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「いや、でも話すって言っても何を話せば良いのか。分からん。御前らが誰かってのも分からんが。」

ウィリアムは首を傾げて言った。

「おいおい、ちゃんとしろよ。」

「分かった分かった。順に言って行くが、まあ聞いて居てくれ。俺はボンボンの攻撃隊第九小隊の所属で、専門は強撃機兵の操縦だ。普通の防具は慣れなくてね。スイッチ切ったままで、だからさっきビーム食らっちゃった訳。まあ、其のお陰で今こうして生きてるんだがね。兎に角俺は攻撃隊として此処に強襲仕掛けたんだが、其の帰りで、まあ御覧の有様。」

「いやさっぱりわかんねえぞ。ボンボンってあれか、雑誌か。」

僕も、そして久保田も内容が理解出来なかったらしく、質問をしてしまった。然し、尋ねられたウィリアムも、久保田の言っていることが良く分からないらしい。顰面をして居る。矢張り常識の違いと云うものが大きく影響して居るのであろう。(やが)て、恐る恐る口を開いたウィリアムが、

「御前らは何者なんだ。」

と尋ねて来た。我々の事を知られても支障は無いだろう。僕は教えてやった。

「僕達は、まあ神の啓示で、僕達の世界を救うべく戦っているのさ。君達が色々な世界を侵略して居ると聞いてね。其の根本を叩かんとしているんだよ。」

「ああ、確かに他の世界を侵略して居ると言えるかも知らんな。一応の名目としては交友だったが、実際はどうだろうか。」

「いや然し、神が出て来るとは何と言う()きか。だが、幾ら軽装だったと雖も、あれだけ大量の兵がたった二人に負けるには、其れ程の理由が必要かも知らん。神の御加護で勝てました。って具合に。」

「何を勝手に独語してんだよ。長えよ。神の加護じゃ無くて俺たちの実力で勝ったの。分かる?」

久保田は若干怒り気味で在り、早口になっていた。何が彼の感情を害したのかはわからないが、諫めねばならないのは確実だろう。

「いや、俺は弱い。生身は専門じゃないからな。だが、彼処に倒れてる奴等はそれなりに鍛えて居たのだ。素人に負ける筈が無いんだよ。」

然し、ウィリアムが先に口を開いてしまった。言った内容は挑発と取れるものだった。

「まあ、そりゃあ俺が強過ぎたんだろう。」

久保田は得意気だった。

「あれ、喧嘩しないの。」

疑問が出てしまった。要らん事を言ったと詫びを入れようとしたが、二人共如何(どう)にも思っていない様だった。

「喧嘩何かしないよ。ああ、本筋から離れ過ぎだ。ウィリアム。」

「ああ、えっと、先ず、ボンボンってのは国だよ。俺は大嫌いだけどね。其所が自分の領域を増やさんと、こうやって攻めてる訳だ。世界の壁を破壊出来る何て物が出来たばかりに。本当、あんなものなくなりゃ良いんだよ。俺の里は壊すし、質の悪い機械で俺達を送るから、知り合いもどんどん死んでいってる。迷惑なもんさ。貧乏人は兵隊に成るしか無いんだから。」

ウィリアムの話が脱線しかけている。如何もさっきからこいつは放って置くと勝手な方向に進んでしまうらしい。

「あー、じゃあその強撃機兵って云うのは何なのかな。」

僕は軌道修正を行った。

「重装機兵なら知ってるがな。」

しかし、僕の質問に久保田が茶々を入れた。但し、ふざけている様子も、怒っている様子も見られない。彼なりに真剣なのだろう。

「ああ、大体三、四mぐらいの高さで、ロボって程でも無い、な。人が中に入るんだ。種類は色々有るけど、俺が乗ってたのはケドウっていう奴だ。」

「うーん、よくわかんないかな。」

「俺も其れ以上の説明は出来ないからねえ。如何しよう。実物見てみる?」

「ああ、うんうん、見てみたい。」

僕は今直ぐにでも其れを見たかった。僕は元来、そういった物を大変好んで居た。実際に間近で見ることへ強く憧れ、だから僕は強撃機兵を見たかった。

「いや然しな、此処には無いんだよ。」

僕は多少落胆した。然し存在が消える事は無いと気を取り直し、訊いた。

「じゃあ何処に有るの?」

「ああ、少し遠くなるが、」

其処迄ウィリアムが言った時だ。

「実物有るんなら初めから見せろよ。」

先程、発言を軽く流されて以後会話に交じる事が出来ずに居た久保田が、多少強引に、文句を捻じ込んだ。

「・・・あの向こうの方に車が有るから其処に。」

ウィリアムは、僕達の居る公園の後ろ側、ビルの建ち並ぶ方を指差した。僕達は今すぐにでも其処に行く事に決めた。案内はウィリアムがしてくれるそうだ。


十分程歩いた。僕達は其処だけビルの消えた更地に成って居る所に居た。然し、其処には何も無い様に見えた。少なくとも自分には。

「此の下だよ。地下だ。」

其の更地の中心に立ち、ウィリアムは言った。此の下ならば如何(いか)にして掘り起こす。僕はそういう疑問が湧いて来た。訊くと、

「まあ、待て。」と何やら服を探り、ボカすだけであった。暫く待つと、ウィリアムは手に何かを掴んで居た。よく見ると緑色の薄い長方形の形をしたものだった。其れに何かして居るのだろう、ウィリアムはもぞもぞと指を動かして居た。

気が付くと、地響きが鳴っていた。其れは極小さい音量ではあったが、手持ち無沙汰で静かに待っていた僕達には、よく分かった。

暫く待った。すると、目の前に在った土が、一点を中心に落ちて行った。蟻地獄というのが近いだろうか。穴が拡がって行く。拡がるに従い土の崩落速度も速まって行く。崩落はある程度で止まり、穴には、自動車が三台在った。二台は輸送車の様で、もう一台はトラックの様だった。トラックの荷台には、大きなシートが被さっているが、其の中に何かしら(恐らくは強撃機兵)が在る、と云うことは、其の膨らみ、突起から推測出来た。

僕達は、ウィリアムを先頭に、穴を下って行った。崩落で、自動車の在る部分は、(たいら)に成って居たが、穴の端は傾斜して居り、其処は人であっても移動は可能だった。

ウィリアムが、トラック様の隣に立っている。少し待て、と言って、ウィリアムは荷台に昇り、シートの中へ入っていった。僕はかなりわくわくして居る。期待で心臓に負荷を掛けてしまっている。久保田も恐らく其の様で在ろう、と其方に振り向くと、久保田は汗を多量にかいていた。

「御前は何故そんなに汗をかいてんの。」

「いやあ、やっぱり緊張するしな。実際に動く人型のロボが見られるってのは、嬉しい。」

「僕もそうなんだけど、やっぱりロボってのは良いね。夢が在る。」

其の様な会話をして居ると、トラックの荷台を覆って居たシートが、動き出した。正確には其の中の物が動いて居るのだろうが。其の中にあった物体が目に見える様になった。モスグリーンのロボットだった。

其れは、胴体が大まかに二つのブロックで出来て居り、上のブロックはコックピットを収納して居るのだろう、少し大き目だった。下は脚が両側面に取り付けてある。上は前方に丸みを帯びた箱の様だが、下は四角く、角は丸めてある。二つのブロックの間は殆んど無く、ほぼ密着して居る状態で在る。

頭部は人の顔を模してはおらず、低く、縦に長い形である。然し、肩が高いため、余り出っ張ってはいない。

腕と脚は太く、腕は長かったが、脚はどちらかと言えば短いだろう。

「やっぱり野太いロボットはいいねえ。御前どう?」

「うん、凄く格好いいよ。無駄に配線剥き出してない所とか。重そうな所とか。」

僕は高速戦闘は好きでは無かった。何故なら格好よく無いからだ。


ロボットが完全に立った。丁度機体で太陽を遮る形になって、僕達に影がおりた。僕達が其れを見上げていると、ロボットの頭部が開いた。

「さっきからロボット、ロボットって。ちゃんと名前が有るからそっちで呼んでくれよ。」

ウィリアムは其処から身を乗り出して言った。どうやら胴体のコックピットは、頭部迄続いているらしい。

「ああ、悪い。強撃機兵のケドウだったか。」

久保田が応えた。若干声が大きい。

「ごめん、名前が違ってた。強撃機兵は俺の役職名だった。正しくは人装甲のケドウだ。」

「ロボットなのに装甲なのか。然し、頭が開くなんてあれみたいだな。あれ。」

「あれって何だよ。」

「其れが忘れちゃって。」

「まあいい。其れで、俺は如何したら良いの。こいつは燃料も要るし、弾薬も要る。」

考えて無かった。僕は少し間を開けて、

「経験を積んでいこうと思うから色々宜しく。取り敢えず今は、休みたい。」

と言った。



絵が欲しいですな

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