97, ダンジョンで、………新規攻略、十四から
十四階のセーフティエリアの障壁に到達した時にセーフティエリアごと大揺れに揺れました。ヒト族の女性陣の悲鳴たるや、とんでもないほどの驚きに彩られていました。
というか従魔たちの面々も全員が警戒態勢に入っていました。
なぜなら、茶色の目立たない羽毛のロック鳥がセーフティエリアの障壁に乗っかって、こちらの内部をガン見していたからです。睥睨して(重箱の隅を突くかのような視線で睨んで)いるといっても遜色の無いその眼光は、心までをも貫くかのような激しいものでした。
その視線を受けて化石と化した者がいます。
小型化した上に羽の色をインコ当時のものに変えた、ロック鳥のピー助が俺の肩の上でガタガタと震え始めていました。
ただ、ピー助が発している魔力の波動はロック鳥のものですから、目の前にいるロック鳥には一目瞭然で………。
『ぴぴぴっ、ぴぴっぴぴっぴぴー! ぴーぴぃ、ぴぴぴぃぴぴぴぴぃぴぴっ!』
火を吐きそうな勢いでまくし立てられる言葉に、ピー助は小さくなった体を小さくしながら、ぼそっと告げた。
『ピィピピピピ、ピピピピピピピピィ、ピピピピピィピピピピピィピィピィー……』
ああ、よくワームコインをねだると思ったら雛のエサだったのか。
初めて、アレをあげた時は、半信半疑で咥えてからクチバシの中に入れていたっけ。
堅いというのもあったが喉に引っかからないように、しばらくクチバシの中に入れておくようにと指示はした。クチバシの中でコロコロ転がして、遊んでいたピー助が、くわっと目を見開いて硬直したかと思うと、笑み崩れていた。口の中で復活したワームのエキスやその栄養たっぷりな身に驚いていたのだ。
それからは、ワームコインを水で戻す方法を教えた。
水で戻した後に、ひなに与えていたのか……やるな。
『子供たちは障壁で守られているけど、アタスも入られないんだか?』
その言葉にピー助、項垂れておりました。
『そ、それは済まない。あるじ様に送って貰っていたから、オラ気にしてなかった………』
『その…あるじ様って、何?』
『前にこの姿で生きていた時のあるじ様で今のあるじ様。従魔になったんだ、オラ。済まねぇ、相談もしないで。』
という会話をしているインコ姿のロック鳥のピー助とロック鳥のままのピー助の奥さん。ロック鳥のままの奥さんがこちらに顔を向けてくる。
『ぴぃーーぴょっぴょ?』
羽毛を逆立てながら、こちらにその姿を見せつけるかのように翼を広げてみせるロック鳥のメス。………あれ?
『ピー助、また彼女と番いになったんだな。』
俺も驚いた。だが、ピー助も驚いた。ロック鳥のメスも驚いた。
『ああああああああ、あるじ様、いいいいい今、何を言っただか?』
ピー助の言葉に驚きが隠されていた。お前も訛ってンぞ。
『はい………? またって……えーー、マジ………うそでしょう』
ロック鳥のメスがショックを盛大に受けていました。
『ほんとだよ、なあピーコ。久し振りだな。』
本当に懐かしい名前で呼ぶ。
『ぴょ、ぴょう、ぴぃぴょぴょう……、ぴぃぃ ぴょぴょうぴぃ、 ぴぃぴぴぃぴぴぴぴぃ!』
やっぱりピーコだったか、羽を広げた時の羽の下の羽毛が青いんだもの。ピー助と一緒になっている時点で怪しいとは思っていたよ。こいつらの子供もシロとアカネで決まりだろうなぁ………。
今、目の前に水でふやかしたワームコインを、がっついているロック鳥の夫婦がいます。
俺の目には、どう見てもセキセイインコの夫婦なのですが。
ピー助はこのまま俺と同行し、ピーコは雛が巣立ったら付いてくるという事になりました。
これで大陸間の移動のための足が出来たな。
さすがに大陸を渡る海の途中に足場は無いだろうからな。
ゴーレムを利用した籠を作れば背中にくっついて飛ぶ事も可能になるだろうからな。
「あと、何を飼っていた事があるんだい、君は………」と、ヒリュキには呆れられています。
ですが、あと五種くらいのはずです。全部出てくるとか無いですよ。
逆に全部出て来たら俺の方が怖いもの。
そう思っていたのですが、のちの大陸間の交通網の一角を担う事になった最初の出来事になったのです。
次は十五階、剣虎の階、何が居るとかは分かりませんが、穏やかに過ごせればいいなぁ。
累計で七万三千アクセスを越えているとか、読んで戴いている方のアクセスが
作者の励みになっています。最初の頃と比べると「思えば遠くに来たもんだ」って感じです。これからもよろしくお願いします。