102, ダンジョンで、……攻略は、十七階へ ④
「ぶっ………………、物理的にってコレを?」
そう呻いたのはユージュ。
何を驚く事がある。お前が従えている風でも場合によっては可能なレベルの事しか話していないぞ?
だが、選抜しようではないか。
「とりあえず、風魔法の得意なヤツら全員来てくれ。風の民の五人。ツォーリゥ・ヤギ、ヅン・ツタニ、ヤースォ・トウタ、カォル・ダナガ、カァル・ダサァ、ああ、ルナは同調の補佐をお願い。あとはユージュとイクヨ。それぞれの魔法の広さが違うから同調してくれれば良いかな。それと、ヒリュキと魔王は魔力タンクとしてよろしく。リメラ、リウス、パットは音でこの足元からこの魔物の全長と高さとか測ってくれ。」
ひとまずのメンバーを決め役割を伝える。
「えー、俺たちもかぁ……、ああ、イヤ分かった。」
魔王が顔を盛大に顰めていたが、俺の顔を見るなりしぶしぶ頷いていた。
「というか、魔王よ。お前の決めた設定だろうが、こんな無理ゲーどうするんだよ。だいたいが、こんな設定決めたやつが参加しないで済むと思っとんのか、コラ!」
なんか再設定した時には、攻略メンバーの顔でも見えていたのだろうかと言いたいほどには無理な設定になっている。
それに加えて、名指しで呼び寄せたメンバーが「俺(わたし)たちもやるのか?」という顔をしていたから、ここにいる全員に釘を刺しておく。
「あー、不参加のヤツは言ってくれ。無理にとは言わない。だが、お前らの「工事屋」としてポイントの方にマイナス加算されるだけだからな。その分は頑張ってくれ。一年前の事だし、途中に戦争とかもあったから忘れているかも知れないけどな。各国の王たちも「工事屋」としての集団だからこそ免じているところもあるってこと肝に銘じていてくれよな。」
自分たちの為した魔法がどれだけのものを引き起こしていたのか、再確認するべきだろう……。俺だって、ミルクが濃すぎて飲めないという事態を経験しているのだから。
「そ、それは脅しか……。イジメじゃないのかよ……。」
そう感じているのなら、そうかも知れないけど……。あの時に俺が感じていた不信感よりかは全然底の浅いものだろうよ。やれば出来るって分かっているのにしないんだろう?
俺が感じていた重圧から比べれば何ほどのものかよ!
「まぁ、そう思っていてもいいよ? でもそれは事実だし、「工事屋」としての行動にメリットが無くなればパレットリア自体が危ういからな。タク・トゥルだって何が一番かくらいは考えているはずだ。それに俺が作るものも、人数少ない方が作りやすいからな。」
そう、爆弾を放つ。
「つ、作る? 何を?」
その言葉に不安を持った人たちが口にする。
「ゴーレムハウスの菜園でウコンが取れた。パレットリアのダンジョンで試験栽培していた水田から収穫物が上がってきた。……といえば何か分かるだろう?」
そう言って想像力を膨らまして貰う。女子諸君はその組み合わせにすぐに気がついたようだ。ムズムズしている。
「まままままま、まさか…カレー……?」
そう自信なさげにジュウンがポツリと零した言葉は、静かに伝播していく。
「うむ!」
重々しく頷く。
「「「「「「「カレーライス? マジか!」」」」」」」
大絶叫でした。
訳の分からない顔をしているコヨミとリウス、リメラやウェーキ、魔物たちだけが、ぽかんとしていました。彼女たちにとっては、初めて……の経験になるでしょうから。
「食事が出来上がるまでに、やらなければならないことがありますね。少なくとも十八階のセーフティエリアまでは到達しなければなりません。なに、みんなの力が合わさればすぐですよ。」
それまでの無気力な顔が一変していました。
「老師も、お人柄が悪いですな。サゲてアゲる、ですか?」
シュッキンが俺の横に来る。彼にも重要な役割がある。
というか、この手の作戦遂行には、一人として余計な行動を取ろうとするものはいらないが、だからといって人手が足りないままでは対処しきれないものなのだ。
「シュッキン、障壁を。みんなを頼む。」
「はい、老師。」
「では、始めるとしようか?」