108, ダンジョンで、……攻略は、十九階へ ①
結果として、風盾も風洞も無事にその機能を果たし、この階のボス、すなわち世界樹の若さまのナンノキの母様に会えた。
クァットロさん推薦のクラブルォーも大活躍で、泡を吹き出すくらいには、大忙しであった。……ああ蟹だけにね。
しかし、光魔法の展開よりも蟹の方が早く毒を吸収していくとは思わなかったよなぁ。
生きているコス○クリーナーが一匹で、十八階のナンノキの母様のいる池の周辺のみならず、この階の毒をどんどん吸い込み、圧縮して、自分の武器にするんだから凄いわ。
ナンノキの母様も唖然としていました。
まさか自分以外に、この猛毒というのもおこがましいほどの馬鹿げた濃度の毒を取り込んでしまうモノが居るとは思っていなかったようです。清々しいほどにあっさりとナンノキの糾弾を止め、クラブルォーをスカウトしていました。
『そ、そちらの蟹さんは……、わたしの行っている毒の浄化に力を貸しては貰えぬだろうか。わたしと同じだけの毒の浄化能力を持つ者がいるとは思っても居なかったから。』
その母様の言葉を聞いたクァットロが、ハァ……と呻く。
『どうした? クァットロ。』
『あぁ、あるじ殿。世界樹の母上殿は誤解しておられる。クラブルォーは浄化している訳ではなく溜めているだけなのだ、……襲い来る敵に対して、種族や仲間を守り抜くための武器として、力無き者の最後の一刺しに備えて。敵対するモノたちが居ないと、その必要が無くなる。最悪、毒を吸わなくなるぞ、それでもいいのだろうか………。』
『……ということなので、敵対種族と一族もろとも繁殖させるならいいがということだ。』
この答えには母様もビックリしたようで木の体で仰け反っておりました。
『なんと言うことでしょう!』
どこぞのリフォーム番組のMCか、アンタ。
ナンノキ自身は、俺の手の中で思念を母様に送っていた。
『わたしがあるじ様についていき、世界の毒素の元を見聞するためにも彼らには頑張って貰いたいものだが、あの池?なら余裕はあるのではないですか?』
なぜなら、母様の実家、つまりは世界樹の根っこに湖と見間違うほどに大きな池があり、この世界の毒素が満ちているそうな……、そこを浄化して欲しいのだと話してましたから相当に凄いところなんでしょうな。
なんと言っても、この世界の毒の濃さはハンパないほどの濃さで、しかもナンノキがまだ若木という事もあり、代わりのモノを探すためにここに居たそうな……とは母様の弁。
そのために魔王様に許可を得て、この階のボスを務めていたと言うことでした。
「魔王、こんな重要なこと忘れてんなよ~。」
「ははは、済まん済まん。」
「『という訳で、今回の功労者はクァットロだな。飯とデザートの希望は何かあるか?』」
飯とデザートという言葉が出て喜ぶ者の中に、愕然と言う言葉が似合う者たちが居りました。
コヨミ、リウス、リメラ、アトリの四人。
『そうですな~、我ら海のものになじみ深い味の物がいいですな~。うむ、昆布だしの熱くないうどんがいいですな。熱くすれば他の者にも食せるでしょうし、うむ。それで。デザートはクレープを丸めないままの一枚物で。アレなら、クラブルォーや三連ヒトデにも好評を博せそうですし、あるじ殿たちにも工夫のしがいがありそうですからな。』
そう言うクァットロの言葉に、『やられた!』そう思いましたよ。
俺のこ、……恋…人たちに対する気遣いがハンパないな。
「ああ、了解した。褒美を用意しよう。………ありがとうな。」
クァットロのリクエスト、冷やしうどんとクレープの薄焼きせんべいがみんなに振る舞われた。若干、アレンジされて饗された。
……もちろん、あの四人にも、ね。
「美味、美味、美味し!」
しかし、クァットロさんの食べ方は豪快でしたよ。
大盛りの冷やしうどんに自ら飛び込んで、食事開始。冷やしうどんを食っているのか、出汁として自分が入ったのか分からないくらい。
牽制のために飛び交っていた三連ヒトデたちは、うどん相手に躍り食いをしていました。
さらには………。
「「「「良かったよぅ、食べられて~。クァットロさんありがとうぅぅぅ」」」」
そう言うコヨミたちの言葉にルナが気付いた。
「アンタ、何やってんの? 可愛い娘たちをイジめちゃ駄目でしょうが!」
パッカーンという音がするくらいには、俺の頭が全力でぶっ叩かれました。
まあ、そんなこんなで十八階の攻略は終わりました。
次は、十九階。どんなところかな?