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第70話 砕け散る静寂



 警告もなく、世界が砕ける音がした。


 パリーンッ!!

 頭上から降り注いだ数発のロケット弾が、周囲の巨大な結晶柱を直撃したのだ。

 ガラス細工をハンマーで叩き割ったような轟音。

 鋭利な結晶の破片が、散弾のように降り注ぐ。


「きゃぁぁっ!?」

「敵襲! 敵襲だーッ!!」


 レジスタンスの兵士たちが叫び声を上げ、リズが頭を抱えて輸送機の下へ潜り込むのが見えた。

 黒雲の隙間から、帝國軍の竜騎兵たちが、黒い雨粒のように次々と降下してくる。


『チッ、嗅ぎつけやがったか! 早すぎるぜ!』

「カイル、迎撃するわよ!」


 私はスロットルを叩き込んだ。

 だが、反応は私の予想を遥かに超えていた。


 ドクンッ!!

 アヴェンジャーが「跳ねた」。

 滑走して揚力を得るのではない。

 巨大な推力が機体を無理やり空へ押し上げ、まるで獣が獲物に飛び掛かるような急加速で離陸したのだ。


「うぐっ……!?」


 強烈なGが全身を押し潰す。

 背骨が軋むほどの加速。でも、機体と繋がった右腕だけは、その負荷を歓喜するように脈打っている。


『うおぉっ!? なんだこの加速は! シートベルトが千切れるかと思ったぞ!』

「文句は後! 来るわよ!」


 目の前に、降下中の敵機二機が迫る。

 私は無意識に操縦桿を捻った。

 機体が液体のように滑らかにロールし、敵の弾幕を紙一重ですり抜ける。

 FCS(火器管制)のロックオンすら待たず、私は直感でトリガーを引いた。


 ガガガガッ!

 30mm機関砲が火を噴く。

 弾丸は吸い込まれるように敵機のコクピットを貫き、二機同時に爆散させた。


『……おいおい、マジかよ。照準レティクルも見てねえのに』


 カイルが絶句している。

 今の私には、機体のセンサーが捉えた情報が、自分の視覚のように流れ込んでくる。

 360度、死角はない。


 だが、その全能感を切り裂くように、通信回線にノイズ交じりの笑い声が響いた。


『――ハハッ! いい動きだ、エルゼ!』


 頭上の雲を切り裂いて、漆黒の機体が降ってくる。

 可変翼を広げた死神。ハウンド1の『ニーズヘッグ』だ。


『随分と「イイ匂い」がするようになったじゃねえか。……前よりもずっと、俺たちに近づいたなァ!』

「……黙れ!」


 ニーズヘッグが紫色のビーム弾をばら撒く。

 私は反射的に機体を捻るが、その動きは以前とは違う。

 恐怖よりも先に、怒りと殺意が右腕から湧き上がり、機体が勝手に敵を食い殺そうと前進するのだ。


『エルゼ! そっちは囮だ! 奴らの狙いは……』


 カイルの叫びで、ハッとした。

 ハウンド1の背後から現れた爆撃機部隊。

 その銃口が向いているのは、私ではない。

 地上で動けない、リズたちの乗る輸送機だ。


『まずは荷物から片付けるとしようか!』


 ハウンド1が残酷に笑う。

 私の体の中で、血の気が引く音と、沸騰する音が同時に響いた。


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