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大いなる買い被り 7



神官の発言に対して、王様は思いがけないことを言われた、とでも言うように反論する。

その表情も、まるでそんなつもりはありません、とばかりな驚き顔だ。


「誤解しないでいただきたい。

私は決して神殿の考えを否定しているわけではないのだ。

ただ、ユーリ殿が意思を持った一個の人間であることは明らかです。

そして、神殿の言うような崇高な方であるならば、卑小な存在であるわれわれただびとが、彼女に何らかの行動を強いることは許されないでしょう。」


「そう考えると、われわれの行動は、ユーリ殿の好意にすがるしかないのでないですか?。

だからこそ、ユーリ殿の真意に沿うことこそが、結局は神のご意思にかなうことでもあり、彼女にとって不愉快な言動を避けるためにも、現時点でのユーリ殿の御考えを知っておきたいと思ったまでにすぎません。」


そこまで一気に言いきると、王様は再びわたしに向き直る。


おそらくわたしの「御考え」とやらを求めているのだろうが、わたしは先ほどの台詞の意味を咀嚼していたので即座に答えることはできなかった。


(うーん、言葉は取り繕ってたけど、あれって神殿へのけん制でもあるよね。

神様の直接の配下なら、神殿だってわたしに何か強制するのは許されないだろ、お前もこっちと同じ立場なんだよ、ってところか。)

(それに、神の意志うんぬんを持ち出して、最終決定はわたしの心ひとつだって言いたいのかな。

謙虚って思ったけどやっぱり政治家なんだなー、言葉を取り繕うのがうまい。

もし本音で言ってる天然ならそれはそれでこわいけど。)


うまく自分たち神殿の主張を利用された神官のほうを見やると、私と同様に王様の言葉の意味を読み取ったのか、一瞬悔しそうな顔をした。すぐに私の視線に気づいて消してしまったが。


さすが、王国のトップとの会談に出るほどの少年だ。

まだ経験もさほどないだろうになかなかの自制心だと感心した。


そこまで考えて、では王の側近たちはどんな様子だろうかと見やってみた。




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