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「其れは出来ない相談だな。」

ウィリアムは首を振った。

「何故。」

「敵が近付いてる。其れも大勢だ。」

言って、僕達にコックピット迄登ってくるように指図した。

胸部に埋まって居るコックピットの中は案外狭く、ウィリアムが今座って居る椅子の前には計器がごちゃごちゃと配置され、其処には何らかのスイッチが多数に、それと操縦桿が一本、大きく真ん中に設置されて居た。下を見ると、フットペダルも在った。

全面、左右両側面、斜め上方に、それぞれモニターが設置され、外の景色が映されている。

然し、其れ等の機械の中で最も目立つ物は、恐らく椅子の側面の、丁度肩の高さの所から延びる鉄の棒であろう。其れは例えるなら松葉杖を逆さにした様な物で、始めは一本で在る棒が、途中のボールの様な、恐らく曲がるであろう処を境に二つに分かれ、最終的には松葉杖の持ち手の様に二つの間に一本の棒が渡される。然し其の渡しは二つの棒をどちらとも三センチ程突き抜けて居た。

要は腕を直感的に操作出来る装置の様だ。


モニターに複数の緑色光点がいた。其れ等は動いて居た。下に向かっている。

「此れが敵って訳か。どうする?」

久保田が尋ねる。

「やっぱり御前らを隠して遣り過ごすのが一番だろうが、それが嫌なら、何でも。」

ウィリアムは余りこの事態を深刻には受け止めていない様だ。しかし、僕は先の戦闘でだいぶ疲労していたし、久保田もそうだろう。それに単純に力不足でもある。

「あの、又別の世界に一旦逃げるっていうのは、どうかな?」

僕はそう提案したが、ウィリアムに疑問を返された。

「機械も無いのに、どうやって。」

「それは、まあ、この」

僕は僕の精神宇宙から箱を取り出して、ウィリアムに見せる様に手を突き出した。

「箱を使ってやるわけさ。」

僕が取り出した箱をウィリアムは興味深そうに見つめていた。時折唸ったりしている。

「すまんが、敵が大分近いようだぞ。」

久保田が言った。モニターを見るとさっきよりも点が移動しており、敵は近いようだった。というより、もう直ぐそこだ。それは、先ほどまでは聞こえなかった低い音、エンジン音が聞こえていたことで分かった。

戦闘の準備をしていると、ウィリアムがケドウはどうするのかを聞いてきた。しかし、その問題は僕の精神宇宙に入れるということで直ぐに解決した。精神宇宙に容量の大きいものを入れるのは結構きつくて、ケドウとトラックとを入れるのはかなり大変だった。


「じゃあ。どうする?戦うか?このまま何処か別の世界に移動するのでも良いが。」

久保田はそう訊いたが、僕には内心、戦いたいように見えた。

「そうだね、取り敢えず身を隠して相手の出を待とう。」

僕は一応そう答えて、砂の中に空間を作って、其処に隠れた。


それから直ぐ後、敵は来た。兵を乗せているらしい輸送車が二台と、ケドウよりも巨大なロボットが一台だ。其れは高さ十五メートルで、ドーム型のボディと、四つ足を持っていたが、足にはローラーも付いている様だった。ドームには四箇所に等間隔でそれぞれ砲門が付いて居て、更に一箇所、ドームの下からにはくねくねと自在に動くアームの様な物が伸びていた。先に穴が空いているので此れも、砲門らしかった。

輸送車が止まると、武器を提げた兵がぞろぞろと降りて、僕たちが先までいた自動車を取り囲んだ。僕達は其の後ろに居るのだが、誰も気付きそうに無かった。

僕は機会を窺っていた。何の機会か、其れは、敵の全員を潰す機会である。僕は正直かなり疲れているし、今は砂を押し上げるのにも力を使っている。やりたくないのだが、敵は予想以上に多く、久保田に頼むにも久保田は遠隔操作が苦手らしいのだ。僕がやるしかない。

「じゃあ、そろそろやっちゃうよ。」

そう言うと、ウィリアムが、待て、と僕を牽制した。其の顔には焦りが見えた。

「どうしたの?」

「いや、潰すなら先にあのカメ、あれからやってくれ。」

最初、カメが何を指すか分からなかったが、少し考えてみると、ドーム型で多脚のあの一番大きい機械だろう、と予想がついた。僕は其れを了承し、力を溜めて、カメの方に飛ばした。エネルギーをぶつけるのが、一番体力を消費しなくていいのだ。

飛ばされたエネルギーは、カメに当たると、其の装甲を少しだけ凹ませた。

「あれ、強いな。」「どうするんだよ。」

僕たちは、その後の行動をどうするか迷っていた。しかし、

「そういやさ、纏めて三人ってできんのかな。」

久保田が言った。

「何を?」

「いや、世界移動だ。また別のとこに行くんだよ。」

それは盲点だったが、「やってみないと分からない。」ということで、試すことにした。どこに行くかは、僕が決めることになり、僕はかねてより行きたかった、ファンタジーな世界を選んだ。先ず僕が穴を開き、最初にウィリアムを、次に僕が入った。久保田は最後だった。



僕が気が付くと、周りは又、山だった。但し、きちんと整備された道があり、目の前にはドラゴンではなく、少女が居た。少女は、桃色のユニコーンを連れていた。濃い茶色のローブを着て、フードを深く被っていたので顔はよく見えなかったが、髪は胸に掛かるほどまでの長さで、黒かった。また、僕たちに驚いているらしいということも、少女の立ち止まっている様子から分かった。

「その馬、可愛いね。」

男三人と女一人の沈黙に耐えられなくなった僕は、そう、切り出してしまった。よく考えると最悪の切り出しだ。

「・・・何。」

一応その少女は食いついてくれたが、怪しまれている。

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