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ハイグラシア新歴全書  作者: 火藤煌士
プロローグ
3/55

(3) チートを求めて

 サララの視線に気づいたミロシュは少し頬が赤くなる。

 ミロシュは思考がまとまり、言葉を発す。


「ひとまず保留にします。ポイント振りなおし系のスキルはありますか?」

 もう一つのチートはこれだろう。

 ポイントを振りなおすことができれば、ありとあらゆる局面に対応できる。

 魔法が必要な時は魔法を、剣術が必要な時は剣術を取得すればよいのだ。


「もちろん、ありますよ。表示します。しかし、取得は厳しいかもしれませんね」


レベルポイント振りなおし:40

スキルポイント振りなおし:70


 必要なポイント量を見て、ミロシュは沈黙した。

 レベルポイント振りなおしはかろうじて取得できるが、効果を考えても取得に必要なポイント量が多すぎる。

 本命のスキルポイント振りなおしに至っては、ポイントが足りない。


「これは取得するの無理ですね。なら、敵を倒した時に敵が持つスキルを奪えるスキルはありますか?」

 いわゆるラーニングである。

 これが使えれば、かなり強くなれるだろう。


「それもありますよ。ただ、こちらも難しいと思いますが」


スキルラーニング:80:200


「スキルラーニングレベル一を取得するのに八十ポイント必要です。レベル一ごとに二十%の確率でスキルを奪えます。レベル二を取得するのには二百ポイント必要で四十%の確率でスキルを奪えます」


 サララは丹念に説明を行うが、ミロシュには無意味だった。

 ミロシュの手持ちは五十七だ。

 ポイントが全然足りない。

 憮然として、軽くため息をつくしかない。


「有用なスキルはそれだけポイントも必要ってことか」

「必要なポイント量は有用性に応じて決まりますから」

「どうもありがとうございました。魔法について教えてください」


 スキルラーニングの取得を断念する。

 魅力的な能力だが、どうしようもない。

 経験値獲得UP系とポイントUP系の取得は、魔法スキルをどれだけ取得すれば、弱い魔物を倒せるかについて調べてから決めることにした。

 レベルアップするために必要な初期能力の獲得が先決だ。

 武術など習ったことはない。

 素人が戦うには魔法のが好ましいとミロシュは考えた。


「わかりました。取得できる初歩魔法スキルは以下の通りです」


無属性魔法:1:2:5:10

火属性魔法:2:5:10:20

土属性魔法:2:5:10:20

水属性魔法:2:5:10:20

風属性魔法:2:5:10:20

雷属性魔法:2:5:10:20

氷属性魔法:2:5:10:20

精神属性魔法:5:10:20:40

光属性魔法:5:10:20:40

闇属性魔法:5:10:20:40

空間属性魔法:10:20:40:80

回復魔法:10:20:40:80

召喚魔法:10:20:40:80

精霊魔法:10:20:40:80


 ミロシュの脳内に新たなスキル一覧表が表示された。


「付属する数字はスキルレベル一、二、三、四を獲得するのに必要な合計スキルポイントですね。たとえば、無属性魔法レベル一の人がレベル三にするのに必要なスキルポイントは五マイナス一で四ポイントとなります」

「ハイグラシアの一般人でもレベルアップ時に好きな魔法を選べるんでしょうか?」

「選べますけど器用貧乏になりますから、多くても三種類くらいに留めるのが普通ですね」

 確かにレベルを五十に上げたとしても、通常であればスキルポイント百しか得られず、限界があるのがわかる。


「大体の魔法は意味がある程度わかりますが、無属性魔法はどんな魔法を使えるんですか?」

「無属性魔法で一番使われるのは肉体強化ですね。結界をつくるのも無属性魔法です。剣など武器で戦う人も無属性魔法だけは習得して、肉体強化を使って戦うのが普通ですね」

「なるほど、色々試してみる必要があるかな。まずは試しに火属性をレベル一にしてもらえますか」

「レベルアップ時に行う操作に慣れるためにも、ご自身でやられたほうがいいですね。頭の中で念じてみて下さい」

「わかりました。やってみます」

 ミロシュは頭の中で火属性のレベル一取得を念じてみる。

 すると、ステータスに反映されたのがわかる。


「うまくいきましたね。それでは魔法の使い方ですが、魔法は基本的にイメージが重要です。炎をだしたければ、出したい炎をイメージして下さい。それと、言葉に出した方がうまくいきます。言葉に出すことによってイメージを強化できるからです。なので、無詠唱だと熟練していない魔法使いの魔法は威力が大きく低下します」

 サララの言葉を聞いて、ミロシュは火属性魔法を試してみる。


 ミロシュは右手を前に出し手のひらを上に向けて、

「炎よ、出ろ!」

 と叫んだ。

 すると右手の上から、高さ十五cmほどでガスバーナーのような赤い炎がふきでた。

 身体から少し何かの力が抜けるのがわかる。

 ミロシュは驚いた後、一転して喜んだ。


「それが火属性魔法です。脱力感が感じられたかと思いますが、それは魔力を消費しているからです」

 数秒ほどで赤い炎は消えた。ミロシュは次に必要なことを思いつく。


「標的になるかかしのようなものを、数十ほどだしてもらえませんか」

「わかりました」

 サララが答えると共に、かかしが数十ほど並べられた。

 ミロシュは炎で攻撃できるかどうかのテストを試みる。

 かかしから十五mほど離れた。

 右手を下げて、今度は左手を前に出して、手のひらをかかしの方へ向ける。


「炎の矢よ、あのかかしを攻撃するんだ!」

 言葉が発せられると共に、手のひらから長さ二十cmほどの矢の形をした炎がかかしに向かって放たれる。

 ど真ん中に命中し、かかしは燃え上がった。


「よしっ!」

 初めての攻撃魔法が標的に当たり、ミロシュは愉快な気分になる。


「レベル一で初めてというのを考えたら、かなり筋がいいと思いますよ。もちろん、お世辞ではありません」

 サララは心から楽しげな表情でほめる。


 ミロシュは筋がいいほうだろう。

 もっとも、ミロシュだけが優れているのではない。

 ゲームや漫画アニメなどに慣れ親しみ、現代日本の高校生の方がハイグラシアの一般人よりも、魔法や炎に対するイメージについて豊かなのが原因だ。

 ミロシュは廃人やゲーマーと言わないまでも、ある程度ゲームをプレイし、漫画やアニメはほどほどに見ていた。

 それらがイメージ化に役立ったのだ。


「ありがとうございます。僕が降りるソヴェスラフ近郊の弱い魔物に通用するでしょうか?」

「そうですね。そこらの魔物でしたら高い命中率で、ダメージも与えられると思います」

「何発あたれば、倒せそうですか?」

「魔物によりますが、おそらく二発あたれば倒せるでしょう」

「そうですか。レベル二で試してみます」

 ミロシュは炎属性魔法をレベル二に上げてから、同じように炎の矢を出してかかしを撃つ。

 また、かかしが炎で焼かれていく。

 矢が大きくなり、速度が明らかに上昇し、威力が目に見えて上がっているのがわかった。


「これだとどうですか?」

「一発で倒せると思いますよ。ただし、体力が高めの魔物であれば、二発必要かもしれません」

 続けて、レベル三を試す。

 レベル三なら、弱い魔物を確実に一撃で倒せると教えられる。


「安全を考えるなら、レベル三を取得すべきかな。でも、魔法を使って鍛錬すれば、スキルレベルは上げられますよね?」

「はい。それなりに時間はかかりますが。それと、魔法に関する能力値も少しずつですが上がっていきます。筋力や持久力など、他の能力も効果的な鍛錬を行えば、向上していきます」

「わかりました。やはり魔物によっては、火属性が通じなかったりしますか」

「属性無効スキルを持っていると通じません。耐性スキルを持っている相手にも厳しいですし、逆に弱点だと与えるダメージが増えます。ソヴェスラフ近郊の弱い魔物では無効スキルなんて持っていませんけどね」

「後々を考えると、やっぱり複数の属性は必要だなぁ」

「実戦を考えると、そうなりますね」

 他の属性による攻撃も試してみる。

 しかし、ミロシュにとって火属性がもっとも扱いやすく、威力も高かった。


「これくらいにしておくか。次は肉体強化のチェックかな」

 頭の中で念じ、ミロシュは無属性魔法を取得する。


「肉体強化のやり方も同じです。肉体の強化をイメージしてみてください」

 ミロシュは魔力を全身に流して、肉体強化のイメージを頭の中で想像する。


「二十キロあります。これを持ってみたら、どれだけ強化されたかわかると思いますよ」

 ミロシュの足元にダンベルがあらわれ、ミロシュは持ってみた。

 明らかに軽く感じられ、ミロシュは驚く。

 普通なら、こんなに軽々と持てないはずだ。

 振り回してみると、ミロシュは難なくダンベルを振り回せた。


「走ってみてください。速く走れますよ」

 サララの言葉に応じて、ミロシュはダンベルを手放して、走ってみる。

 すると、速く走れるのがわかる。

 驚くよりも気持ちいい。

 爽快な気分だ。

 走るのをやめて、ミロシュはサララのもとに戻る。


「肉体強化ってすごいですね!」

「はい。武器や格闘で戦うなら絶対に必要でしょう。スキルレベルが上がれば、強化度合や強化に必要な魔力の効率が上昇します。ただし、普段から鍛えていないと、後で筋肉痛がひどくなりますし、増える力が少なくなります」

 だから、騎士や冒険者は肉体強化の上限を高めるべく、身体を鍛錬し続けるのだ。


「えっと、僕は大丈夫ですか?」

 後で筋肉痛まみれになりたくはないので、ミロシュはおそるおそる質問する。


「安心して下さい。ここではいくらでもテストできるよう、魔力体力は瞬時に回復して疲労しません」

 ミロシュは安堵して次の質問を行う。

 どういう仕組みなのか気になったが。


「普通なら、魔力は時間がたてば回復するんでしょうか?」

「そうですね。一番いいのは寝ることです。寝るのが一番早く回復します」

「魔力回復を早めるスキルはありますか?」

「ありますよ。一覧表をだしますね」


魔力回復:2:5:10:20

瞑想:2:5:10:20


「魔力回復は時間経過時の魔力回復を早めます。瞑想は精神集中時に魔力回復を早めます。瞑想の方が魔力回復速度は早いですが、きっちり精神集中しないと効果がありません」

「魔法を使って鍛錬するにも魔力が必要ですから、これらのスキルがあれば、鍛錬にあてる時間を増やせますよね?」

「おっしゃるとおりです。ミロシュさんはよく理解してますね」


 サララは喜ぶ。

 ミロシュはとても優秀に思えた。

 強くなるために必要な手段をわかっている。

 この分なら、利用できるかもしれない。


 そんなサララの思惑には気づかず、ミロシュは考える。

 どちらのスキルを取得するか。

 いや、両方とも取得する手もある。

 五分ほど考えるが、魔法鍛錬と瞑想を繰り返すのが効率的という結論に達した。


「瞑想のがよさそうですね。後は、近づいてきた敵を知るスキルなどはあるでしょうか?」

 当分はソロで活動するつもりだ。

 実績もない新人と組んでくれる冒険者などはいないだろうから。

 なので、一人で多数の敵と戦うのを避けるためにも、そういうスキルが必要だと考えた。


「二種類ありますね」


気配察知:2:5:10:20

魔力察知:5:10:20:40


 新たなスキルが表示された。


「気配察知は文字通り、気配を察知できます。ただし、対象が気配を消していた場合、察知することができません。魔力察知は対象の魔力を察知できます。魔力を持たない動物はほとんどいません。魔力を隠すことは可能ですが、ゼロにまですることはまず無理です。なので、索敵手段としては魔力察知の方が優れています。どちらもレベル一で周囲約二十メートルを察知できます」

「ソヴェスラフ近郊の弱い魔物で、気配を消すような魔物はいますか?」

「いないですね。気配を消せる魔物はそれなりに強いものばかりです。気配を消して忍び寄るのは暗殺者、盗賊など、裏の世界で働く者たちがほとんどでしょう」

「なら、とりあえずは気配察知で十分かな」

「はい、荒事に巻き込まれない限りは」


 サララの言葉にミロシュは苦笑する。

 目立たないよう行動するつもりである。

 暗殺者や盗賊と戦う確率は低い。

 現時点でミロシュはそう信じていた。


 ミロシュは他にも様々なスキルを見ていくが、これといったスキルはなかった。


「これでステータスを決めるのに必要な情報はそろったかな。ポイントをふってみます」

 ミロシュがどのようなポイントの振り方をするか、サララは楽しみにしていた。

 それによって、自分の行動が決まるのだから。

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