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第75話 喰らい合う獣



 ジュッ、ボォォォォッ!!

 真正面から放たれた高出力レーザーが、アヴェンジャーの左肩装甲を瞬時に蒸発させる。


『ぐああああッ!!』

「うぐぅぅぅッ!!」


 カイルの悲鳴と、私のうめき声が重なる。

 左肩が焼ける幻痛。肉が焦げる臭いが脳内を駆け巡る。

 だけど、止まらない。

 痛みは恐怖じゃない。怒りの燃料だ。


「そこぉぉぉぉッ!!」


 私は操縦桿を押し込んだまま、燃え上がる左半身を盾にして突っ込んだ。

 距離、ゼロ。

 ハウンド1の驚愕の表情が、キャノピー越しに見える距離だ。


『バリア展開ッ! こいつ、正気かよォッ!?』


 ニーズヘッグの前面に、慌てて紫色の障壁が展開される。

 だが、遅い。

 ミサイルでも銃弾でもない。数十トンの鉄の塊が、トップスピードで体当たりを仕掛けているのだ。


 ガシャァァァァァァァンッ!!!


 轟音と共に、世界がひっくり返った。

 アヴェンジャーの鋼鉄のランディングギアと機首が、ニーズヘッグの障壁を物理的な質量で粉砕する。

 パリパリパリッ!

 紫の破片が飛び散り、二機の機体はもつれ合いながら地面へと叩きつけられた。


 ズズズズズズッ!!

 巨大な結晶を何本もへし折りながら、土煙を上げて滑っていく。

 空戦じゃない。

 これはもう、泥沼の取っ組み合いだ。


『ガハッ……! クソ、離れろッ! この狂犬がァ!』


 ハウンド1がスラスターを逆噴射し、私を引き剥がそうとする。

 逃がさない。


「逃がすか……! 食ってやる……食ってやるッ!!」


 私の右腕がドクンと脈打ち、黒い鱗がさらに広がる。

 思考が赤く染まる。

 機体と私の境界線が完全に消えた。

 私がアヴェンジャーであり、アヴェンジャーが私の肉体だ。


 ガギンッ!!

 私は機体の右脚クローを、ニーズヘッグの腹部に突き立てた。

 油圧と魔力が同時に唸りを上げ、敵の装甲を握り潰していく。


『ギ……ギギギッ! 警報が鳴り止まねえ! 装甲値アーマーが持ってかれる!』


 ハウンド1の焦り声が心地いい。

 私は右腕に全魔力を集中させた。

 機首の30mm機関砲を、敵のコクピットに押し付ける。


「消えろォッ!!」


 ズダダダダダダダッ!!


 ゼロ距離射撃。

 魔力を纏った徹甲弾が、ニーズヘッグの胸部装甲を至近距離で叩く。

 火花と装甲片が飛び散り、ハウンド1の悲鳴が通信機から漏れ聞こえる。


 だが――。


 ブォンッ!!

 ニーズヘッグの背面から、隠されていた予備スラスターが爆発的な推力を生んだ。

 無理やり機体を捻り、アヴェンジャーの拘束から強引に脱出する。


『ッ……調子に乗るなよ、欠陥品がァ!!』


 ドガァッ!!

 離れ際に、ニーズヘッグの尾翼がアヴェンジャーの頭部を薙ぎ払った。

 強烈な衝撃。

 私の意識が一瞬飛び、アヴェンジャーが横転する。


 土煙が晴れると、二機の「獣」は距離を取って対峙していた。

 どちらもボロボロだ。

 けれど、まだ互いの目は死んでいない。


「ハァ……ハァ……まだよ。まだ、殺せる」


 私は血の味を噛み締めながら、再び右手を突き出した。

 殺し合いは、まだ終わらない。


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