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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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督戦と想定外

想定外の五連投、作者の暴走止まらず。

一体、なぜ……。作者が知りたいです。

「アーク最高司教の言葉に乗って、開戦を決議してしまったか、我が王は……。」

 そう呟いて、状況を憂いているのは、第一等将軍のジャーク。七人いる将軍という地位の高い者たちの中で第一等に叙される名誉は、並大抵の才能と行動力では得られるものでは無い。

 それなりに、冷酷で壊れた性格(モノ)を持っているものなのだ。


「少しでも城内の人間を戦場には誰も出させない方向で、進めていこう。」


 彼が取った作戦は数あるが、ひとまずは国内清掃&お情け作戦。ヒト族亜人族で卑民系の住むスラムを崩壊させた。


 神の御使(みつか)いであるアレディア救済教議会の最高司教の住まいし御所(ごしょ)に、弱き者、浅ましき者の存在を許さなかったのである。












 大陸の東端に位置するアレディア教主国から脱出せざるを得なかった者たちは、過酷な旅を()いられていた。


 そして、やっとの思いで着いた国が入国を拒否し、その中に住む彼らの(ゆかり)の者ですら、彼らとの面会を拒絶していた。


 追い立てられるように、スラムや貧村から追い出されたヒト族は過去の己の所業を振り返ることなく、ただ、単に救いを求めていた。


 ()()なく、流されて。

 そして、求めるのは、ただひたすらに己の安寧だけ。


 その安寧も得られるのかどうか、怪しくなっていた。

 保護を求めた国は、彼らを拒絶していた。


 入国するのなら、「奴隷」になれと言ってきたのだ。

 しかも、目の前のその国の中では穏やかな音楽が流れ、軽やかな話し声も聞こえるほどのもの。


 そして、彼らの中に潜みし破壊工作者にとっても、それは青天の霹靂(へきれき)そのものだった。


 内部からの破壊工作は戦いの趨勢を決定づける、重要な一手と位置づけられていた。

 その者たちにとってもこの国の対応は、抜き差しならぬ行動を考えさせていた。


 周りの避難民が全て「奴隷」を受け入れてしまえば、彼らに二度目の作戦が不可能となることが明白だった。そして、彼らが受け入れなければ、次の避難先に付いて行かなければならず、これまた作戦としては失敗する。


「避難民として、入国し活動せよ。」という作戦命令は、この時点で失敗を確実にしていた。しかも、後ろでは魔物が地面を掘り返し、地面が脆くなっているために引き返すことも出来ない。


 後方に居る者との【通話】も出来ないほどの距離で魔物たち(・・)が国境を封鎖していた。

 上空にいるはずの鳥たちも、大慌てで逃げるほどに場を歪ませる存在のロック鳥。

 地面の下から、たまに躍り上がる砂漠ワームの大群。その境界よりも内側で睨みを利かす火トカゲの大群。


 そして、何より避難民が城壁に肉薄(にくはく)できない最大の理由が門前に存在していた。


 雪狼、森林狼、夢幻狼といった魔物に加え、剣虎が狛犬(こまいぬ)というアレディア救済教議会の建物脇にいる神聖な犬神様の像のごとく、静かに睨みを利かせていたからだ。


 私たちは、何にケンカを売ったというのだろうか……?

 精兵と謳われた私にも、理解の出来ない事態が起こっているのだ。


 それこそ、あとは神のみぞ知る、ということか。


 やがて、避難民の一部が「奴隷」となることを受け入れたようだ。ヒト族の列が粛々と、建物へと消え始めた。しかし、中での説明に憤慨して、外に出てきた者も最初の頃は多くいた。





















 一度憤慨して出てきた者もいたが、外に出た途端にドラゴンを再度目撃し、意地が砕けたか、悄然としてまた城壁へと消えていき、戻ってこなかった。


「残るは我らだけ………か、覚悟を決めるとしよう。……行くぞ。」


 城壁外において、わずかに残っていた工作兵である彼らも城壁内で上がる歓声に、心を打ち砕かれてしまっていたのだ。


 それは多分、もう遙かな過去になってしまった、あの御布令の時からかも知れん。

 そう自嘲しながら………。城壁へと歩む仲間たち。


「願わくば、我らにも魂の安寧を……。」

 先に進んだ仲間で、剣や毒などの危険物は、城壁に到る前に狼たちに止められ、隔離され、そして、武装解除を受けていた。


 その仲間の目の前で、その武器の類いは消え去った。

 自分の体にも入っているはずの呪物さえも……だ。


 その時の彼の様子は私も目を疑った。

 なぜなら彼の目は見開き、そのまま地面に跪き、叩頭したのだ。


 やがて、城壁外の避難民は、全て「奴隷」となった。


 既に避難民という者たちはどこにもいない。


 私は自分の体が軽くなったことに驚き、そのまま体が、自分の意思を離れ、叩頭するのを感じた。

 私が「奴隷」という名の自由民になった瞬間であった。


 さあ、私は私の自由を奪いに来る者たちと戦おう!

 我らが、セトラ王のために!

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