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(3)

彼の小さな気を追いかけ暗い空間へ。

気がつくと懐かしい部屋。

目の前のベッドにススムくんらしき少年が寝ている。

マズイ!不法侵入で騒がれる!意識をロビーへ…。


マンションのロビー。

イシカワ家のHOSのセンサーへ手をかざす。

「ナカムラといいます。イシカワさんに会いに来ました。」

(小さくなったな。)

「ナカムラ様ですね?しばらく、お待ち下さい。」

(言葉が流暢だ。男性音声なのがちょっと…。)


「ナカムラ!」声は後ろから…。エッ?

振り返るとイシカワさん。別れた時のまま、そこに立ってる。

勤めの帰りに出くわした?

髪に白いモノが。少し年取ったかな?

イシカワさんが抱きついてきた。やめて下さいよ。

オジサンに抱きつかれても嬉しくナイ…って羽交い締めにされてる!


「よーし、もう逃がさないからな。」イシカワさんが言う。

「旦那様、通報致しましょうか?」

壁からスタンガンを持つHOSのロボットアームが出て来る。

「そうだな…。どうするナカムラ?」イシカワさんが笑う。



「ナカムラくん?驚いたわ。…十年になるかしら?」

「変わらないのね。」

ミセス・イシカワ、少しふくよかになったけどキレイだ。

そして、相変わらず鋭そう。

“変わらないのね”にボクへの不信感が見えかくれしますよ。

“まるで幽霊のよう”昔アナタがボクを見抜いたように。


あれから、十年になるんだ。


「なッ、いつか帰って来ると思ってたンだ。」

バンバンとボクの肩を叩くイシカワさん。

「逃げも隠れもしませんから、放して下さいよ。」

イシカワさんが掴んでいたボクの腕を放した。

「もう、逃げるなよ」と笑う。なんか、すまない気分。


ボクら大人3人を少し離れたトコロからびっくりしたように見てる女の子。

年は5、6才?ダダのところの双児と同じぐらいかナ。

「リン、おいで。ナカムラさんだよ、あいさつして。」

イシカワさんが女の子を呼ぶ。

女の子が駆け寄ってきてイシカワさんの後ろに隠れるようにコチラを覗いてくる。

ボクは屈んでリンちゃんを見る。

ススムくんの妹かァ。

クセのない髪と広いヒタイはお母さんに似てるかな、よく動く丸い目はお父さんだね。

「こんにちは、お父さんの子分のナカムラっていうんだ。よろしくネ。リンちゃん。」

笑いかけるとニコっと笑い返す。

「こんにちは、ナカムラさん」

そうそう、女の子はこうでなくちゃ。

しかも“さん”までついてる。どこかの双子とは違うね。

小さな手にハイタッチ。

…ススムくんほどではないけど、明らかに彼女もチカラを持ってる。


「ススムくんは?」

ボクが尋ねると、2人の表情が曇った。

間があってイシカワさんが答えた。

「寝てるんだ。ずっとじゃないけど。食事とトイレだけ起きてきてアトはずっと寝てる。」

「具合が悪いのか?と聞くと“ナカムラさんを捜してる”と“病院には行かない“と答える。」

「“お母さんが心配している”と言うと悲しそうに“ごめんなさい。でも、捜させて”と寝てしまうんだ。」


「そんな状態が今日で1週間になる。」

「あの子は小さい時から、覚えてもいないはずのオマエの事を聞きたがった。

 ナカムラ、何か知っているのか?」


そうか、ボクを捜してたんだね。皆にも心配かけさせてしまった。

「ススムくんに会わせてもらえませんか?」

イシカワさんがミセス・イシカワを見る。

彼女は横を向いてボクを見ない。

「お願いします。」ミセス・イシカワが目をふせ“しかたないわネ”というふうに

「こっちよ。」と案内してくれた。


さきほどの部屋、ベッドにススムくんが寝ている。

10才か…。大きくなったね。

そこのバルコニーから二人で“場所”へ行ったのは、この間の事みたいなのに。

「ススムくん、起きて。ナカムラだよ。キミのお陰で来れたよ。」

彼の目がパチッと開いてボクを見る。

「よかったァ、目を覚ましたらナカムラさんがいないから、失敗したと思って、もう一度…」

そこまで言いかけて泣き出した。

「ごめんね。イロイロあってね。」

答えにならない言葉を掛け彼にあやまる。

ミセス・イシカワがボクを押しのけススムくんをハグする。

ボクはイシカワさんに

「もう大丈夫です。彼はボクを連れて来てくれましたから。」

表情に“納得できない”が出てる。


「オマエが隠している事がススムに関係している事なら親としては知る権利があるはずだ。

 オマエはそれでも、打ち明けてはくれないのか?」


どうしよう?正体を知られて面倒くさい事になるのはイヤだ。

でも、ススムくんが助けてほしい事がチカラに関する事なら…避けれない。

「ススムくん、ボクに助けて欲しい事はキミやボクが使うチカラの事なの?」

彼はしゃくりあげながらウナズク。


ダダの声が頭に入ってきた。

「イシカワさんの要求は真っ当だ。同じ親として同感だな。

 チャンネルは繋がってないし、委員会にばれなきゃイイんじゃないの?」

「オマエの“ルール破り”は今に始まったワケじゃないし…。」

皮肉か?


「奥様、お茶の仕度が整いました。」HOSの声。

「ナカムラ様、先程は失礼いたしました。無礼の程、お許しください。」

「気にしてないから…。」

HOSの人工知能は進歩してる。

十年はすごいや。


イシカワ夫妻にボクが地球の人間ではなく、ある星から意識のみで地球を覗きに来ている事。

そしてソレが商売である事。決して悪意は持っていないむしろ皆が大好きだという事。

11年前の龍の起こした太陽風の影響でボクと同じチカラを持つ者が生まれてる事。

ススムくんもリンちゃんもそうだという事を一気に話した。


信じてくれるかな?


「ボクはススムくんがこれから増えていく仲間たちの先生に

 なってもらう為に“場所”に連れていきました。」

「彼はそのあと“場所”で例の“龍“に出会ったようです。」

「そして、彼は龍の力を借りてボクを探しに来てくれました。

 彼がボクに何を助けてほしいのかは、まだ聞いてません。」


ススムくんはまた寝てしまった。疲れたのだろう。

“龍”のチカラを借りたとはいえ、大変だったハズだ。


「じゃぁ、この身体は何なんだ?」イシカワさんが聞いてくる。

昔、あなたのご先祖が同じセリフ言ってました。思い出してクスッと笑う。

いったん消えて見せて、再び現れる。

「地球人のフリをするには必要なので…。」

「イメージを相手にぶつけて錯覚させるカンジです。」

「チカラのかけ方にもよりますが、

 ボクの場合は半径20m内であれば見えてるハズです。」

「イメージに自分の身体を同調させる事で圧も感じます。相手にも反発します。

 ですから捕まりもしますし、痛みも感じます。」

「イチイチ、そんな細かい事を意識して出来てるワケではありません。

 すべては“こうしたい”と思えばできちゃうんで本当の身体と大差はないです。

 今説明した事も学者の後付です。」


説明してる間、イシカワさんはボクの身体をいじってる。

顔そんなに伸ばさないで下さい。痛いですってば!

真似て、リンちゃんまで…。


ミセス・イシカワがリンちゃんをボクから引き離す。

ボクを気遣ってくれたのかな?

…違う。警戒してるのかな?相変わらず考えが読めない。


ボクの説明は続く。

このチカラはボクの星では皆が当たり前に持ってる力です。

その中でも強いチカラとコントロールを持った者を“能力者”と呼んでいます。

“能力者”の事は追々説明しますが、皆が持ってるチカラにおいて重要なのは“感応力”です。

“場所”ですべてのヒトがつながってるという意識です。安心感です。孤独を感じる事はありません。

そして、考えを誤解なく相手に伝え、受け取れるのです。

このチカラは地球の人類にとって文明を大きくシフトさせます。

彼らは大事な最初の世代になるはずです。


ミセス・イシカワが言う。

「この子たち、いつもニコニコして夜泣きとかなくて…。

 そんなものだと思っていたけど、そいうい事なの?」

ボクがうなづく。

「それもありますが、あなた方の愛情をちゃんと受け止めてるからです。」

「そして、その愛情に応えようとしてます。心当たりあるでしょ?」

ミセス・イシカワがタメイキをつく。ニコッと笑って。

「この子達が私のカワイイ子ども達である事に変わりがないように、

 アナタも以前のナカムラ君と変わりナイと思ってイイのね?幽霊さん。」

ボクはホッとして「ありがとうございます。」と返事する。


「でも、困ったわね」

エッ?まだ何か?

「Aちゃん、まだ一人でアナタの事待ってるのよ。でも、アナタ幽霊さんだし…。」

Aちゃんが一人でいる?Tは?あのバカはどうしたんだ!

ボクの考えを読んだように彼女が続ける。

「Tくんね、アノ後すぐ2年の研修が決まって彼女さそったんだけど振られて、

 帰ってからも何度かアタックしてもダメで、あきらめたみたいよ。」

「もったいナイわよねー。顔もルックスもいいし、お仕事もできるし、優しいし、

 どっかの幽霊さんより絶対イイのに。」

チラッとボクを見る。言い返せないのが悔しい。

小さなカードをボクに渡しながら

「彼女、お金貯めて小さな輸入雑貨のお店やってるの。覗いてくれば?」

「そりゃイイ。お前、金持ってるか?これで花でも買っていけ!」

イシカワさんが札を3枚ボクのポケットに突っ込む。

そしてボクを玄関へ押し出した。

「ススムは寝てるし、ヒマだろ?行ってこいよ。

泊まる所ないなら、ススムの部屋で泊まればイイ。…消えるなよ。」

「HOS、今日からナカムラは客だから。頼むよ。」

「承知いたしました。旦那様。」


マンションのロビーで呆然とするボク。

Aちゃんとは会わないって…。でも、待ってるって…。

どうする?ボク?



今回、こじつけ多くてスミマセン。

次回ナカムラ踊ってもらいます。ヒヒヒ…。

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