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“お前、Aちゃんをどうするんだ?”と言ったのはオレ。

“ダダさん、なんとかならんかネ?”と聞いてきたのはイシカワさん。

すべてはアイツの身体を地球に転送できれば解決する事。

ソレだけの事なんだが…。ソレが問題。


庭のベンチに座って双子のドロ遊びを見ながら考える。

片耳のイヤホンからはナカムラの“ララァ良くやった!”の声が聞こえ、腕の簡易モニタにはナカムラを追い出すAちゃんの怒った顔が映る。

お前のひょうきん度がエスカレートしていくように見えるが不安から、そうしてるワケじゃないよナ?。

オレには“そろそろ帰ろうかな”とか言いながら、限界までソコにいるつもりじゃないよナ?

それが、どういう事かわかっているよナ?


…解決する方法をひとつだけ考えてる。

でも、ムゥの協力とフロルの承諾が必要なのだが…。


フロルが双子に「気がすんだか?」と笑ってる。

洗い場に連れて行き、自分のロングスカートの裾をベルトに挟む。白くて細い脚にドキッとするが、街から離れた場所だから見る奴もなしヨシとする。

おもむろに双子の服をぬがせバケツの水を頭から掛けてる。

冷たいだろうにキャッ、キャッとはしゃぐ双子。

「そのまま、風呂に行け!」とフロルが言うと裏口から風呂に走っていく。途端に風呂場から子ども達の笑い声や騒ぐ声、水音が響く。

フーッと満足そうに息をつくと、ドロだらけの服をバケツに入れてドロを落とそうとしゃがんで洗い始めた。そこへムゥがやって来て「かーちゃん、メシ!」と催促する。

「もーちょっと、待ってろ。」と言い双子の服をしぼり、カラのバケツに入れた。

フロルがオレに向かって「ダダ、もうすぐ夕飯だからね。」と声をかける。

オレは判ったという風に手をふる。


“結婚が、子どもを持つ事が、一番の幸せとは限らない”

そうかもしれない。

しかし、それを享受しているオレやイシカワさんには

そんな事をお前には言えない。


やはり、お前に“ナッ、イイもんだろう?”て言ってやりたい。

_________________________________


夕食後、オレのモニターをムゥが覗きこんでくる。

モニターにはススムくん達の新作が映ってる。

今度はマイケル・ジャクソンの“スリラー”という曲だそうだ。

ムゥもつられてゾンビダンスを踊る。ノリのイイ曲だ。

「オレも一緒に踊りてぇー!」

「…行ってみるか?」ムゥに聞いた。

「行けるのか?」目をキラキラさせて、こちらを見る。

___________________________


リビングでTVを観るイシカワさんに話し掛ける

「イシカワさん、ボクそろそろココを出ようと思います。」

イシカワさんがモニターの電源を落とす。

「帰るのか?」

「いいえ、いつまでも居候するワケにはいきませんから。」

「近くにアパート借ります。」

「ココは気に入らないか?」

「そういうワケでは…。」

「じゃあ、ココに居ればイイ。」

「ミセス・イシカワが…。」

子ども部屋からボクらの会話を聞いた彼女が現れる。

「私を悪者にするつもり?ちゃんと食費は頂いてるし、

ダーリンも連れ帰ってくれるし、居てくれたら助かるワ。」

「子ども達もあなたに懐いてるし。」

「なっ、帰るまでココに居ろ。居てくれ。」

「…わかりました。お世話になります。」

ボクの表情を見て、

「…まだ、オレに隠してる事があるのか?」とイシカワさんが聞く。

「そんな事はありません。」

とその場を離れる。

「HOS,散歩してくるよ。」

「いってらっしゃいませ、お気をつけて。」とHOSが見送る。

________________________________


マンションから公園へ向かう遊歩道。ベンチに腰かけ、タメイキをつく。


“帰ると誰かが居る”ってのはイイもんですね。イシカワさん。

向こうではずっと、ひとりだったから気がつきませんでした。

“気に入らないか?”なんて、とんでもない。

ボクも…なんて“幽霊”のクセに考えてしまいます。

…ココへの心残りはAちゃんだけ。

ボクが出来る事は最後の時までAちゃんの側にいる事。

でも、ボクが消えるのをAちゃんにもイシカワさんたちにも見られたくない。

最後の時にボクが理性を保っていられるかわからない。

どうなるか不安なんです。イシカワさん。


“ナカムラ、“龍”に会えないか?”ダダの声。

“龍”に?そう言えばススムくんは彼の力を借りてボクに会いに来たんだ。

礼も言ってなかったな。やってみようかナ。


“場所”を意識して集中。雑踏の中にいるような騒音が聞こえ始めダンダンと大きくなる。そして、“龍”を想いうかべる。“龍”があらわれボクを通りすぎていった。


「ナカムラか?」

来れた!ダダの言う通りだ、

目標の位置を特定できなくても意識できれば目標物を探せるンだ。

「龍さん?久しぶりですね。」

「地球には行けたのか?」

「エエ、ありがとうございます。お陰で大好きな人達にまた会えました。」

「それは良かった。ススムがしつこく頼んで来てな。」 

「奥さんのほうはどうですか?」

「まだ10歳だ、子どもだよ。たまに覗きに行ってる。」

「お前からチカラの使い方を教えてもらってから、イロイロ試してる。」

頭にダダの声が聞こえる。

“お前の身体を地球に転送する事が出来るか、聞いてみろ”

無茶言うなよ。

“イヤ、宇宙の大王様だ。ダメ元で聞いてみろ”

物質の空間移動なんて、成功率5%だ。しかも種籾程度の小さなモノ。それも殆どは形を成していなかった。例の記憶を消す機械も地球でダダに教えてもらって作ったものだ。

“お前らのチカラは意思の強さ次第だろ。最初から成功率5%に捕らわれてるから出来ないんじゃないのか?”

…聞くだけ、聞いてみる。

「龍さん、…ボクの身体を地球へ持って行く事は出来ますか?」

「やってみようか?」

「ちょっと、待って!」 

失敗したらボクは帰る身体をなくし、ボクの意識は“場所”に溶けてしまうだろう。

「まずは、試してから…。」

“ススムくん、聞こえる?今、部屋に居る?”

“居るよ。”

“今からソコにモノを送るから状態を教えて”

ダダはガードしてるからムゥの目を借りよう。

「龍さん、チカラ借ります。」

龍と意識を繋ぎながら、ムゥの中へ

ムゥの視線の中にダイニングテーブルの上の果物が映る。アレにしよう。

送りたいモノのバックをススムくんの部屋にすり替えるカンジで。

“ススムくん、来た?”

“来たけど…。果物?最初はカタチがあったんだけど、消えちゃった。”

失敗か…。

「こうすりゃ、イイのか?」と龍。

“ナカムラさん、見たことのない果物が来たよ。普通に食べれる”

あっ!ダメ、食べちゃ!…遅いか。たぶん大丈夫だろ。

「さすがですね、龍さん。」なんか、龍のドヤ顔が頭に浮かぶ。

「じゃあ、お前の身体を送るぞ。」

まだ。不安だなー。

“動物を無事送る事ができるまでは安心できないな…。”

“そこは、ゆっくりオレとムゥとで試してみるヨ”

“お前は、やる事やってこい。時間がナイんだろ?”


そう、早くもクスリは2錠目だ。



なんでもアリの“龍”さん登場。

いやー、便利だ。


HOSの「いってらっしゃいませ、…」

ラジオの“saturday waiting bar AVANTI”を思い出してしまった。好きな番組です。

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