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(2)

屋根裏のダダの書斎。扉はカギ付。

当然だ、あのフロルに子ども達だ。何をやらかすか判ったもんじゃない。

天窓にレトロな天体望遠鏡。意外とロマンチスト?


モニターに宇宙空間を漂う人工衛星の残骸のような物が映っている。

「見せたい物ってコレ?コレが何か?」

間をおいて、ダダがしゃべり始める。

「コイツは最近見つかった宇宙ゴミだ。

 それで、こいつが話題になったのは見つかった場所がこの星から12000万km離れた深宇宙だから、

 なんだが…」

「アァ、聞いた事ある。そんな遠い所まで宇宙ゴミが広がってるのかって、

 TVのワイドショーで言ってた。」

「そうだ、アレはこの星の人工衛星だと思われてる。

 ナカムラ、何か似たモノ見た覚えないか?」

「似てるもなにも、あんなに壊れてもとの形もナイんだろう?」


モニターの画像が切り替わる。

宇宙ゴミのアンテナのような部品の根元へカメラが寄っていく。

小さなノートほどの金属板。ヒト形の生物の絵。見た事ある。地球で…。

まさか、この残骸がパイオニア10号!


驚いた!ダダを見る。“そうだ”という風にうなづく。


じゃぁ、地球はボクらの星と同じ宇宙に存在してるって事?

じゃぁ、今までヒトの血液の中の宇宙へ覗きに行ってたのは何だったの?


「オレは専門じゃないし、推測でしか言えないけど…。」

「あの血液の中の宇宙というのは“覗き窓”のようなモノじゃないかと思ってる」

「細胞の中に実際には宇宙は存在しない。

 遠くにある天体を見せてくれる“窓”のようなモノだとしたら。」

「宇宙が膨張して光の速さで星が遠ざかっているとしたら

 あの“窓”の中が恐ろしい速さで時間が過ぎて行くのも納得できる。

 見える“ウラシマ効果”だよ。」


ダダの考えはこうだ。


あのパイオニア10号は地球を離れて目的のアルデバランを通り過ぎ彷徨ってる。

恐らく少なくとも地球からは200万光年の彼方だ。

今オレ達があの機体を見てる現在、地球は無い。恐らく太陽系さえも様変わりしてるだろう。

逆を考えれば、あの機体が地球を離れた頃、オレらの星系はどうだったろう。

生命の発生すらなかったかもしれない。


オレ達が宇宙へ出てゆくようになって、知的生命体に出会えなかったのは

そういう事なんじゃないか?

それでもオレ達は“誰か”を捜しつづけた。

そして見つけたのは宇宙ではなく自らの身体の中に“窓”を見つけた。

人類全体の希求がそういう形で現れた。

この世界の中で自分達と相なす“誰か”を求める強い想いが時間も空間も越えた。

“接触”は出来なくてもこの世界で一人ぼっちではなかった“確認”が出来た。

そんな風に考えるんだ。


恐らくオレの考えは地球への新しい“窓”が発見されれば立証されるだろう。


オレの本業は医者だから時々思う事がある。

何故、身体の毛細血管と葉の葉脈は似ているのだろう?

宇宙地図はシャボンの泡を思い出させ、肺の肺胞にも似ている。

血液の顕微鏡写真は銀河宇宙に似ていなくもない。

何故、自然や宇宙のような広大な事象がこの小さな身体の中で見つかるのだろう。ってね。


タメイキの出るような話だ。

「ダダは金儲けの事しか考えてないと思ってたよ。」

ダダが睨んでる。


「それじゃ、地球への新しい“窓”が見つかればススムくんの所へ行けるのか?」

「いや、ススムくんにリードしてもらえば行けるんじゃないか?」

「オマエ自身もそんな気がするんだろう?」


「前から思ってたんだが能力者がアノ世界へ行く時に場所の特定が必要というが、

 結局は“確認”する事でそこへ行く“意思”を強く持てるという事じゃないのか?」


そう、言われればソンナ気もする。…という事はソノ場所ソノ時間を強く意識すれば

ボクは“窓”を使わずとも自由に地球へ、Aちゃんの所へ行けるという事か?

オレはダダを見る。


「まだ“…だろう”の話だからね。無茶はよせ。身体に帰ってこれなくなる危険はあるんだ…。」


「パイオニア10号の件、委員会に報告するのか?」ダダに聞く。

「冗談!只でさえ “龍”を恐れてるのに同じ宇宙に存在すると知ったらどうなる?」とダダ。

「じゃあ、ガードはいよいよ外せないな。」

「よし、明日行く準備を整えてムゥと待機だ。

 ムゥがススムくんが来たのを教えてくれるはずだ。」

時計を見ると日付が変わりそうだ。帰らなくちゃ。


階下のリビングでフロルがうたた寝してる。

起こさないように静かに家を出ようとしたのだが、起こしてしまった。


目をこすりながらフロルが言う。

「帰るのか?遅いぞ。泊まっていけよ。」

「ウチのベッドは広いからオマエとダダとワタシの3人で眠れるゾ。」

冗談を言ってるのか?

苦笑しながら、「遠慮しとくよ。」と答える。

「じゃぁ、コレ。明日の朝ゴハンだ。」

スープの入った密閉容器。サラダとパンとハムを袋にいれて差し出す。

「ありがとう」イイ所もあるんだが…。どっか変な人。


別れ際にふざけて「フロル。お休みのキスは?」とダダに聞こえるように言う。

すぐに、ダダが飛んできて「人の女房に手を出すな!」と怒鳴られた。


笑いながら退散!


帰る道すがら、Aちゃんの事を考えてた。

もしも地球に行けても、Aちゃんに会ってはいけない。

彼女の幸せを祈って身をひいたんだ。

今さら…。


高層マンションの最上階、事務所兼自宅。

アチコチにAちゃんポスター並びにグッズ。

切ないなー。


「オハヨウ、おじさん。」ムゥに起こされた。

「おはよう。ムゥ。“おじさん”じゃなくて“お兄さん”だ。」

ダダが準備を始めてる。

「朝食もまだだゾ。早くないか?」

「ムゥがススムくんが来てるって言うから急いで来たんだ。」


ススムくんが来てる!

ボクはガードを外す。

「ナカムラさん、ボクがリードするから今から来れる?龍さんの力を借りてるんだけど、

 それでも、ソコに長くはいられないんだ。」

そうか、子どもながらボク並みの働きをすると驚いていたが、龍のお陰か。

「わかった、急いで準備してキミにリードしてもらうから少し待ってて。」


ベッドに横になったボクに栄養とクスリを入れるためのカテーテルを射しながら

ダダがボクに忠告する。“ムリはするな”と。

脳波を計測するためのセンサーを取り付け、

ボクの視覚を電気信号に変える機械のチェックをしている。

テストは成功。準備は整った。

ダダがボクに言う。

“今回はチャンネルには接続しない”と

“思いっきりやってこい”と、どういう意味だ。


目を閉じボクはススムくんを呼ぶ。

「準備できたよ。連れて行って。」

「はい。」



昔、カールセーガンの「コスモス」をTVでやってて、知的生命体同士のコンタクトがいかに希少な事かというのをやってて、今回はその話がもとネタです。


…とか言ってますが、本音はナカムラに地球でヒト踊りさせたい為だけのこじ付けです。お許しを!

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