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今回、かなり偏った“私のイエス”が書かれています。

悪意は無いつもりですが、もし、気を悪くした方がいましたら、スミマセン。

ですので、スルーされる方はどうぞスルーして下さい。

ララァのご先祖の“彼女”が看取った“彼”のハナシ。


10年前に現れた“龍”は発光と小さな太陽風を起こした。

人類のDNAに影響を与え、ススムくん達が生まれた。

古い人類と新しい人類の世代交代がこれから始まるワケだけど、

実は2300年前に同じような事が起こったんだ。

聖書にある“ベツレヘムの星”だよ。中国や韓国にもそれらしい記録がある。

“龍”の仕業かどうかはしらないけど、あまりに遠くて地球への影響は小さかった。

ココロを読める人類は生まれたけど、少数。

皆に恐れられて殺されたり、隠れたりした。

ベツレヘムではココロを読む子どもたちを発見しだい殺していった。

やったのはヘロデ王。34人の子ども達とその子を守る大人たちが殺された。

ボクの友人のダダは「この国は必ず滅ぶ!」と怒っていたよ。

ボクが地球に着いた時には20数年経っていた。


ベツレヘムから逃れた子ども達の中に“彼”はいた。


すでに成長し青年になっていた。

“彼”は新人類として致命的な障害を持っていた。

ココロをガードできなかった。

例えばボクはAちゃんのココロを覗かない。

知りたくない事は山ほどあるもの。

自分のココロを守れなくなる。

“彼”はソレが出来なかった。


周りの人の“怒り”“悲しみ”“妬み”“孤独”が彼を苦しめた。

じっとしていられなくて、病気の人を見舞い、ケンカを仲裁し、

寂しい人の話を聞いてやった。

少しでも救われれば“彼”のココロは軽くなった。

手に負えない病気や死への恐怖に捕らわれて心を閉ざす者もいた。

それでも “彼”は常に寄り添い、一緒に涙を流した。

中にはそれだけで具合が良くなる者も現れた。


人はそれを奇跡と呼んだ。


ボクは“彼”にこんな事いつまでも続かない。君が壊れてしまう。

同じ仲間のいる地がどこかにあるはずだ。そこへ行こうと誘った。

でも“彼”はあの人たちを捨てて行けないと断った。

ボクもこの石頭をほっておけなくて行動を共にした。

人々が“彼”のウワサを聞きつけてやってきた。

病気を治してほしいと言う者、教えを請うもの、様々な人が集まってきたけど

皆、 “彼”から何かを得ようとする者達だった。


その中に只ひとり、“彼”を案じてやってきた女性がいた。

ララァ、キミのご先祖だよ。

“彼”は“彼女”を見て、スグに仲間だと知った。ボクも判った。

でも、“彼”の周りの男達は“彼女”が“彼”を誘惑しようとしている。

汚らわしいと “彼女”を嫌った。

ボクは怒った、

「お前らの嫉妬こそが汚らわしいダロ」と。

「“彼女”は “彼”を案じているだけだ。

もし、お前達の恐れている関係になったとしても

それのどこが汚らわしいんだ!」と。

それからボクは自称「弟子」達から仲間はずれにされた。

ボクは“彼”に「彼女と一緒に遠い地へ逃げろ。」と言った。

“彼”は首を横に振り、

「彼女に危害が及ばないように私に近づけるな。帰ってもらえ。」とボクに言った。

ボクはその言葉を“彼女”に伝えた。

“彼女”は帰らなかった。


しばらくして“彼”は旅支度を始めた。

“彼女”と逃げるつもりになったのかと思えば彼はエルサレムへ行くと言い出した。

エルサレムには人を救うはずの司祭がいるのに何故、彼は何もしてくれないのか?

救いを求める人はこんなにいるのに。私はそれを尋ねたいと彼が言った。

“彼”の後を勝手に皆がついて来た。道中、日を追うごとに付き従う人が増えていく。“彼”への期待は膨れ上がり、やがて“彼”がエルサレムに自分たちの王国を建てるのだ。そこでは全ての苦しみから解放されると皆が勝手に言うようになった。

嫌な予感がした。

列の最後尾にいつも“彼女”はいた。

“彼女”に危害がおよばないようボクは彼女といた。

他に仲間はいるのか聞いてみた。彼女は首を横にふった。


エルサレムで“彼”は神が寄進する者しか救わない事を知った。

司祭は不治の病にいる者はその生まれが汚れているからと言った。

“彼”は激怒した。

「天国の門は狭い。どんなに私腹を肥やしても、持ってはいけない。」と司祭に言った。

彼は神に仕える司祭を冒涜したと訴えられた。

それでも冒涜しただけだ、鞭打たれる位だとボクは思っていた。

ローマ総督の兵に引っ立てられた。

それを見た“彼”に付いて来た者達は失望した。

やがてソレは“彼”への憎しみへと変わっていった。

ローマ総督の屋敷へ大挙してきた彼らは“彼”の死罪を要求してきた。

ローマの法で裁けば死罪は重過ぎる。

しかし、この大挙してきた民衆の憎しみの矛先が自分に向けられる事を怖れた総督は

「ローマの法では無罪である。」

「それが不満ならお前達で裁け。それに準じよう。」と言った。

ボクは“彼”のココロに呼びかけた

“今、そっちへ行くから一緒に逃げよう”と

“だめだ、ボクが死罪にならないと彼らの憎しみは別へ向けられる”

“彼”はそういうと自ら群集の中へ入っていった。


街中を引き回された挙句、他の罪人と共に十字架に掛けられた。


“彼”の苦しみを分かち合おうと“彼女”はココロのガードを外していた。

顔が真っ青だ。そんな事を“彼”は望んでないと止めさせようとしたが

彼女は止めなかった。


試しにボクも外してみた。耐えられない、

憎しみと怒りが渦巻き心を押さえつけてくる。

そして、この醜さはどうだ。

“彼”がどうやって正気を保っていられるのか信じられなかった。


“彼”が街中を引き回されてから、たまり始めたボクの怒りは爆発しそうだ。

ふと、このまま大地が裂けてこの愚かな奴らをすべて飲み込んでしまえばイイ。

と思ったと同時に地震が起こり、大地が割れ人々を飲み込んだ。

ボクはいい気味だと冷ややかにソレを見ていた。


“彼女”の泣き声で我に帰った。

十字架の彼はボクを悲しそうに見ていた。

ボクは後悔したが、遅かった。

ボクは何の関係もない人や子どもまで巻き込んでいた。

怒りに負かせてやってしまったボクと彼らに違いは無かった。

自分に嫌悪する間はなかった。

人々が逃げ出したので、“彼女”は“彼”のもとへ走り寄った。

ボクも後を追った。


両手首、両足を貫く釘。

刑場に行く前に棒で打ち据えられた背中の傷は皮膚を裂き肉が見えていた。

体重を支えられなくなった両肩はハズレ引き伸ばされた胸筋は肺を圧迫し、

呼吸しづらくしていた。肺機能は低下し肺に水が貯まりはじめていた。

そして、脇の刺し傷は致命傷に至っていなかった。

“彼”は力なく目を開け、“彼女”とボクを見ると目を閉じた。

ひと目見て、死んではいないが、助からない。と知った。


ボクと“彼女”は十字架から“彼”を降ろし、刑場近くの石洞へ運んだ。


それから3日間、身体の動かぬ“彼”と“彼女”はココロで会話をしていた。

ボクは石洞の外で“彼”と“彼女”のジャマが入らぬよう守っていた。


どこで聞きつけたのか、自称“弟子”の何人かが訪れた。

ボクは何を今さら!と追い返そうとしたが、

その度に“彼女”が外に現れ彼らを中に招いた。


中に入り、呼吸をしている“彼“の姿を見ると涙を流し許しを請うた。

“彼女”は彼らに言った。

「“彼”は自分が救われる為にアナタ方に話し掛け、側にいた。

刑に処せられたのも自分で決めた事。あなた方を責めてはいない。」

「どうか、自由になってほしい。」と言ってると。

良心の呵責に苛まれ、皆が逃げるように石洞を後にした。


やがて、“彼”の意識が無くなる時間が長くなり、穏やかに死んでいった。

眉間のシワはいつしか無くなっていた。微笑んでさえいるような死顔だった。


“彼”の死後、ボクは“彼女”に故郷まで送ろうか?と尋ねた。

“彼女”が言った。

「“彼”は

“ナカムラは、私の事を心配して仲間たちが何処かにいると

私をいつも誘ってくれた。

けれど、私は彼の言う事を聞かなかった。

だからナカムラに謝りたい。

できれば、君はそんな場所で幸せになってほしい。

笑っていてほしい。”と言っていました。」

「“あの真っ暗なココロの渦の中で自分を見失わなかったのは

キミのお陰だ。ありがとう。”と言ってくれました。」

彼女の目から涙がこぼれた。

「ですから、ナカムラさん。私を仲間達の下へ連れて行って下さい。」

と彼女が微笑んだ。

ボクは下を向いてウンウンと頷いた。

_____________________________


ララァに話していて昔を思い出すと、

涙と鼻水が止まらなくなりティッシュの箱を抱えていた。

彼女もハンカチを鼻と口に当て泣いていた。

ボクにとっては7ヶ月前の話。ララァ達にとっては2300年前の話だ。

やがて、ララァが聞いた。

「その“彼”と言うのは…」

ボクはすかさず言った。

「あの有名な人ではないよ。

だってあの本に書かれている事と“彼”の話は違っているもの。」

「“彼女”の子孫であるキミたちとボクが知っていればイイ話さ。

 ゴタゴタはゴメンだよ。」

とボクがララァに笑いかける。

「“彼”は自分の事より人の事ばかり考えている、石頭の不器用な男サ。」

「Tに似ているかも。」とボクが言うと

“もう”って顔でララァが笑った。

やがて迎えに来たTが店に入って来た。

二人で顔を見合わせて笑うと、

不機嫌そうな顔をしてボクらを睨んだ。


ララァもそうだけどゴンザレス氏もその時の子孫なのだろう。

他にもいるかもしれない。


佐藤史生の「夢見る惑星」に泣き喚く竜の子をなだめる為に目の見えない感応者が石山を登り足を踏み外し落ちて死ぬ。というエピソードがあります。

自分の命を顧みる事をさせないほど竜の子の叫びが彼のココロを苛んだという事なのですが、もしかしてイエスという人がそうであったなら…という私の妄想です。気を悪くした人がいたらスミマセン。

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