111, ダンジョンで、……攻略は、十九階へ ④
出来たて、ホヤホヤ。
おかしいところがあったら後で直しておきます。
「また………?」とは魔王の言葉。
『『また、またって何です? あるじ様。』』
こちらはドラ吉ドラ子夫妻。
お前ら……、さっきまでの怯えていた表情から一変しやがりやがって、何だよ、その興味津々の表情は!
「『またって言うのは前世からの腐れ縁だよ………、たぶんな。』」
そう言うと、もうしょうがないから指折りして数え始めることにした。
「ジョンだろ、イカイガだろ、ゲンブにピー助、ピーコにその子供たち、魔王にヒリュキやユージュやルナやみんなだろ。あ、シノブさんに親父もそうか。同期の連中も何人かは居たな。」
「それだけじゃないだろ、あと何を飼っていたことがあるんだ? とっとと白状しやがれぇ。」
絶叫系ですか、ヒリュキ君。
「そ、そんなに飼っていないし………orz」
反論しかけたところで、ルナがボソッと。
「まえに五種とか言ってたよねぇ……。」
と、チクられました。
「おぅ…………。」
やられたとか思いましたとも。
わりと記憶をよく無くすヤツなのに、覚えていやがった………orz
「ちぇっ、確か白ネズミ、……ヒヨコ、カブトムシ、あれ………あと何が居たっけ?」
「トカゲとかいなかったの?」
「あ……。」
「居たのか?」
「……カエルが居た。」
「カエル……、ポロッグみたいなヤツか?」
「んにゃ、小っちゃいヤツ。あ、カエルで思い出した。金魚いたわ。」
「金魚……、鯉じゃないのか?」
「鯉……、なんで?」
「鯉なら竜になるかも知れないだろ!」
「はぁ………、ああ登竜門か? 有り得ないだろう、それ。それこそ、ファンタジーの世界の出来事だろ?」
俺はヒリュキの言葉に呆れたが。ヒリュキも反論してくる。
「この世界には魔法が満ちている。前世で魔法を使っていたお前のそばに居たんだ。あり得ないことでも無いだろうさ。」
とか、言われて妙に納得してしまったのだが、それは鯉なら可能かも知れないが、金魚ではそれこそ無理だろう。どうやって滝を登るんだ?
「しかも、竜種は水竜がいたから初めてじゃ無いとは言え、今度は竜族の長老……って、どうなってんの?」
ヒリュキとルナの言葉ももっともだけど、そんなの俺の方が知りたいよ………orz
「だいたいにおいてだなー、その長老ってやつが無茶苦茶言うっていうのはなんなんだ?」
ドラ吉とドラ子を睨みながら問い掛ける。
『『そ、それはー………。』』
「『それは?』」
『『そのう、何というか、でして……。』』
「『早く言わないか? おやつポイント減らすぞ?』」
そう言う俺の脅しにドラ吉が重い口を開く。
『『ぎゃー、待って待ってー。』』
おやつポイントと言ったら涙目になっていました。
『ロケットハナ・ビーの蜂蜜を樽で、最低十樽を献上するようにということと、ドラ吉さぁの羽を自分にも寄越せということ、あとは嫁さん欲しいと。』
というドラ吉とドラ子との会話で概要は掴めたが、たしかにそりゃ無理だね。
ロケットハナ・ビーの蜂蜜は、パレットリアでの特産品に指定されて俺ですら、最近は近寄れないところで管理されている。
おおっと、ムサシ丸からの献上品は別だ。
竜の長老が降り立ってきたことにも気付かずに喧々囂々と言い争っていました。
「『おかしいな、威圧を放っておいたはずなのになんで、こんなにリラックスしているんだ? この者たちは………?』だとさ。」
俺も、その言葉を聞いて、ようやく気付きました。
白銀のやや透明度のある鱗に地肌の朱金が、見事に映えている風の竜の長老が顕現していました。ドラ湖に居たドラ子の親戚たちは既に頭を垂れているのに対して、俺たちは踊る会議を続けていたんですから………。
それは、不思議に思われても仕方が無いな、うん。しかし、これは決まりかな………orz
「『魔王よ、我が願いを受けてくれてありがたく思う。そして、ドラ吉、ドラ子よ、返答はいかに?』」
「『『わたしたちのあるじ様でなければ、その返答はできませぬ。』』」
長老に気付いたが、それまでの会話の流れに乗ってしまっていたために普通に受け答えをしていた。
「『ほほぅ、お前たちのあるじか。よほどの者なのだろうな? む……まさかこやつか?』」
長老の目がゆっくりと俺に向けられる。
「『ああ、俺がドラ吉とドラ子のあるじだ。………しかし、本当に竜になっているとはな、ビックリだよ、銀。……前世以来で久し振りだな。』」
俺は、その姿を見るなり納得した。こんな綺麗でカッコ良くて、不思議な鱗を持つ魔物に驚きが隠せなかった。
そして、俺の言葉にヒリュキたちの驚きが重なる。
「『前世ぶりでって事は、飼っていたヤツか? どいつの事だ? まさか………金魚か?』」
ヒリュキの言葉に俺は頷く。
「『そう、金魚の銀だよ。』」