78, 大暴走《スタンピード》 ②
初の連投?
「セトラ、アレはちょっと無いんじゃないの?」
そう、俺を問い詰めるルナに賛同する顔がちらほら。
だが。
「いや、セトラのやり方が正しいよ、あの難民の中に何人もが敵の尖兵となっている人たちが居るようだ。」
そうヒリュキからの援護射撃が入ると、高レベルのスキル兎耳を持つ、二人の王女様も頷く。
「「その通りですわ。」」
「あれ? 姫さんたち、ここに居たら危ないから、魔法学院か、実家に帰っていた方が良いんでないの?」
そう話した途端に悲しそうになる顔と後頭部に激しい衝撃が……。
「ぐおぉぅ………、何をするんだ!」
ど突かれた頭を涙目で押さえながら振り返ると、ルナがグーを突き出していました。
どこか疲れた感じで、額を押さえていた。
「アンタは相変わらずというか、死んでも鈍いのは治らなかったようね?」
「な……、なにおぅ、お前だって、酒癖治っとらんわぃ。いい加減、酒は止めれ! このあいだだって「セトラ!」……う…、すまん。」
ルナに痛いところを突かれて、つい反論しちまった。ヒリュキの声が無かったらと思うと………、反省しなければって、アレ?何でこんなことに……?
「はい、王もルナももう良いですかな。いまはともかく周囲の国々に、情報をお回ししましょう。アレディア教主国の手はすでに、各国に回っておりましょうが。最悪の事態が起こるのを防ぎましょう。セトラ王、各国に渡っているゴーレムハウスに例の案件は施工済みですね?」
何かを確認するかのような話し方に「工事屋」を含めた同期のみんなが?マークを頭の上に浮かべていた。
「ど、どういう事なの?」
ジュウンが問い掛け、みんなが同意の顔で頷く。
「ああ、ゴーレムハウスってさ、大きいだろう?普通の建物は動かせないが、アレは秘密の言葉をある場所で言えば移動のために動かせるんだよ。もっとも、一度動かしてしまえば、次に移動できるようになるまで長期間何も出来ないんだけど、ね。まぁ、裏技はあるけど……。」
そう言った途端に、顔色を無くす人たち。いや、目は爛々と輝いている。
「○クロスか、巨大ロボ? こ、これはもはや男のロマンだぁ!」
「○イコガ○ダムか……、まさか、浮くとか無いよな?」
俄然、男どもが元気になりましたが、一体、何を考えているのでしょうか?
「王よ、○クロスとか、巨大ろぼ? 何のことを言っているのですか? それのどこが男のロマンとやらで?」
タク・トゥルの疑問も当たり前のことで、「工事屋」のみんなから出てくる言葉の奔流は、いまのこの事態の中では、ある意味非常識だった。
「済まない、タク・トゥル。アレは前の世界での言葉だ、いまこの事態の時には関係の無いものだよ。さぁ、城壁内の者たちにも御布令を出そう。戦いが始まることと、外に避難民が来ていることの二つ。もし、外に近親者が居るというのなら、受け入れて貰えるのなら共にこの地から立ち去ってもらうように。ただ、近親者を中に入れたいということだけは、出来ないということを強く言ってくれ。」
俺の考えを理解したようで、さすがタク・トゥル、苦笑いをしている。
「王がそう仰っていると言うことでよろしいのですか?」
タク・トゥルが問い掛けてくるのに俺は頷く。
「では、直ちに。」
彼の私兵がこの国のほとんどの兵だ。
タク・トゥルの認めたものを持って、拡声の魔法の掛かっている部屋へと急ぐ。
そこではウグイス嬢が、いつもの放送を行っている。
この国ではいろんな人材が流れて来ている、興行師や音楽家などもその一部。
それを生かさない手は無く、拡声の魔法で穏やかに流しているのだ。
『緊急放送です。皆さま、よくお聞きください……』という言葉のあとに先程の文章が流れた。もちろん、俺の言葉として。
城壁内に居る彼らの言葉は、風貝で録られ送られてくる。
特に、近親者が居るというくだりでは、ざわめきが大きくなった。共に立ち去れという言葉の時も。
そして、ただ、近親者を受け入れられない旨のところでは、「はは、王様も逃げ道を作ってくれているんだ」と理解してた者も多く居るようだ。
この国の市民権はまだ制定されていない。この国の成り立ちや、元々の人材が何だったかを考慮して、制定できないのだ。
最初にこの国に残るといった者たちは、「奴隷」だったのだから。
この国への定住権は、ただ一つ。
「奴隷」になること。この国に害となることを行わないことをただ一つの制約として、受け入れること。ただ、それだけ。