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(9) 聖暦一五四三年一月 エーケダールの戦い<2>

 プレートメールに身を纏ったブローム公爵家の重装騎兵団が、パーヴィリア軍中央先陣を構成する北部諸侯目がけて突進していく。

 馬がやられないよう、馬にも鎖帷子をかけて、魔術で筋力強化を施されている。

 アズヴァーラの魔術士団が防御魔術をかけ、その上に竜の守護女神シャルリーゼ仕える天使達が理力で魔術防御をかけている。

 それゆえに、重装騎兵団全体が白く輝いている。

 魔力と理力の重層構造によって。

 軍団レベルでいえば、突進力、防御力をこれだけの高レベルで兼ね備えた存在はそうそうないだろう。


 司令官であるシードル=ブロームは先陣中団に位置している。

 パーヴィリア軍から攻撃魔術が降り注ぐだろう。

 混戦になって、攻撃魔術が使えなくなるまで、最先陣にはたてなかった。

 狙い撃ちにされるかもしれないからだ。


 言葉を返せば、部下の誰かが死ぬということになる。

 死せし部下の遺族を厚く遇することで報いるしかないのだ。

 もし、自分が死しても、リュドミラがいればやり遂げてくれるだろう。


 リュドミラの資質は高いが、国を背負えるものではない。

 シードルは冷徹にそうみきっていた。

 しかし、それを補うだけの真心があるとも考えている。

 家を継いで守るだけの器量はあるだろう。

 経験不足を補うための老臣も残しておいた。


 敗戦したら、ブローム公爵家がそのまま存続するのは難しいだろう。

 しかし、自分も父祖も民を虐げてきたことはない。

 もし、民が我が家を慕ってくれていれば、リュドミラの助けとなる。

 民が支えてくれれば、淳良なリュドミラは大きく道を誤ることはないだろう。


 もはや、後顧の憂いはない。

 後はパーヴィリア国王ヨナーシュの首をとるか、己の身が斃れるかだ。

 前を見据えて、老将シードルは馬を走らせる。

 ヨナーシュの首目指して。


 突進を続ける重装騎兵団は、パーヴィリア軍魔術士団と弓兵隊の間合いに近づく。

 敵味方が入り混じる混戦状態に入る前に、一斉魔術攻撃をかけることで、敵軍団の防御を少しでも削り落とす。

 これは、ハイグラシアにおける戦いの常道であった。


 ◇  ◇


 パーヴィリア軍第二魔術士団にて、投影魔術でブローム公爵軍重装騎兵団の突撃が映し出されていた。


「壮観だな。敵でなければよかったのだが」

 第二魔術士団長であるナターリエ=バレシュ=ディーチェの表情は、感嘆で彩られていた。


「敵が間もなく攻撃魔術の射程内に入ります」

 側近のレオニールが冷静に指摘する。


「そうだな。打ち合わせどおり、攻撃は火属性五割、雷属性五割にする」

 アズヴァーラ軍の大半は氷竜人であり、火による攻撃がもっとも有効であった。

 雷属性を混ぜてあるのは、耐火防御に特化している可能性があるからだ。


「かしこまりました」

「この突撃だと……」

 味方に多くの死者が出るだろうな、とナターリエは続けようとして、口にするのは避けた。


 今の自分は第二魔術士団長だ。

 士気を下げるような言動を為すべきではなかった。

 必要な言葉は他にある。


 重装騎兵団の先頭が攻撃魔術の射程距離に入った。


「まだだ、逸るなよ」

「統制に問題ありません」

 タイミングを計るナターリエに対して、レオニールは粛々とこたえる。


 投影魔術のスクリーンを、ナターリエはにらみ続ける。


「今だ! 魔術全力一斉射撃!!」

 ナターリエは大声で指示を出す。


「通達、一斉射撃!!」

 レオニールが通信魔術担当の魔術士に指示を広める。

 通信魔術を用いて、大隊長、中隊長にナターリエの命令が伝えられ、攻撃魔術の雨が重装騎兵団に降り注ぐ。

 ほぼ同時に第一魔術士団からも、一斉攻撃が放たれていた。


 空を覆い尽くすような火炎と雷撃が、重装騎兵団に直撃していく。

 神々や歴史に名を残すような魔術師が放ったような魔術ではない。

 しかし、総員三千人による攻撃魔術だ。

 その圧倒的な物量が、大魔術師が放つ魔術よりも大きな威力をもたらす。


 重装騎兵団の上空は炎と雷で包まれたといっても、過言ではないかもしれない。

 だが、未だに倒れる者はない。

 重装騎兵団は走り続けているのだ。


 三千人の攻撃魔術が強大ならば、これまた二千人レベルの防御魔術、天使達の理力による防御も極めて強い。

 要となる重装騎兵団の防御が最優先にされていたからだ。

 防御魔術や理力が火炎や雷撃を消失していく。

 しかし、その度に防御魔術も理力による防御も削れていき、重装騎兵団がまとう白い輝きは薄れていくのだ。


「第一魔術士団の攻撃もほぼ同時に始まりました」

 レオニールが報告する。


「混戦になるまで、攻撃し続けよ。ここでどれだけ削れるかは大きいぞ」

「はっ」

「いうまでもないが、魔力が不足した者はドリンクをのんでおけ。戦況の次第によっては、さらなる働きが必要になる」

「ナターリエ様率いるこの第二魔術士団では、それくらいの思慮がない者はつとまりません」

 レオニールは微かに笑った。


「士団長となってこれほど大きな戦いに臨むのは初めてだ。当たり前のことでも訓示しておきたくなるのだよ」

 ナターリエは苦笑を返す。


「かしこまりました。無様な振る舞いをしないよう、周知徹底しておきます」

 レオニールは笑いをおさめ、丁重に一礼した。


 ◇  ◇


(さすがはパーヴィリア軍の魔術士団よ)

 シードル=ブロームは想像以上の魔術攻撃を受けて、敵の練度に感服する。

 しかし、発する言葉はそうであってはならない。


「大した攻撃ではない! 味方の防御魔術はこれしきのことで消えぬ! シャルリーゼ様にお仕えせし天使様の理力はまだまだ尽きぬ! 進めっ! 進めっ!! まもなく、敵先陣よ!!」


(まもなく弓兵の攻撃だな。ここでは何人か倒れよう。あいすまぬ……)

 苦衷は心でのみこみ、シードルは疾走を続けた。


 ◇  ◇


 重装騎兵団の一人にヴァンガイという十八才の少年がいる。

 ヴァンガイは代々ブローム公爵家に仕える騎士の家に生まれた。

 一〇才にならずして剣の鍛錬をはじめ、一五才にして任官。

 鍛錬を積み重ねて実力を養い、戦功を積み上げていった。


(この戦いは負けられない! 負ければ、御家と御国は滅びなくても大きく傾く。騎士として鍛えてきたのはこの日のためなんだ。それに大きな戦功をあげれば、家柄以上に取り立ててくれるはず。公爵様なら、公平な論功行賞をしてくれるのは間違いない)


 ヴァンガイは重装騎兵の一人として疾走し続ける。

 そんな中、ついに重装騎兵団はパーヴィリア軍弓兵隊の射程内に入り、矢が射掛けられ始める。

 パーヴィリア軍にとって向かい風だ。


 矢の勢いはどうしても弱まり、防御魔術や理力によっても防がれる。

 しかし、弓矢を防ぐたびに防御魔術や理力が消失していく。

 パーヴィリア軍の狙いは、とにかく今の間に防御魔術や理力の防御を削っていくことであった。


 敵味方が隣接している箇所には、うかつに攻撃できなくなるのだ。

 味方を巻き込んでの攻撃など、ヨナーシュは一切考えていない。

 戦いはこれで終わりではないのだ。

 部下の信頼を失えば、全てが終わるだろう。


 運悪く矢が二発もヴァンガイの顔面目がけて降ってくる。

 突進中であり、回避しそこなったが、防御魔術が防いでくれた。


 しかし、さらに火炎と雷撃がヴァンガイを襲う。

 ついにヴァンガイを守る防御魔術と理力の鎧は全てはじけとんだ。


 電流がヴァンガイの身体を流れ、さらに発火し、馬上で炎に包まれる。

 公式記録には残されないが、この戦いにおける初めての戦死者だった。

 彼の忠誠とささやかな野望、一九年にわたる生涯はここで潰えた。


 近くや後続にいた重装騎兵はヴァンガイを回避し、突進を続ける。

 武人の死は戦場において当然の理。

 鍛えられた精鋭達はただ前を向いていた。


 ついに、重装騎兵団はパーヴィリア軍先陣に近づく。

 パーヴィリア軍中央先陣を務める北部諸侯達は、木材で簡易的に柵を作って先陣を長槍でかためていた。

 騎兵突撃に対する防御の常道である。


 長槍を構える兵士たちは轟く馬蹄の音におののくも、火炎や雷撃、弓矢による派手な攻撃を見て、頼もしくも思った。

 だが、近づいてきた重装騎兵団はほとんど無傷である。

 軍中で禁止されている私語をかわす兵士がでてきた。


「びくともしてないぞ」「馬まで鎧を着てるのか……」

「この柵で防げるんだろうな」「もしかして、やばいのか……?」


 王軍と異なり、北部諸侯軍の質はあまりよくない。

 諸侯によって異なるが、ただの雑兵まで混じっている部隊もある。

 ハイグラシアでは地球よりも、専業兵士と一般人の差は大きい。

 スキルや魔術があるのだから、当然のことであった。


「騒ぐな! 柵と長槍がある!」「うろたえるな! 長槍をしっかり構えろ!」

 諸部隊の長を務める者達が部下を叱咤激励していく。

 威容を見せる重装騎兵団に対する本心を包み隠して。

 もっとも、何人かは表情が言葉を裏切っていた。


「頃合だな。手筈どおり、竜気発剄を使える者は前へ出よ。私も行く!」

 シードル=ブロームは中団から前衛へと駒を進め、精鋭も続いていく。


 パーヴィリア軍の柵が近づいてくる。

 このままでは、柵と長槍で勢いを殺されてしまう。

 そうはさせないために必要なのが竜気発剄だった。


 竜気発剄は竜人固有スキルだ。

 武具や手足から、竜人が持つ竜気を発し遠距離の敵を攻撃するスキル。

 一定のレベルがないと使えないため、保有者はそれほど多くない。

 このスキル最大の利点は、理力で威力を緩和できても防御魔術ではほとんど緩和できないことだ。


 デメリットは普通の魔術よりも魔力を消費すること。

 本来は決め技なのだが、シードル=ブロームは先陣突破が肝要と考え、ここで用いることにする。


 竜気発剄の使い手達が重装騎兵団の先頭となる。

 ここらの隊列切り替えは日頃の訓練の賜物であった。


「いくぞ!」


 シードル=ブロームは、左手で手綱を持ち、右手で公爵家の宝剣ブレイストルを抜き放つ。

 宝剣から放たれる微かな白光は、宝剣が蓄えている純粋な魔力が放つものだ。

 その魔力にシードルは己の竜気を込めて、まばゆいまでの白光とする。


 竜気発剄の使い手達もまた、シードルに続いて武具に竜気をこめていく。


「総員、竜気発剄を放てっ!!


 シードル筆頭に剣や槍がパーヴィリア軍の方へ振り下ろされ、白く輝く竜気が押し寄せる。

 その白い光はパーヴィリア軍前衛兵士の死を意味した。


 柵も兵士も長槍も全てがはじけとび、砕け散り、重装騎兵団への守りは完全に失われた。


「このまま突撃っ! 敵先陣を食い破るぞ!! 私に続けっ!!」

 シードル=ブロームはこのまま先陣を務める。

 接近戦で戦う展開まで無事にもってこれた。

 こうなれば己の武力もまた駒として扱い、勝利をもたらすべきだろう。


 ブローム公爵家重装騎兵団はくさび形となり、パーヴィリア軍中央先陣に襲い掛かった。


 ◇  ◇


 戦いが始まったのは中央だけではない。

 両翼もまた同様であった。

 パーヴィリア軍左翼先陣は王軍第一師団が務めている。


 第一、第二の魔術士団による攻撃は中央に振り向けられ、両翼には回されていない。

 それは両翼にとっては極めて不利なことだ。

 しかし、何しろ味方する天使の数が両軍では大きく異なる。

 アズヴァーラ軍による攻撃魔術は両翼の魔術防御を削っていくが、パーヴィリア軍にはまだまだ余裕があった。


 対するは聖竜八家の一つであるオーヴェ=ダールマン公爵率いる軍だ。

 オーヴェはシードルと異なり、槍兵を前面に押し立てて正攻法で攻め寄せる。

 騎兵は温存し、時を待って、迂回攻撃を仕掛けるつもりだった。


 攻撃魔術、弓矢の応酬が終わって、ついにパーヴィリア軍第一師団とオーヴェ軍が接近戦を始める。

 長槍をもって、突いて、叩いて、敵を倒すべく兵士達は渾身の力を振るう。


 戦場は喚声が支配し、時折、哀れな犠牲者の悲鳴が聞こえる。

 鉄と革鎧と汗のすえた臭いから、血の臭いが混じっていく。

 人間と竜人の負傷者や死体が次々と生産されていった。


 師団長であるヴェストル=ダンヘル=フリドルフは無表情なまま、本陣にて投影魔術が映し出すスクリーンを見つめている。

 指示を出しては、映し出す場所を切り替えていく。

 スクリーンは両軍一進一退の攻防を映し出していた。


「やはり、敵はブローム卿による中央突破が狙いのようだな」

「はい。公爵はアズヴァーラ最強の司令官にして武人でありますから」

 五五才のフリドルフに対して、五〇才の参謀長がこたえる。

 二人とも名門貴族出身であり、敵ながらも公爵であるブロームに対して敬意を払っていた。


「攻撃魔術の支援がなかった割には、五分で戦えているな」

「御意にございます。防御重視で陣を固めているのが功を奏したのでしょう」

 二人とも貴族であることよりも軍人であることを望み、髪や髭に白いものが混じってきても均整な体型を保っていた。

 美食に溺れ、醜く肥え太って第一線で戦えようか、という気概を常に持っている。


「中央突破のために敵は全騎兵を集めたわけでもなさそうだ。そうすれば、こちらは両翼を騎兵でつけばいいだけだから当然ではあるが。いずれ、敵は騎兵を繰り出して、横合いをついてこよう。備えはぬかりないな?」

「後詰の手配はすでに整っております。しかし、こちらの騎兵が支えてくれるのが前提であります」

「レネーの小僧か。果たして、この大きな戦いでも才幹を発揮できるものやら」


 フリドルフの声に揶揄の響きが混じる。

 譜代名門の伯爵当主であることに誇りを持つフリドルフは、平民出身で若年ながらも大出世を遂げたレネーに対して、あまりよい感情を持ってなかった。


「騎兵や近衛ばかりに戦功を独り占めにさせる必要はありますまい。敵騎兵はレネーに任せ、当方は後詰を用いて、攻勢に出る手はずも整えてあります」

 参謀長の目つきも口調も不穏さを感じさせる。


「フフ、それはもっともなことだ。実に望ましい展開だな」

 フリドルフは目を細める。


 しかし、彼は表情を消して、

「しかし、勅令あっての話だ。今のところ、陛下のお考えは防御に徹しろとのこと。私は陛下のご命令に従うまでだ」

 参謀長の提案をやんわりと却下した。


「……かしこまりました」

「何、準備は整えておいてくれ。何があるかはわからぬからな。戦場とはそういうところだ。まずは鉄壁の防御を陛下やレネーの小僧に見せてやろうぞ」

「第一師団の精強さを全軍に知らしめましょう」

 参謀長は下がって、通信魔術で部下へ指示を出し始めた。


(私に怖い者は誰もいなかった。どんな大貴族であろうが、恐れながらも先王陛下すらも。しかし、ヨナーシュ陛下だけは違う。ここ最近は人事もゆるやかに動かし、波風をたてないようにしてきた。しかし、それは擬態にすぎぬ。本性は異母兄やアプソロン公爵を殺した際に見せたものだ。勅令に背けば、一時は許しても最終的には許さないであろう。戦功はほどよくでいい。もはや、得る物よりも失う物の方が多い。参謀長は陛下の怖さも、戦功をたてすぎることの怖さも気づいていないのであれば……。もしそうなら、異動させるべきかもしれぬな)


 フリドルフは戦場にありながら、すでに戦後についても考えていた。

 剛毅さに伴う細心さが、彼に将軍の地位を守らせているのだ。


 ◇  ◇


 逆となるパーヴィリア軍右翼先陣は王軍第二師団が務めている。

 対するアズヴァーラ側は、レベッカ=グルンデン公爵率いる軍だ。

 中央、左翼同様に、長槍による接近戦が始まっていた。


 地球においては長槍による密集体形が猛威をふるった時代があるが、いくつかの戦術によって崩れ去る。

 ハイグラシアにおいては、攻撃魔術がその役割を果たす

 先鋒の中には攻撃魔術を用いる戦士が何人もいる。

 一撃や二撃は防御魔術や理力による防御が防いでくれる。

 しかし、直撃を受けるたびに防御が薄れ、やがて無防備となる。

 防御魔術をかけなおしてもらえるのは、術者近くにいる幸運な者だけだ。


 やがては、攻撃魔術の直撃を食らって、火だるまになったり、感電死する者が現れる。

 つまり、長槍隊の何人かが攻撃魔術によって倒れると、陣形が崩れるということだ。

 そうなれば、長槍隊の懐に入り込まれる隙ができて、間合いの短い武器が有効となる。


 今のところ、パーヴィリア軍の魔術士団は中央に手をとられていて、両翼は手薄だった。

 レベッカはこの間に強攻すべきだと決断した。

 彼女は防御より攻撃を好む。


「もういい。騎兵を出せ! 迂回させて横合いから突撃させよ!」

「はっ!」

 部下が慌てて、魔術士の下へ走っていく。


「いずれは敵の魔術士団もこちらを向いてくる。それまでに敵右翼の陣形をどれだけ崩せるかが勝負よ」

 レベッカは投影されたスクリーンで、刻々と移り変わる戦況を捕らえ続けていた。


 両軍共に長槍での叩き合いは終わり、より間合いの短い武器で乱戦に陥った。

 長剣、斧、手槍などで敵を倒すべく、誰もが力の限り奮戦する。


 ある者は剣で袈裟懸けに斬られ、ある者は腹部に槍が突き刺さる。

 血反吐を吐きながら、のたうち回る者もいた。


 血まみれになりながらも、自分が生きるため、敵を倒すため、戦い続ける。

 この戦いは同種族の戦いではない。

 異種族による戦いであって、同族殺しの禁忌は発生しないのだ。


 人間の輝かしい未来を目指すために。

 竜人の将来を栄えたるものにするために。


 いや、自分や親しい者達の命を守り、戦功によって得られる褒章を得るために。


 そこかしこで激戦が繰り広げられているが、第一の転機をもたらしたのはシードル=ブロームだった。

 彼率いる重装騎兵団は、パーヴィリア北部諸侯の軍を切裂こうとしていた。

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