表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定しか取り柄のない俺、倒した敵のスキルを奪えると判明する  作者: 水瀬 洸
第一章 覚醒、そして始まりの一歩
6/18

第六話 Lv2ダンジョン

朝、ギルドへ入った瞬間、コウの姿に気づいたドグが大きく手を振った。


「おい、こっちだ!」


呼ばれた席には、見慣れない二人の冒険者が座っていた。


一人は足を組んで椅子にふんぞり返る気の強そうな女性。

もう一人は落ち着いた雰囲気の男で、丸みを帯びたゴーグルのようなものを額にかけている。


「こいつが昨日言ってたやつだ」


ドグが紹介する。


「コウだ。単独で《灰穴》踏破した」


女性の眉が少し上がった。


「へぇ」


短くそう言って、女は名乗る。


「カイラ・ガルドラー。土魔法Lv3。こいつの姉だ」


親指でドグを指す。


「別の街で冒険者やってたんだけどね。こいつが覚醒したって聞いて戻ってきた」


カイラはそう言って弟を軽く小突いた。


「Lv2になるまでは手助けしないって決めてたんだよ。甘やかしても意味ないからね」


ドグは苦笑する。


「おかげで死ぬほど苦労したけどな」


もう一人の男が軽く会釈した。


「ヴェル・クロード。斥候だ。スキルは《遠視Lv2》」


額のゴーグルを軽く指で弾く。


「広い岩石地帯じゃ役に立つ」


カイラが腕を組む。


「あと一人、誘う予定の子がいるんだよね」


続けて言う。


「最近覚醒した子でね」


「Lv1か?」


コウは思わず聞き返した。

Lv2ダンジョンに挑むには少し心許ない。


カイラは頷く。


「ヒーラーだ」


コウは少し驚いた。


回復魔法。

それは珍しいスキルだった。


怪我をしたとき、ポーション以外に頼れる手段があるというだけでパーティの生存率は大きく変わる。


「ヒーラーなら話は別だな」


ヴェルが静かに言った。


「Lv1でも欲しがるパーティは多い」


「まだ準備ができてないようなんだけど」


カイラは肩をすくめる。


「出発は三日後。そこで顔合わせだ」


それで話はまとまり、その場は解散となった。


三日後。

その言葉を聞いたとき、コウの頭に一つの考えが浮かんでいた。


昨日、ドグと一緒に《枯岩原》へ入ったときの手応え。


ダストハウンドとの戦闘も問題なくこなせた。


さらに昨日は隠していて使えなかった《魔力探知》だってある。

それを合わせれば、もしかすると。


《枯岩原》は《灰穴》よりも遠くフェルンから馬で最長五時間かかる。


(最近は毎日ダンジョンに潜っていたし、今日は休んで出発は明日早朝だな)



翌日。


《枯岩原》へ到着した頃には、昼前だった。


まずは周囲を警戒する。


《魔力探知》。


意識を集中すると、周囲にいくつかの反応が浮かぶ。

距離はおよそ三十メートルほど。

洞窟型の灰穴では、このスキルは圧倒的に有利だった。


しかしここは違う。


視界は広く、敵は遠くからでも目視できる。

探知の恩恵は思ったほど大きくない。


「来る」


魔力反応が三つ。

岩の影から飛び出してきた。


昨日も戦ったダストハウンド。

岩石地帯に生息する薄暗い茶色の狼型の魔物だ。


素早い。


三体が連携して襲いかかってくる。


一体が正面。

もう一体が側面。

そして最後の一体は――後ろを取ろうとしていた。


(速い…)


位置は分かっている。


だが、迂闊に動けば別の個体の牙が届く。


一度退くことも考えた。


だがダストハウンドは逃がしてくれる相手ではない。

追いすがるように包囲を狭めてくる。


コウは歯を食いしばる。


昨日は違った。

ドグが前で盾を構え、魔物の注意を引きつけていた。

だから自分は落ち着いて動けた。


(パーティか…)


一人だと、敵の意識がすべて自分に向く。

それだけで戦いの難易度は大きく変わる。


だが今は一人だ。

考える時間はない。


後ろを取ろうとした一体に狙いを定める。


一瞬の隙を突き、踏み込む。


戦闘補助スキルが身体を導く。

刃が喉を裂いた。


残り二体。


数分後、ダストハウンドの死体が地面に転がった。

コウは息を吐く。


苦戦はした。

だが、無理な戦いではない。


(まだ行ける)


慎重に進む。

周囲を見渡しながら歩く。

ダストハウンドとは、さらに二度の戦闘があった。


どれも時間をかければ危険ではない。


だが。

その時だった。


岩の横を通り過ぎようとした瞬間。


岩が、動いた。


「ッ!」


噛みつき。


肩を強烈な力で噛み締められる。


ロックミミック。

岩に擬態する魔物だ。


灯台もと暗し。

ダストハウンドを警戒してしまい、遠くばかり気にしていた。


足元の岩など、ただの岩にしか見えなかった。


コウは歯を食いしばる。

剣を突き込み、魔物を引き剥がす。


数分後、ようやく動かなくなった。


肩から血が流れる。

コウはポーションを取り出した。

液体を傷口に流し込む。


痛みが引く。

だが、財布も軽くなった。


(ステーキ二回分…)


苦笑が漏れる。


(ヒーラーが重宝される理由がわかるな)


少し休憩を取り、肩が動くようになったことを確認して中心へと進んでいく。


そしてついに――。


見つけた。

《枯岩原》の中心付近。


そこにいた。


ロックゴーレム。

巨大な岩の巨人。


「《スキル鑑定》」


《岩殻》:魔法ダメージを軽減する

《投擲》:物を投げる際の威力と正確さが上がる


「遠距離攻撃もあるのか......。厄介だな。」


コウは距離を取りながら観察する。

こちらを襲ってくる様子はない。


ロックゴーレムの弱点はコア――つまり魔石らしい。

だが、どうやって探す...?


近づいて試しに斬るが、剣が弾かれた。

硬い。


次の瞬間。

ロックゴーレムの腕が振り下ろされた。


回避。


だが。

拳が地面に叩きつけられた衝撃だけで、身体が浮いた。


「ッ…!」


これは無理だ。



本能がそう告げた。


コウは反転する。

逃げた。


背後でロックゴーレムの足音が響く。


だが幸い、攻撃はしてこなかった。



日付が変わる頃。

コウはようやくフェルンへ着いた。


宿のベッドへ倒れ込む。


今日の出来事を思い返す。


ダストハウンド。

ロックミミック。

そして。

ロックゴーレム。

特にロックゴーレムにはあしらわれたくらいで、敵とすら認識されていなかっただろう。


Lv1ダンジョン単独踏破で有頂天になっていたのだろう。

強くなったと思っていた。

ただ、その気になっていただけなのかもしれない。


コウは天井を見つめたまま、小さく息を吐いた。


……だが。


思い出す。

昨日、ギルドであった人たち。


「あれを倒そうとしてるやつらがいるんだよな……」


ドグ。

カイラ。

ヴェル。

そして、まだ会っていないヒーラー。


コウは目を閉じた。

今日、自分一人では届かなかった相手。


しかし、二日後――


《枯岩原》の攻略パーティが動く。


今度は、パーティで挑む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ