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そうだ、ボクには時間がない。

龍がうまい具合にボクの身体を転送できればイイけど、出来なければ…。

このまま消えちゃう。

1秒でも長く彼女の顔が見たい。1秒でも長く彼女の声が聞きたい。

1秒でも長く彼女に触れていたい。彼女と…。


「オイ、ナカムラ。道がちがうゾ、何処行くんだ。」…と言いながら、

“向かう所はきっとアソコだ”とイシカワは確信していた。

「…3分で戻って来いよ。」

「イエス、サー!」とナカムラ。

センターの黒クラウンはAちゃんの店の前で止まった。(やっぱり…。)


カウベルを鳴らしてボクは店のドアを開ける。

Aちゃんは「いらっしゃい…」と振り返りボクを見ると “何しに来たの”って顔でにらむ。

ララァはまだ来てない。

「プロポーズ以外はお断りよ。」ってAちゃんが言う。

こんな所でこんな風にプロポーズされても嬉しくないでしょう?

黙っていると「用がナイなら帰ってちょうだい。」

ボクの腕を掴んでいつものように外へ追い出そうとする。

ボクはその手をつかんで引き寄せ抱きしめキスをする。

「今夜、キミの部屋に行くから待っていて。」

「それとバターフィンガーは太るよ。」

彼女は顔を赤くしてヒザでボクの急所を蹴ってきた!

「大きなお世話よ!」

幽霊でも痛いのは痛い!ボクはピョンピョン飛びはねながら車に戻る。

店内の様子を車から見ていたイシカワさんから

「このバカッ!」って怒鳴られた。


ナカムラさん?どうしたんだろう飛び跳ねて車に乗ってく。

店内ではAさんがボーッとしてる。

「Aさん?どうかしたんですか?」と聞く。

ハッと我に帰って「ララァ、ちょっと出かけてくるから後おねがい。」って

出て行ってしまった。

どうしたの?みんな?

_________________________


局長室でまだ、イシカワさんが怒ってる。

「頼むから、オレのいない所でやってくれ!」

「オレも一緒だと思われるのはイヤだ!」

「弟だって言ったじゃないですかぁ。」と茶化す。

「ナカムラーッ!」また、怒鳴られた。身体に悪いですよ。

ウウ…こちらもまだ痛い。


内線の呼び出し音。

「はい、局長室。警察庁から?はい、替ります。」

「イシカワさん、警察庁からお電話です。」

なんで、警察庁?

イシカワさんが受話器を取る。

「宇宙観測センター東京局、局長のイシカワです。…龍のデータですか?

…明日、昼3時ですね?はい、うかがいます。」

「なんですか?」

「わからん、10年前の龍の資料を欲しいと言ってる。

詳しい話は向こうでとの事だ。とりあえず昔まとめた報告書を持っていこう。

用意しておいてくれ。」

龍?Tの所にもあった龍の資料…。偶然なのか?

_____________________________


夕方、マンションに帰る。

ススムくんの部屋兼ボクの寝室に入る。

…何だ、この黄色のモアモアの群れは!

ススムくんとリンちゃんと…なんとムゥがいる!

「ヨウ、ナカムラのおじさん。」とムゥ。“おじさん”じゃない“お兄さんさん”だ。

「ナカムラさんお帰り!ムゥくん来てるよ。彼、面白いんだ!」とススムくん。

「ナカムラさんお帰りなさい。はい、ヒヨコ。」とリンちゃんが1羽ボクの手に乗せる。

地球のより2倍ほど大きい。後頭部が少し突き出てる。そして丸っこい。

ボクにはなじみの、ココでは異形のヒヨコ。

「どうしたんだ?」

頭にダダの声

“空間移動の動物実験をやってる。”

“ヒヨコで試したんだが85%って所かナ”

“それがオトナの男でも85%で行けばイイんだがな”

怖い事、言うなよ。

それより、なんでムゥがいるんだ。こんな力技、アイツには早いだろ。

それに危ない事させているのが知れたらフロルが怒るぞ!

“「身体に覚えさせる事は早いほどイイ」って言うじゃないか。”

“それに、お前の身体をそちらに移す時はもう一人様子を知らせてくれる能力者が必要だ。委員会に隠れてやってる事だしムゥしかいないんだ。”

“フロルはオレを信じると言ってくれてる。お前みたいな無茶はしないよ。”

“それと実験の結果だが、集中度が大きく作用するようだ。

龍が実験に飽きてからずっと失敗している。”

“もう、しばらくは無理だろう。ムゥもそろそろ引き上げさせるよ。”

ちょっと、待て!このヒヨコ、どうするんだ!ミセス・イシカワに怒られる!

“こうすりゃイイのか?”突然、龍の声。

今までいた、ヒヨコが消えた。スゴイ。

ボクらも混ざっていたのに区別した上であの質量を…。

“コレならいけそうだナ。タイミングを見て連絡するヨ”とダダ。

「じゃあナ、おじさん。」とムゥが姿を消す。

“お兄さん”だ!


「ナカムラさん、ソレちょうだい。」

リンちゃんがボクに手の平見せて“ちょうだい”のポーズ。

ン?ボクの手にはヒヨコが1羽。忘れてったンだ。

リンちゃんにプレゼントする。


帰る早々、コノ騒ぎ。疲れた…。

でも、希望も持てた。ありがとうダダ、そしてムゥ。

さぁ、これからはオトナの時間だ。子ども達は寝てなさい。

________________________________________


センターの近くの古くて小さな宝飾屋。やる気あるのかなーってカンジの店。

ショーウインドウもほこりが被ってる事もある。ただ、このショーウインドウに飾っている指輪が気になってた。Aちゃんはアジア系にしては髪の毛も瞳の色も薄い。明るい所で見る瞳の色はブラウンというよりオレンジがかったアンバーだ。その瞳の色に良く似た石の指輪。プレゼントするならって思ってた指輪。ちょっと、値は張ったが交渉に交渉の末、半額で手に入れた。

店主に女性へのプレゼントをケチるなんてと、皮肉を言われたが“交渉にかけたコノ労力が愛だ”と自分でもワケのわからん事を言うと感激してさらに値引いてくれた。言ってみるもんだ。

ずっと、琥珀と思っていた石はトパーズという石だと知った。


その指輪をポケットに忍ばせ、こっそりマンションを出ようとすると

「ナカムラさま、どちらへ?」とHOSに呼びとめられる。

「ちょっと、散歩に…」と答えるとススムくんがやってきた。

「散歩?ボクも!」アチャー、ダメだよ。

タイミングよく、ミセス・イシカワが現れ、

「ダメよ、夜遅くから子どもが出歩くのは許しません。」とススムくんを止めてくれた。

助かった。でも、何その目。ミセス・イシカワ何か察してる?

「じゃあ、遅くなるかも…。」とか言いながらその場を離れる。


Aちゃんのアパートへ向かう途中、

酒屋でワインを3本、そしてサーモンピンクのバラの花束を買った。

そして彼女の部屋のドアの前。

ボクにとっては由緒正しき勝負服。夜会服に黒マントに変身!

…でも、プロポーズって何って言えばイイんだ?

思わずしゃがみ込む。

「ずっと一緒に居られないかもしれないけど、一緒に居て下さい」ってか?

変だろ、ソレ変だろ?

…そうだ!石川先輩が一度使ってみたかったって言ってたセリフ…。


ドアが開いてAちゃんが小声で言う。

「ナカムラさん、中に入って!」

「そんな服でドアの前でしゃがみ込んでいると不審者に見えるワ!」

見えてたの?途端に恥ずかしくなった。


「ドアの前に人カゲを感知するとアラームとモニターが作動するのよ。」

「知らなかったの?」ウーン。知らなかった。 


とりあえず花束をAちゃんに献上!笑って受け取ってくれた。嬉しい。

ワインをテーブルに置く。そして…。

ボクはプロポーズをしにきたんだ!コレを言わなきゃ落ち着かない。

ボクはAちゃんの前にひざまずき

「姫、どうかこのドロボウめに 盗まれてやってください。」

「そして、この指輪を受け取って下さい。」

間があって、彼女が左手をボクの前に差し出した。震えてる。

ボクは彼女の薬指に指輪をはめる。少しゴロつくけど目立つ程じゃない。

顔を上げAちゃんを見る。右手は強く結ばれた口もとに、目には涙をためて…。

感激してる…んじゃナイ。笑いを堪えてるンだ!

彼女が堪えきれずに笑い出した。「ごめんなさい」って言いながら…。


傷付いた…。悩んで考えたのに。(3分だけ)


「ナカムラさん、そんな所にいないで出て来てよ。」クスクス笑いながら

彼女が言う。ボクはダイニングテーブルの下にしゃがんでる。

「いいんだ。落ち着くから。」と、すねる。

彼女は酒の肴の支度をしてる。冷蔵庫やシンクやテーブルの間を行き来するAちゃんの細い脚を見てる。フム、いい眺め。でも珍しいな、この色のストッキングは初めてだ。いつもはベージュ系なのに。黒…。

椅子に座り脚を組むAちゃん。リンゴの香りがする。リンゴをむいてるんだ。ボクの目の前に組まれた脚。ロングスカートだから足首しか見えない。「ねぇ、出てきてよ。」彼女が覗き込む。ボクはフンと目をそらす。彼女はまた、リンゴをむき出した。「あの指輪、どこで見つけたの?」「…センターの近くに古くからある宝飾屋があるんだけど知ってる?」返事しながら、気付かれないよう彼女のスカートを持ち上げる。「そこのショーウインドウに君の瞳の色に似た石の指輪があってね…」ふくらはぎ、膝、腿が現れ、ガーターベルト発見!思わず立ち上がろうとしてテーブルに頭をぶつける。「だから、言ったでしょう。出て来てよ。」

ボクは頭を抑えてテーブルの下から出て来た。マントは邪魔みたい。マントを取って椅子にかける。改めてボクを見て「懐かしいわネ。」って笑う。あの時はこの服でAちゃんに別れを告げたんだ。こんな日が来るなんて思わなかったよ…。そんな事より…。

「ガーターベルト。」

ボクが言うと。途端に彼女の顔が真っ赤になった。

「ねぇ、もしかしたら勝負下着?」

彼女の平手が…。そうそう喰らわないもんネ。その手をつかむ。

すぐにボクの手を振り払って、テーブルのワインの栓を開ける。(何で?)

「だって、この間ナカムラさん寝ちゃうし…その気になってほしくて考えて…」

とか言いながら、その辺にあったコップにワインをつぐ。(グラスがあるのに!)

「考えて?」ボクが聞く。

「B先輩に相談したの。」彼女はコップのワインを一気に飲み干した。(ウソ、大丈夫?)

B先輩…。ミセス・イシカワ!マンションを出る前の彼女の目。知ってたんだ!

ボクまで顔が赤くなる。

彼女が続ける。

「やっぱり、勝負下着だって…。どう?」

スカートをガーターベルトまでたくし上げて見せる。ワオ!

よし、キッチリ勝負つけようじゃないか!

でも…、違う。なんか違う。

彼女は2杯目のワインを空けようとしてる。(恥ずかしいの誤魔化してる?)

「何が違うの?」

「ウーン。Aちゃんは白のほうが似合うと思う!」

彼女は3杯目をコップについでる。(ピッチ早くない?)

「そうなの!私もそう思って買ったの!」

奥に行って下着を持って戻って来た。(足がふらついてる。)

そして3杯目を空け、4杯目をつぐと

「はい。」ってボクに勝負下着を渡す。

ワーイ。絹の光沢、極上レース、透けるシフォン。(変態か?)

彼女は2本目のワインの栓を開けようとしてる。

ボクはドキドキしながら聞く「履き替えさせてもイイ?」(変態だ!)

「どうぞー。」コップにワインをつぎながら返事。

彼女はサッサと黒のストッキングとガーターベルトをぬいでしまった。

あっ!脱がせたかったのに…。まっ、いいか。


よし、出来た。ウーンやっぱり白だね。

Aちゃんには白が似合う。

…肝心の下着の方はまだだけど。

「Aちゃーん、ストッキング履き替えたよー。」って、寝てるし!

ワイン3本全部飲んでるし!

どんなに呼んでも起きないし!


“お前はバカか?”ダダだ。

こら!人のH覗くな!

“白でも黒でもどっちでもイイだろ!どうせ脱がせちまうのに!”

イヤ!彼女は白だ!

“付き合っていられんネ。このド変態!”


しようがないから、彼女をベッドに運んでブランケットを掛けてやる。

ボクのマンションにキミが来た時の事を思い出すね。

顔が見れて、声が聞けて、ボクの指輪は受け取ってもらったし。

今日はまずまずの日としよう。


カリオストロの城の名セリフ。ナカムラに言ってもらいました。

今回、勝負下着に暴走ぎみのナカムラです。

R15はみだしてませんよね?

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