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久保田からの初メールは「俺は聴覚も鍛えられているのだ。だから助けがいる時は「助けて」と叫んでくれ。そうしたら出来るだけ助けに行くつもりだ。」という、アメニモマケナイ様な内容だった。僕はメールなんぞ中々返さない人間であるが、最初ぐらいは返さねばならぬと思い、返しの文面をうんうん考えていると、もう一通メールがきた。久保田からだ。「言い忘れていたが、私は二ヶ月ほど前から力を使っているのだ。それで、色々技を考えてきた。今度新しい技として追加したい物があるのだが、名前はNo手螺旋と非触螺旋というものどちらが良いか意見を伺いたい。」僕は返信するのが馬鹿々々しくなり、そんな事は知らんと呟いた。しかし他に何もすることがない。いやする事は有るだろう、勉強が。何故なら僕は学生だからだ。しかも中学三年生。しかし日曜日の昼間というのは中々やる気が起きないものだ。僕が中高一貫の生徒で、他の人のように必死になる必要がないということを抜きにしてもやる気が出ない。そのことと昨日、いや今日の出来事は欠片ほども関連性が無いであろうが、それでもぼーっとしているとつい今日の出来事が思い出される。怪物が結局何者だったかは分からない。が、何か大事なことがあるのは確かであろう。それも世界を破壊するような。それはどこから来たのだろうか。また何故来たのか
忘れていた、僕はただの一般人であった。例え超能力が使えたとしても社会での本質は一介の学生に過ぎない。暴力は振るえても脅威に立ち向かう程の力はない。
その後は超能力の練習の一環として部屋の片付けでもして時間を潰した。やはり日曜日の夜ほど憂鬱な時間はないが、それは明日になれば普通の日常が普通に待っているという前提からで、普通でない非日常が待っている場合は、事前にそれを察知し得ることは無いけれど、やはり何か予感めいたものはするのである。