともで、いくら俺のポケットに入っていたからと言っても想像を超えた深さになっているのは否めない。
しかも全部が発芽し、育ち始めたお陰で、畑や水田などの食糧自給系のダンジョンや家畜専用ダンジョン、観光やレベル上げなどのダンジョン、従魔専用のダンジョンまで多彩になっている。その数一〇あまり。
さて、見たことあるような山の頂上の周りは雲海……って、ピー助の巣かな? ここ。
肩に振動を感じて振り返ってみると、ピー助くんがガタガタ震えていました。
それは何故かというと……。
先程からピーチクパーチク囀りながら、目の前に居る毛玉の魔物を突いては追い返しているピー助のつがいであるピーコが原因です。
『ピピピピ、ピョーイピョイ、ピョイピピィピ!』
怒り心頭に発すということわざを体現するかのごとく、強烈な一撃を突き降していました。ロック鳥なのに、キツツキのごとく……。
「まったく、あの宿六は連絡もよこさないで、どこほっつき歩いているのかしら?」
そう言いながら毛玉となっている魔物をついばんでいる。
次から次へと現れるそれらは、結構な敏捷性を持ってロック鳥の親子の嘴をかいくぐってこちらに来ようとしていた。
もっともその魔物たちも五メルほどの大きさがあり、それをついばんでいるのだからその鳥の魔物の大きさもしかるべきものだ。翼の下の地毛に白毛の鳥と赤毛の鳥の魔物を従えている時点で相手が誰か分かるものだ。
階段は何か白いモノに囲まれた一角にあった。つまり、ロック鳥の巣の中におれたちは居る。ロック鳥は以前、魔物として出てきたから、この階のヌシではない。
この階のヌシは、あの魔物という事になる。つまりは、あの毛玉か?
『ピー助、あの毛玉は何と言うんだ?』
肩の上で震えていたピー助にコソっと聞きました。本当にコソっと話したはずなのに、その瞬間、鬼が振り向いたのです。
『ピー!ピーピゥ、ピゥイピュイピュウピュイ!』
それはもう、目がギラギラと猫族のごとく燃え盛っていました。
『ピュイピュウピュイ!』
そのピーコの迫力には、俺たち何にも言えませんでした……南無ぅ。
とはいえ、それに動かされた者が居ます。ピー助です。
セーフティエリアの障壁の事を忘れて(考えていなかったかも……)ロック鳥と化して飛び立とうとしたのはいいんですが、障壁に頭からツッコんで激突。
見ていた俺たちはその巨体に潰されて、息も絶え絶えで何がどうなったやら皆目見当つかず、ピー助本鳥はひっくり返ったままという状態でした。
ドラ吉ドラ子の尽力の結果というか、ピー助自体が見た目よりも相当に軽かったようで持ち上げられている中、俺と近しい連中が障壁の中から飛び出てこの二十階のヌシと対面することが出来ていました。
障壁のすぐ外に居るこの毛玉、よくよく見ると狼のようです。
走っている時は格好良いんだよな、鬣みたいで。
止まってしまうと………orz ハッキリ言えば毛玉で格好悪いわ、ダサいわと良いとこない。
『あるじ殿、あの毛玉…げふんげふん…、鬣を持つ狼は獅子狼と呼ばれているでござるよ。見た目の割に俊敏で集団で狩りを行うでござるが、これは相手が悪いでござるなぁ………。ロック鳥の巣に手を出すこと自体は頻繁にあるのでござるが、これだけのロック鳥相手では、全滅必至でござるよ。』
ござる調のコーネツが解説よろしく登場する。
『……、その姿も久し振りだな、コーネツ。元気だったか?』
いつ振りだろう。ここしばらくは俺も忙しかったからな。フラレンチ・トゥストなどの褒美は転送して済ませていたりした。
『久し振りに、あるじ殿の顔が見たかったから………はっ、そそそそんなこと無いでござるよ!』
本音がダダ漏れだよ………orz
ただ、何やら物欲しそうな顔をしているのが気になった。
『何でそんな顔をしている?』
『な、何のことでござるか?』
『どうやら、あの獅子狼とやらに何かあるようだな。』
どうにも、本来は敵対関係のはずなのだが、何かに鼻をスンスンとさせている。
怪しすぎる行動だった。
『コーネツ、悪いようにはしないから訳を話せ。おやつポイントが減るぞ?』
そう、俺がボソッと呟くとコーネツのみならず、土の中で待機している火モグラや、そのおこぼれを狙おうとして待機している連中やらの悲鳴がそこら中に響く。
『後生でござる。あるじ殿!』
………orz どんだけなんだよ?
『あ……あの毛玉もとい、獅子狼のあの毛には、ワームと同じように芯に筋肉が入っているでござるよ。命の危険に瀕した時には、全部切り離すでござる。 我ら、火モグラ族のみならず、ヒト族に至るまでの愛好者が多いでござるよ。そう、カウエルのシッポのように!』
必死に言い訳するコーネツは、ロック鳥を指差す。
『ロック鳥も突つきながら、食べているでござるよ。』
『ええっ!………あら、ほんとだ………』
すわ、卵の危機、命の危機とか思っていたら、お互いに狙うもの狙っていたんですね?
『あるじ様、あいつらを助けてやってください』
ひどく納得していたところに、ジョンからの救済願いが掛かりました。