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足早にアパートへの道を歩くAちゃん。

ボクはこれから言わなきゃイケナイ事を考えると足取り重くAちゃんの後を歩く。

あっ、微かに懐かしい香り。フルールだ。

「Aちゃん“フルール”の香りがする。」

Aちゃんが振り返り微笑む。

「気が付いた?復刻販売してたから買って付けてみたけど若すぎるかしら。」

と照れてる。

「イヤ、昔みたいで懐かしい…。」

「最近のAちゃん香水付けてなかったのに、なんで?」

「“フルール”は初任給で初めて買ったモノなの。だから、懐かしくて…。でも最初のビンを使い切ってからは香水なんて高いから買った事なかったの。お店始めてからはコーヒーやお菓子を扱うようになったから余計にネ。」

「ボクがその香りを好きなの知ってた?」

「そうなの?」

そう、キミの香りが好きだったんだ。

あの頃は、好きなのに言えなくて切なくて。でも笑顔見たさにふざけて笑わせて…。

いろんな事を思い出させてくれるネ。

ボクがいなくてもTと幸せにしてるだろうと思ったのに1人でいたAちゃん。

ボクを待ってたとは思えないけど。この10年間、幸せだった?

「楽しかったわヨ。正直辛い時もあったけど、過ぎたらタダの思い出だもの。」

軽々と言うンだね。強くなったンだね。

コレからボクが言う事もそうやって受け止めてくれるかな?


____________________________________________



「ごめんネ、冷凍モノで。」

「ボクはどうせ食べないし。気にしないで。」と日本茶をすする。

レンジでチンしたグラタンとトーストを食べてるAちゃん。作ったモノはレタスとキュウリとトマトのサラダだけ。朝はコーヒーとシリアル。昼はバターフィンガーやスニッカーズなどのお菓子。リンゴはよく食べてる。健康的とは言えない食生活。料理をすれば片付けが面倒になるのはわかるけど…。

ボクが3食ちゃんと作ってあげる。弁当も。…でもイツまで?

デザートのリンゴも食べ終え、日本茶を入れ直してくれた。

「本当に何も食べないの?」

「昼食が遅くてね。お腹空いてない。」

「どこか具合でも悪いんじゃない?」

「食べなくてイイんだ…。」

「?」変な返事に不思議そうなAちゃん。

「10年前にボクが目の前から消えたのは、手品だと思ってた?」

「あんな格好してたし、イシカワさんもそう言ってたし…。」

「ボクには体がないんだ。こんなカンジ。」

Aちゃんの目の前で消えて見せる。

Aちゃんが立ち上がる。ボクを目で探す。「ナカムラさん?」

うろたえてボクを探す。「ナカムラさん!」声が大きくなる。

どうしたの?そんなに驚いて?(普通か?)

ボクが姿を現すと抱きついて来た。強く抱き締めてくる。痛いよ、サバ折り?

彼女の思い出した事が流れ込んで来る。10年前ボクが目の前から消えた後、しばらくはイシカワさん達やTに心配かけまいと平気なフリして夜ひとりで泣いてたんだネ。

君がTの部屋を出たなんて思いもしなかった。てっきり、ボクがいなくなればTと一緒になると思ってたから。

「ゴメン、Aちゃん。」ボクはあの後の事なんて考えもしなかった。

あやまって抱き締める事しかできない。

これから話す事で彼女がボクから離れるのが恐くて抱き締めたまま自分が地球の人間でナイ事。他の星から意識だけで来てる事。体験した事をチャンネルに流す事で商売している事。皆の事が好きだという事。そして、チカラが弱くなって身体に戻らなければボクのココロも溶けて消えてしまう事を説明した。

Aちゃんはボクから逃げようとしない。じっとしてる。

「ボクの事、怖くナイ?」

「私たちの事、好きなんでしょ?捕まえてバラバラにしたり、食べたりしないんでしょ?」

Aちゃんが茶化して聞いてくる。

「そんな事しないよ。マンガじゃあるまいし。」とボクが笑う。

「でも、帰らなくちゃ。ナカムラさん消えちゃうわ。」

「大丈夫、帰らない。龍がなんとかしてくれる。」

「プロポーズしたのにコンナでゴメン。」

「前も言ったでしょ。今いてくれたらイイって。」Aちゃんが笑う。


____________________________________________



次の日の昼過ぎ、「天通」から電話がかかってきた。

ララァの歌は3日後にラジオ・TVの広告のBGMとして使われるとの事だった。

帰りにイシカワさんのマンションに寄ってススムくんに会いララァの歌の入ったメモリを渡し、君の友達とネットを使ってララァの歌を広げてくれと言った。君たちの呼びかけも続けてと。

さて、ココロを閉じた仲間たちが救いを求めてきた時の策が必要だ。

国内や社会基盤の出来た国ならススムくん達が互いにリレーしあって受け入れてくれる国の施設や支援グループを探せるはずだ。後はそちらにまかせよう。

問題はそうでない国。逃げ出しても連れ戻されればもっと酷い目に会う。

だから彼らは逃げない。確実に彼らを救い出せなければ意味がない。

国の海外支援策。国連の平和維持部隊…。

内閣調査室のO。…彼は使えないだろうか?

リビングにいるイシカワさんに

「Oさんの連絡先って知ってます?」

「用があれば、警察庁を通して連絡してくれと言ってたが?」

直接の連絡先は教えてくれなかったか…。

「明日、休んでいいですか?」と聞く。

「別にかまわんが…。」

“お前、何をたくらんでる”って顔でイシカワさんがボクを見る。


ススムくんの部屋からゴンにお願いした。

“内閣調査室のOという人物の情報が欲しい。どんな事でもいいから。“ と

“何?おもしろそうな事?ハッキングはイケナイ事なんだよ。” ゴンがからかう。

“ボクらの未来の為の汚れ役、やってくれない?” ボクも茶化して返事する。

“では「ボクらの未来の為に」。悪事を働く時は大義名分が必要だからね。” と笑う。

この子はススムくんと同い年と思ったが…。

“ちょっと、待ってて。”

しばらくしてゴンから返事が返ってきた。

“経歴、現住所、職場の住所、電話番号、その他はそっちのパソコンに送ったよ。”

“それから彼は総理大臣の直通電話の番号を知ってるよ”

“日に2.3回は電話の応対があるね。”

“それと、カードの支払い履歴から毎週金曜日に通ってるBarがあるね。”

店の名前は?

“官邸近くの「トリスタン」って店。”

“ありがとう、ゴン。”

“you’re welcome “


Barで酔わせて頭の中を覗くというのはどうだろう?

ちょうど、明日は金曜日。

しかし、あのOの警戒心を解くには…。

アホと若い女の子かな?

女の子は…ララァしかいないな、もう一人ぐらい欲しいな…。


____________________________________________



閉店したAちゃんの店の前。


Aちゃんのアパートで着替えてるララァとリネを待つ。

リネにララァの着る服をまかしたがちょっと心配。

昨夜、電話でリネにアルバイトをたのんだ。


「ある男を酔わせてちょっと聞き出したい事がある。」

「それで、ララァを使いたい。君はボディガード出来る?」

「命にかえても!」(よくそんなセリフ言えるな。)

「じゃあ、明日。ララァのバイトが終わったら店に来て。」

電話を切ろうとすると

「ナカムラさん。」とリネくん。

「何?」

「ララァさんがその男の人を“誘惑する”と言う事ですよね?」

(何?ボクを責めてるの。)

「その時の服。オレにまかせてもらえません?」

「姉のステージ衣装とかありますし…。」

「…いいよ。」(ちょっと、不安。)


向こうから、黒っぽいのと白っぽいのがやって来る。そしてAちゃん?

黒っぽいのがララァだね。黒のハイネックにノースリーブのシャツに小さなめの黒のベスト。そして黒の長手袋。下は黒のホットパンツに黒のハイブーツ。ヒール高いな。足、大丈夫?髪はアップにして前髪はワンサイド。クセが強いからキレイなウェーブがついて色っぽいね。お化粧はAちゃんがしてくれたのかな?

フム。以外と肌の露出は少ないけど細い肩と腕、そして太ももを出してくるとは15歳の選択とは思えないネ。いや、タダのステージ衣装か。肌が白いとエロっぽいけど彼女は褐色だからイヤらしく見えないし…。

そして、キミは誰?

シフォン風のフワフワしたミニのワンピースドレス。ウエスト高めで胸を強調しつつもカワイイ感じ。おとなしげに見えて胸元の浅いVラインとか肩の鎖骨のあたりがみえる広い襟ぐりとかが誘う感じ。歩く度にゆれるふわふわした生地からのぞく生足…じゃないな残念。白い中ヒールのサンダル。正真正銘デート用の勝負服だよね。足は大きめ、チョット筋肉質の細い足首、スポーツしてる娘かな?

服と似たようなふわふわした栗色の髪。顔はカワイイけど…リネじゃないか!

もう少しでだまされる所だった。女性対応モードになる所だった。


「カワイイでしょ?びっくりしちゃった。」とAちゃん。

「カワイイでしょ?ナカムラさん。」

リネがスカートのすそをちょっと上げてお姫様風に会釈。オエッ。

「なんで、お前まで!」

「だって、彼女に危ない事させられないでしょ?」

「正直なところ、彼女よりオレのほうが男受けしません?」

確かに真っ黒な彼女よりは、お前の方が安心感あるよな。

「お前…身を呈してララァを守ると?」

リネがドヤ顔でうなずく。

「わかった。ララァは帰そう。」

リネがボクを制して首を横に振る。

「彼女が街中で恥ずかしがる姿がみたいんです。」

何で、彼女が恥ずかしがるんだ?珍しくもナイだろ。

彼女を改めて見る。中のシャツ。ベストから見え隠れする黒いシャツ。

身体にピッタリ張り付いて殆どハダカと変わらない。

「お前、彼女の身体のラインが見たくて…」

リネが親指立ててドヤ顔。思わずヤツの頭を叩く。

「やめてよ。通報されるわよ。」とAちゃん。

たしかに遠めには腕を制する若い女の子の頭を叩く非道な男の図が頭に浮かぶ。


こんなララァをTに見られたら…。殺される。


「チョット可哀相だけど舞台衣装だって言うから…。でもベストがあるから大丈夫よね。」

「学祭の撮影、頑張ってネ。」

Aちゃんが言う。そういう事にしたのね、リネ。ボクもララァにちゃんと説明してない。

「そうだったんだ。」とララァ。2人揃って納得するんだ。

どうしよう。

恥ずかしそうに人の視線を気にする、ララァを見る。

(なかなかのプロポーション。Tが羨ましい。)

(イヤ…Aちゃんがダメってワケじゃなくて…。)


なんか、リネの気持ちも判らなくもない。(変態か?)


とりあえず、行ってみよー!

ボクはタクシーを呼ぶ。


硬い話にしようとするとすぐ脱線。

スミマセン。軟弱者で。

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