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他の世界と言いはしたが、そこは僕達の世界とほとんど変わらない事もあるらしい。
「ここは、見覚えがあるぞ。」
久保田がそう呟いた。僕もそうだ。周りにはどれも変わりない様なビル群がぎらぎらの光に体を輝かされていた。しかしその反射光を眩しがるのは僕等だけで、他には誰も居なかった。ここに居るのは僕等だけだった。
「ううーん、ここは、僕の住んでる街かな。もしかして。」
「じゃあ戻って来たと?」
「かもね」僕達はそれを確かめることにした。ただ、そんなに特別な事をやるわけでは無い。僕の家へ行って見るのだ。しかし顔を会わせるわけにはいかないだろう。やらなくてはいけないことがあるのだ。それにもう何日も経っているってこともある。顔をあわせづらい。僕はビビりなのだ。
僕達は歩き出した。
「しかし、戻ってきたとしたら何でだろう?僕は戻りたいなんて考えてなかったんだけど?」
僕は言った。意識してではないが、少し詰問するような感になってしまった。
「いや、俺もそんなことは全く思っていなかったけど」
久保田はゆっくりとそう答えた。
「さあ、無駄話してないでさっさと行くぞ。」
久保田が急に速度を上げたので、僕もそれに合わせなければならなかった。
「そろそろ家に着くはずだけど、おかしいな、おかしい」
どれも一見同じ様で、よく見ても同じ家々がずっと続いている。
「どうした?」
「いや、見たことない家が有るんだ。ってより、やっぱり、違う世界だったのか。」
それは若干笑いが含まれていた。
「おいおい、時間の無駄だったじゃねーか。」
久保田が、こちらも可笑しそうに言った後、一拍おいて、
「で、これからどうすんの。」
「どうしようか。」
僕達は悩んだ末、もう少し先に行くことにした。さっきから人が一人も居ないのが気になるし、それに腹も減った。
僕達は弁当を食べていた。座っている所は、よくある小さい公園のベンチで、目の前には肉屋があった。
弁当は、誰も居ない事に託つけて、その辺の店で取ってきたのだった。ただ、きちんとお金は置いてきた。ここで使えるかは分からないが、鋳潰せばそれなりの価値もあるだろう。
「しかし、食事を取らないといけないんなら、少しきついな。」
「そうだね。中々こんな事も無いだろうし。」
僕は食事中喋るのはあまり好きでは無いが、話し掛けられたのを無視するのも、寂しい。
「そういやあ、敵って何処に居るんだろ。」
いつの間にか食べ終わっていた弁当の空をかたずけながら、久保田が呟いた。
それとほぼ同時に、人が現れた。それも何人も。僕達を囲む様に。軍靴を履いているのか、ザクザクザクと音がした。
「お前ら、何者だ。」
その内の一人が叫んだ。だが、こちらはどんな反応をしていいか分からない。
「言ってることがよく分かる。何故。」
「お前らは何者だ。答えろ。」
そいつらは持っていた銃を構えた。見たことのない銃だ。流線形で白色をしている。こちらに向けている敵意がはっきりと分かった。
「こいつらかな、敵さんは。やっちゃう?やっちゃう?」
僕が久保田に尋ねた。ほとんど間を置くことなく、久保田はそれを快諾した。
僕の手の中に刀が出現する。久保田もグローブを両手にはめていた。
敵はざっと三十人ぐらいだ。初めてには丁度いい。