表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

大いなる買い被り 8





宰相というかなりな高位についているだろう男性は、こちらを相変わらず真摯な瞳で見ている。


「ユーリ殿…、どうかお願い申し上げる。」


先ほどからの話しぶりにも、国のためにこちらを説得しようという姿勢は感じられた。

そして、年齢の割には身のこなしも機敏で、しゃんと伸びた背筋にも老いを感じさせるものもないけれど、そのたたずまいは落ち着いた様子だった。


そんな人が、自分のような若年者がすがるように見られては、落ち着かないのはしょうがないだろう。


それに、神殿で、安全のためにと保護(軟禁ともいえるか)されていた私を訪れ、手紙をよこし、私を気遣い、外の様子を知らせてくれたのはこの人でもあるのだ。

もちろん向こうには向こうの思惑があったのだろうが、日々閉じこもらざる得なかった私にはかなりありがたかった。



そんな人物が、私のような自分の半分の年齢にもなっていないような小娘に頼っていることを考えると、やはりここは協力すべきか……


そんなためらいを私の表情から読み取ったらしい。

横から後押しするように、魔術師が言う。

「わたくしからもお願いいたします。

部下からの情報では、相手は直接傷を与えるような魔術は一貫して使っていないと聞いております。勇者様に危害の及ぶ可能性は低いというのが我々の見解でして、それもあって今回お願いに参った次第でもあるのです。

もちろん、いらっしゃった際には総力を尽くして安全をおはかりします。」

こちらは淡々と私を納得させようという様子だ。


魔王とやらが攻撃魔術を使っていないということは初耳であった。

それだけでは私に危険がないと言い切ることはできない気もしたが、そもそも私にこちらの魔術は効かない。

王宮側も一種神殿からの借り物となる私に怪我をさせたくはないだろうから、威信をかけても出来る限りのことはするだろう。




空中でいまだににやけた顔をしつつも、私に向かって意味ありげな眼を向ける子供からは、別に自分の好きなようにやれと初めから言われている。

それに、この国に滞在する以上、どうせ耳に入らざるを得ないことでもある。


「私に何ができるかはわかりません。

はっきりした保障は出来かねますが、何か力になれることがあるのならば、

この国に生活するものとして手伝いたいと思います。」


このくらいは今の時点で言ってもかまわないだろう。

いまだ自分の手を握りしめている神官姿の少年をみると、心底納得したわけではなさそうだが、反論はしないでくれた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ