表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/166

第65話 廃墟のハイエナ



 不快な金属音で目が覚めた。

 ガガガガッ……!

 何か硬いもので、アヴェンジャーの装甲をこじ開けようとする音だ。


「……ん」


 私が重い瞼を持ち上げると、隣で寝ていたはずのカイルが、既にアサルトライフルを構えて物陰に潜んでいるのが見えた。

 彼は口元に指を当て、「静かに」という合図を送ってくる。


 高架下には、いつの間にか数台の作業用車両――錆びついたピックアップトラックや、武装化された二足歩行の作業機パワーローダーが集まっていた。

 その周りには、薄汚れた作業着に銃器をぶら下げた男たちが十数人。

 廃墟を漁るジャンク屋スカベンジャーだ。


「おい見ろよ、こいつは上玉だぜ!」

「帝國軍の新型か? 装甲板一枚で、俺たちの半年分の稼ぎになるぞ!」


 リーダー格らしい男が、バーナー片手にアヴェンジャーの脚部を撫で回している。

 その汚い手が、私の「翼」に触れているのを見た瞬間、寝起きの頭が一気に沸騰した。


「……触らないで」


 私は隠れることもなく、瓦礫の陰から姿を現した。


「あぁん?」


 男たちが一斉に振り返る。

 ボロボロのパイロットスーツを着た小娘一人。彼らは顔を見合わせ、下卑た笑い声を上げた。


「なんだ、持ち主か? 生きてたとはな」

「悪いが嬢ちゃん、ここは俺たちの庭でな。落ちてるゴミは俺たちのモンなんだよ」


 リーダーの男がニヤニヤしながら、バーナーの火先をこちらに向けてくる。


「命が惜しかったら着てるモン全部置いて失せな。……パイロットスーツも、中身も高く売れそうだ」


 男たちの目が欲望で濁る。

 私はため息をつき、隠し持っていたサブマシンガンのセーフティを外した。


「……ゴミ? 誰に向かって口を利いているの」


 その時。

 私の殺気より早く、乾いた銃声が響いた。


 パンッ!


「あぐっ!?」


 リーダーの男が持っていたバーナーの燃料タンクが撃ち抜かれ、小爆発を起こした。

 男は悲鳴を上げて転げ回る。


「て、敵襲ッ!?」

「どこからだ!?」


 動揺するハイエナたち。

 カイルが高架の鉄骨の上から、ひょっこりと顔を出した。


「よう、朝から精が出るな。だが、そいつは俺の大事な商売道具でね。傷一つ付けたら、その安っぽい作業機ごとスクラップにするぞ?」


 カイルは笑顔だが、その銃口は正確に次の獲物を狙っている。

 男たちが慌てて銃を構えようとするが、私は地面を蹴って距離を詰めていた。


「遅いッ!」


 ダダッ!

 私は走りながら一番近くにいた男の足元へ威嚇射撃を行い、怯んだ隙に鳩尾へ蹴りを叩き込んだ。

 ドガッ!

 男がくの字に折れて吹き飛ぶ。


「こ、こいつら軍人だ! やっちまえ!」


 作業機パワーローダーに乗った男が、巨大な解体用のアームを振り上げる。

 鈍重な動きだ。空の敵に比べれば、止まっているも同然。


「邪魔よ!」


 私は右腕――感覚のない、竜の鱗に覆われた腕で、振り下ろされたアームを真正面から受け止めた。

 ガギィィンッ!!

 人間なら骨が砕ける衝撃。だが、私の「腕」は微動だにしない。

 そのままアームを掴み、魔力を流し込む。


「……消えろ」


 ドォォォン!!

 掌から放たれた衝撃波が、作業機のコクピットを直撃した。

 バランスを崩した作業機は、派手な音を立てて後ろへひっくり返った。


 静寂。

 リーダーが黒焦げになり、一番の戦力だった作業機が秒殺された。

 残ったハイエナたちは、顔を青くして後ずさりする。


「……け、怪我人はいないかー? 俺たちは平和主義者なんだ」


 カイルが鉄骨から飛び降り、スタッと着地した。

 左脚の義足が、ジャリリと瓦礫を踏みしめる。


「さて、交渉といこうか。……俺たちは燃料メシに飢えてるんだ。最高級の航空燃料ハイオク、持ってるよな?」


 カイルは悪魔のような笑顔で、倒れたリーダーの頭を義足の爪先でグリグリと踏みつけた。


「だ、出します! 全部置いていきますから、命だけは……!」

「交渉成立だ。……おいエルゼ、給油口を開けてやれ。満タンにしてくれるそうだ」


 私は呆れたように肩をすくめ、アヴェンジャーの給油ハッチを叩いた。

 どうやら、燃料の問題は解決しそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ