83, 大暴走《スタンピード》 ⑦
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魔法士の長を呼んできたはずなのに、相手の足元に額ずいてしまった。
俺もびっくりしたのだが、もっとびっくりしたのは相手の魔法士たち。
「お、長………」
そう言ったまま絶句している。
というか、いきなり意味不明なことを言われて額ずかれても、こちらの方こそ訳が分かりませんよ。だいたい何なんだよ、その「源の白」って………。って思って俺のステータスを確認したら、風が消えてそこに………「源の白」という表記がありました………orz
風の上位って事になるんでしょうか?
そんなことをつらつら考えながら事態が動くことを希望していましたら、とんでもない人物が登場してきました。
「クラツさま、攻め込むための軍議をなさっているのでは無くて……。」
そこへ割り込んだのは、現国王ア・クラツの妻ア・リエンデであった。
自慢の金の髪を高く結い上げているのは賞賛に値するが、その幅広の顔立ちは髪を下ろした方が小顔に見えるんじゃ無いですかねぇ。
そもそもドレスと言っていいのかどうか? デザインを考えたヤツの頭を心配するぜ。
提灯ブルマの亜種と言っていいんじゃないの? という感じのドレスを着て大股で歩いていた。
気品が欠片も感じられねー、何なんでしょうか、こいつは。
彼女は軍議の間に出るのは、初めてでは無いようで俺の周囲の魔法士たちが辟易した顔をしていた事で、かなりの問題児なのだろう事に気が付いた。となれば、アレに目を付ける事になるのは必至。下手すれば自分のモノにしようと画策するのでは?
と、思う間もなく、彼女は貴族の奥方たちが何やら食べているものに興味を示したようで、自分も食したいと思ったらしく、何やら周りに控えている衛士たちに命令を出している。
「そこのあなた、何を食していらっしゃるのかしら? ここはあたくしの城ですのよ。勝手にあたくしの物を食さないで頂戴。」
「アレを私の元に運びなさい」だの「あの場所へ、私は降りる気は無い」だのと、ぎゃんぎゃんと喚いていた。
お前さんの声の方がよほど、この場に相応しくねーよ。
それと、その体に染みついている匂いは香水の掛け過ぎだよ。臭くってしょうがねー。
そう気付いた時には、風を使って遮断していました。
ひとまず、思い通りにさせないために城に対して食いついている根っこを強化、更には卓に食いついているあの箱の真下の根っこも強化しました。
卓の足の中に城の床から延ばした鉄の杭を密かに差し込み、固定しました。
「動きません」「何でこの卓、こうなっているんだ?」
衛士たちの戸惑いの声が上がる中、しびれを切らしたのが件の王妃?さま、ダカダカと駆け寄ったかと思うと、持ち上げようと必死の形相につい吹き出してしまいました。
「ぷぷっ……と……コホン。」
睨んできましたから、つい、目を逸らしました。
「そんなことをなさらなくても三〇〇鈴をお入れになれば……」
そう貴族の奥様方が囁いているのをどうやら耳にしたようですが……。
「あたくしの城の物に散財するつもりは有りません。」
とか、言っていたが全く動こうとしないことに業を煮やしたようで、今更のようにスリットを探しております。あ、見つけたか。
欲の皮が突っ張っているようで、三〇〇鈴を入れればいいところに三、〇〇〇鈴入れました。一応、一〇セク数えて扉を開きましたが有ったのは三、〇〇〇鈴でした。
個数が多く欲しかったのか、それとも豪華な物をと、思ったのか分かりませんが、いずれにしてもブツは出て来ません。
そりゃそうだわ、設定は急には変えられません。
アレの原理は三〇〇鈴の硬貨が落ちて箱の底の凹みにハマり魔法陣が開く設計。変なところに落ちた物は『ゴーレム』の腕が入れている。三、〇〇〇鈴では硬貨の大きさや重さが違うために発動すらしません。
「ああ、美味しかったですぅ。でもこの匙と器はどうしたらいいのかしら……。」
貴族の奥方さまの一人が疑問を投げかける。
そういえば、使い方を話していなかったっけ。
アレを本格的に稼働しているところでは、匙と器を一緒にして天井板を上に上げて入れて貰っていたのである。匙は無属性魔法で洗浄再製し、器はケイ石に分解されていた。そして、再度形成。新しい匙と器が出来るわけ。使い回しているわけじゃない。
「ああ、その器と匙はその箱の上から入れておいてください。瞬時に分解されますから。」
障壁を張った中でゆっくりとした時間を過ごしていたので、説明することが出来た。
「それと、どっかのご婦人さま、三〇〇鈴でないと使えませんし、そろそろ仕舞ってしまいますよ?」
そう告げた俺の言葉に目を見張り、周りの奥方さまの頷きもあって、ようやく三〇〇鈴を入れたようである。
大人しく、一〇セク数えて扉を開けた時の顔は崩れるような微笑み? であった。
ハッキリ言おう、見たくなかった………orz
「おおぅ、プルプルしておる、………つるつると入っていぐぅ。……何という美味さよ?」
顔と話す言葉が一致しない見事な食レポでした。
「さて、それはもういいですか? 皆さんに、一つずつは当たりましたね。その箱をタクラムに販売しているのは、僕ですから……、こういうことも可能なんです。」
パチンと指を鳴らした。
その箱の変化が始まり、皆の視線がそちらに向くなか、呟くは『転移』。
いままで冷たい物を出していた三〇セチ角の箱が四〇セチ角の箱へと大きくなり、外装の色がいままでの茶色から白くなった。
「今度は五〇〇鈴ですよ。では、入れますね。」
俺が、その箱の前でデモンストレーションとして、五〇〇鈴をスリットに入れていく。そして、一〇セク待って取り出したのは、程よい冷たさの白い半球体、大きさはプリンほどで一〇セチくらいの物。高さは五セチと少し低めだ。
ミルクアイスと名付けた。牛の乳を凍らしながら作り上げた物。
「うん、程よい甘さと冷たさが気持ちいいですねぇ。」
出て来たものを食べながら、注意を一つ。
「この器もさっきのと同じにしてくださいね?」
目の前の障壁に俺が居ないことに気付いた魔法士たちや兵士たちが、こちらに向かってきているのを一瞥してから、また【転移】と呟いた。
俺が無事に障壁内に戻ると、奥方さまたちは恐る恐る五〇〇鈴を入れては、ミルクアイスを出して一匙一匙掬っては食べてと繰り返し始めた。
ここはパレットリアよりも暑くはないが、それでもエアコンもないために、少しでも涼を取ることが大事な地域であった。
「ああ………」
貴族の奥方さまに混じって王妃のおばちゃんまでが、その冷たさに感動しておりました。
その艶っぽい溜め息は、王を始め貴族の旦那たちや魔法士、兵士たちを凍らせることに成功しました
すいませんでした。
朝五時起きの仕事だったため、書き上げられずに就寝。
さすがに連チャンは堪えます。さて、続きを。