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最終回

ツイにきました「最終回」。

“やっとかよ”なんて言わないで!

誤字、脱字、長文、てにをは変、ナンダコリャ?にも関わらず

暖かくお付き合い下さった皆さん。

ありがとうございました。


空港からの帰りのタクシーの中。


「スーツ、買ったの?」

「ウン、替えのズボンとシャツがあるから、一着でも充分かなって思ってたんだけど。」

「バーでタバコの匂いがついて…。

そのまま寝ちゃったから、次の朝困っちゃって…。」


スーツのまま、寝ちゃったの?

今度は黒にしたのね。確かに大人として必需品だけど

白シャツに黒ネクタイなんて…。


「何かと使うから黒スーツはイイけど…。」

「黒ネクタイなんて、お葬式?」

ナカムラさんが黒のサングラスをかけ、黒のソフト帽を目深にかぶる。

「ギャングのコスプレ?」


私が聞くと、ニヤッと笑った。


___________________________________



あたりは薄暗くなってきた。店の前のステージでは照明のチェックをしている。

「今日はお祭り?」Aちゃんが驚いてる。


リネに任せたのはいいが…。

確かに派手だな。

ステージ大きい。店の前をかなり、はみ出してる。

ビッグバンドとはいかないけど、楽器も揃ってるし、

Aちゃんに1曲贈るだけでは済みそうに無いな。

リネ、何曲演奏するつもりダロ。

店の前だけと思ったが、この路地全部がライブ会場のようだ。

何度かララァが歌った場所なので、

“何か”を期待した、ヤジウマが集まってきた。

ステージのピアノでリハーサル中のハネダ・ケンを

見つけた人々が携帯電話で知人に伝え始めた。

海賊ライブ準備中ってか!


ウーン、かなり金使ってンじゃん。…まっ、許容範囲内か。

警察と役所には届けを出したのかな?

そのへんはリネのお父さんがやってくれてるだろう。

ララァだ。今回はロングのチャイナドレス、カワイイ。

…って、なんだそのスリット!

ボクはサングラスを下げララァを見る。

太股から足首までの生脚が!…イイんじゃない。

ボクは知らないゾ。関係ないからな。


リネが走って来た。

「ナカムラさん、準備OKですよ。ナカムラさんの合図待ちです。」

リネのワクワク感が顔に出てる。

「ララァの衣装、大丈夫か?Tが来るゾ。知らないゾ。」

リネが怒って言う。

「キレイな脚を何で隠してるんですか?もったいない!」

「Tなんか関係ナイですよ!」

同感だけどね。覚悟はしているンだね。

ホラ、後ろ。

Tがモノも言わず、リネを羽交い絞めにした。

もがくリネを“さぁ、どうしてやろう?”って顔で見てる。

「T,演奏前だ。放してやれ。」ボクが言うと、

お前誰だ?って顔でボクを見る。帽子を取り、サングラスを少し下げる。

「何だ?そのふざけた格好は?」と聞いてきた。

「演出。」と答えると

「又、ろくでもない事やるつもりだな。」と忌々しそうにリネを放す。

悔しそうにリネが言う。


「父さんにもぶたれた事ないのに…。」

「ララァさんを独占なんか、させないからな!」

「婚約しているからって、安心するなよ!」

「オレが奪いにいくからナ!」


そのセリフは…。

ボクとTが苦笑する。

そして、Tが応えた。

「やれるモノなら、やってみろ!」


フン!と鼻を鳴らすとリネがステージに戻って行った。

「子ども相手に本気になるなよ。」とTの肩にボクが手を置くと払われた。

Tが、「リネはオマエにそっくりだ!」と捨て台詞を吐くとララァの所へ歩いて行く。

冗談じゃない。ボクはあんな子どもじゃない。

…さて、そろそろショータイムと行くか!


ボクはAちゃんの前に膝まずくと、手を合わし祈りのポーズ。


少しズリ下がったサングラスの隙間から彼女を見上げる。

「Aちゃん!コノろくでなしの気持ちを汲み取って下さい。」


何が始まるの?と息を飲むAちゃん。


「Everybody needs somebody to love!」とボクが叫ぶと

前奏が始まった。


映画「ブルース・ブラザーズ」を気取って、曲に合わせてスイング。

黒スーツのススムくんが合流。ステップを踏む。おっ、ムゥもやって来た。

3人で踊る。

Aちゃんが曲に合わせて揺れる。他の見物人も揺れている。

ララァが歌いだす。


Everybody needs somebody

どんな奴にも “誰か”が必要なんだ

Everybody needs somebody to love (someone to love)

そう、愛する“誰か”が必要なんだ

Sweetheart to miss (sweetheart to miss)

Sugar to kiss (sugar to kiss)

I need you you you

愛しのキミに会えない時は寂しい。

会えたら甘いキスをキミに

そんなキミがボクには必要なんだ。

I need you you you

そう、ボクに必要なのは、キミだ、キミだ、キミなんだ!

I need you you you In the morning

目覚めたら居てくれる、キミが、キミが、キミが!

I need you you you When my soul's on fire

ボクの心に火を点けてくれる、キミが、キミが、キミが!


Sometimes I feel

I feel a little sad inside

When my baby mistreats me

キミにいじめられたら

時には不安になって悲しくなるよ。

I never never never have a place to hide

ボクの隠れ家は、何処にも、本当に何処にも無いんだ!

I need you you you

(だから)ボクにはキミが必要なんだ。

I need you you you

(ずっと)キミが、キミが、キミが!

I need you you you

(愛してる)キミが、キミが、キミが!

I need you you you...

(必要なんだ)キミが、キミが、キミが!


歌のサビ“I need you you you ”を会場の皆が歌う。

気分は高揚し、上昇していく。気持ちがひとつになっていく。

昔、エルサレムで感じた黒く渦巻くココロを思い出した。

似ていて間逆。ヒトの思念の集合はスゴイ。

こんな風にコノまま、どこまでも

行ければイイのに…。


ララァが歌いながら曲に合わせてスイング。スリットの間から脚が見え隠れ。

Tがハラハラして見てる。

ララァが“I need you you you ”のサビでTを指差してウインク。

眉間にシワ寄せてTが真っ赤になってる。

会場中の男どもから歓声が上がる。そのウインクは、お前らにじゃないよ。

ララァ、やるじゃないか。この誘惑にTはどこまで耐えられるかな?


ボクは“I need you you you ”のサビでAちゃんに手を差し出す。

Aちゃんが笑って、手を乗せる。

ボクはその手を握り、引き寄せ抱き締める。

そして、踊ろう。

“I need you you you ”の声はクルクル廻り、上昇していく。

その声に合わせてボクらも踊る。クルクル廻る。

皆が必要な誰かを求めてグルグル捜しまわり、振り回されて目を廻す。

でも最後はこんな風に一緒にクルクル踊るのさ。

そうやって、人も、地球も、宇宙も廻る。

そう、世界を廻すのは愛なのさ。


きっと、ダダが言う。

「若造が、軽々しく“愛”だなんて言うなよ。」ってサ。

でも、外れちゃいないダロ?


…それにしても、3日ぶりのAちゃん。ガマンならん!

ボクは彼女の手を引き、足早に歩き出す。

「曲の途中よ。」と惜しそうにAちゃん。

「もう、充分だよ。それよりさ…。」

ダンスをいきなり止めたボクをススムくんとムゥが追ってきた。

「ナカムラさん、まだ、この後“SMILE”も“ラヴァーズ・コンチェルト”も

他にも、あるんだよ。」とススムくん。

「ボクらは他に用事があってね…。」とボクが誤魔化す。

ムゥが“コイツは…”って顔で見てる。

オマエらも大人になれば、わかるはずだ。…たぶん。

「でも、主催はナカムラさんだよ。いいの?」

「リネに好きにさせてたら知らないよ。」

ムゥが聞いてきた。

「主催がナカムラ?これは、お前達“ココロを読める人類”の意思表明を

 記念しての街頭ライブじゃないのか?」

「ゴンザレス氏が主催じゃないのか?金はどっから出てるんだ。」

ススムくんが答える。

「誰だよ、ゴンザレスって?もちろん、ナカムラさんだよ。

Aちゃんに贈りたい歌があるからララァがサプライズで歌うって事だったのに、

リネに任せたらこんなに大きくなっちゃって…。」

ダダに知れた!まずい!

「お金って何?」Aちゃんがボクを怪しんでる。


曲が終わった。と同時に空気をつんざく音。爆発音、あたりが明るくなる。

花火だ。タイミングいいな…。どこのイベントだ?

ステージのリネがボクに向かって親指立ててドヤ顔。

まさか…。花火は続く。一発、二発、三発…。

一発、いくらなんだ?


「リネーッ!!!!!!」


___________________________________



“ムゥ、ナカムラに伝えろ”

何んて?

“「オマエは一生、働け!」ってオレが言ってるって”

わかった。


___________________________________



フロルが後ろから簡易モニターを覗いてる。

「ナカムラ、元気そうじゃん。」

寂しげに笑う。

「寂しいのか?」

「付き合いは長かったからネ。」

オレはため息をつくと

「今だけさ。チカラが回復したら、また余計な騒ぎを起こすんだ。」

「アイツはそういう奴だ。寂しがったりしたら割りに合わんゾ。」

フロルが笑う。

「ムゥが帰ったら、食事にしよう。」とオレ。

「ウン。わかった。」

フロルがキッチンに戻る。


オレは鼻歌を歌いながらムゥの帰りを待つ。

I need you you you... 。



「Everybody needs somebody to love」はモチロン

映画「ブルース・ブラザーズ」です。

元気がほしい時は引っ張り出して観てます。


アムロの有名すぎるセリフ、リネに言ってもらいました。

ファースト・ガンダムを見ていた頃は素敵な女性達が巻き込まれて

消えていくのが不憫で…

「イセリナが、マチルダが、ミハルが、ハモンが、ララァが、キシリアがー!」

「シャアのバカー!アムロのバカー!ついでにトミノのバカー!」

(すみません。)TVの前で騒いでいたのを思い出します。


「若造が、軽々しく“愛”だなんて言うな!」のダダのセリフは漫画「プラネテス」のロック・スミスのセリフから頂戴しました。アニメ版も大好きでした。

よく原作を消化してイイ作品にしている所に感心してしまいました。


これでお終い。寂しい、寂しいゾ。

自分で作ったウソ話なのに、「もう会えないなんて」と思うと…。

こうやって、続いたナカムラ・シリーズ。

読んでくれた方、長々とお付き合い、ありがとうございました。


また、書きたくなるかも。

ああ、でも年末進行が…。では、皆サマ良いお年を!


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