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大いなる買い被り 3

そう、今現在この部屋の中では話し合いが設けられているのである。

たとえ始まってからの2時間、ほぼ議論が平行線で何の結論も出ていないとしても、である。


豪華な装いの、神妙な顔付きの男性は言った。

「今現在、この国の東の森には魔王が住んでおり、着々とその魔の手を付近の住民に伸ばしている。

一刻の猶予もない。申し訳ないのだが、勇者殿にはぜひ早急に、王城で討伐の準備にかかっていただきたい。」

部屋の主、いやこの部屋がある王城すべての主人でもある国王は、椅子に腰かけたまま、その瞳を部屋の中心に立つ娘に見据えた。



(魔王か―。まーありきたりですよね。なんでこの国限定で襲っているかは知らないけど、確かに急務ではあるのか?)

悠里は無表情ながらも王の発言を吟味していた。


悠里のうなずきに力を得たのか、脇に控えた老人――この国の宰相らしい――は身を乗り出して、

「異世界からの客人にこのようなお願いをするのは、筋の通らないものだとは承知しております。

ただ、かの魔王には剣はおろか、わが国屈指の魔術師たちも歯が立たない様子、もう貴方様におすがりするしか……。」

普段はやさしい、柔らかな表情を浮かべていたのだろう顔は、今は焦りのためか憔悴しきっている。

そのためか、敬老の心をもつものならば無条件に手を差し伸べざる得ないような空気を醸し出している。



さらにローブを着た年齢不詳の人物――こちらは宮廷魔術師長の職にあるらしい――も熱心に訴えてくる。

「宰相殿のおっしゃる通りなのです。今は急遽選別された魔術師らによって、国民への被害は何とか抑えているのですが、相手に魔術が効かない以上、それも一時しのぎでしかなく…。」

こちらも、繊細な作りの顔を本当につらそうにゆがめてそういうものだから、ついつい「私にできることでしたら…」などと口に出そうとした。


その時、悠里の心の揺らぎを感じたのか、開いた口から実際にその言葉が出る前に、大きな声でさえぎるものがあった。







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